株価評価の見直しに漂う「改正やむなし」の空気
<今月の気になる税務トピック Vol.50>

『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.154(2026.8)に掲載されたものです。


白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

特例有限会社と事前確定届出給与

特例有限会社には役員の法定任期がないため、事前確定届出給与の職務執行開始日を決められず、制度を利用するには定款で任期を定める必要があるとの解説があった(税務通信3877号)。

これ対し、定款を変更しなくても定時株主総会開催日を職務執行開始日として差し支えないとの解説が登場した(週刊税務通信3907号)。

事前確定届出給与制度の趣旨は、支給額と支給時期を事前に確定させ、利益操作目的の恣意的な賞与を排除することにある。定款の任期の規定にこだわるよりも、会社がどのように職務執行期間を区切っているかを重視すべきだろう。

合同会社は任期が法律では決まっていないが、定時社員総会の開催日を社員の職務執行開始日として差し支えないことなどが示されている(東京国税局 文書回答事例「合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて」)。

むしろ税理士法人や医療法人、宗教法人、学校法人などは法定された任期がない。資本と経営の分離という概念がない、あるいは薄いため、任期や社員総会等を法律で決める必要がないのだ。法律ではなく、実務として定款や寄附行為で任期を定める運用がされていることが多い。これらの法人には、原則として事前確定届出給与を利用させないという立法趣旨があるとは思えない。現実に社員総会等を開催し、対象となる職務執行期間と支給額、支給日を決め、届出をしているなら制度趣旨は満たすはずだ。

もちろん実務は安全第一だ。理屈で理解し専門家としての見解は持ちつつも、関与先に対しては定款変更をアドバイスし、税務調査で無用なトラブルの原因になるような処理はしないことが重要となることは言うまでもない。

非上場株評価の見直しはどこへ向かうのか

これほど詳細かつ多様なに株価圧縮が紹介されるからには、類似業種比準方式の廃止を既に決めているのだろう。「改正やむなし」の空気づくりを進めている。

国税庁は7月3日、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第4回会合を開催した。今回の会議では、類似業種比準方式の見直しや株価圧縮スキームへの対応などが議論されている。
特に問題視されたのは、会社規模を意図的に「大会社」に該当させ、評価額が低くなりやすい類似業種比準方式を適用するケースだ。現行制度では、大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は併用方式が原則となってる。この会社規模の区分を利用して評価額を引き下げる対策が行われており、国税庁は評価方式そのものの見直しによって対応する方向とのことだ(週刊税務通信3908号)。

次回は8月に会議があるという。国税庁から評価方式見直しの「たたき台」が示される予定とのことだ。非上場株式の評価方法は事業承継や相続対策に大きな影響を及ぼすため、今後の議論に注目したい。
しかしどんな見直しがあっても、租税回避的な評価圧縮はなくならない。すべての納税者が適用すべき評価体系と、それを悪用する一部の圧縮スキームの防止は本来別のものだからだ。

白井 一馬

しらい・かずま/石川公認会計士事務所、 税理士法人ゆびすいを経て独立。『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』 『一般社団法人一般財団法人信託の活用と課税関係』『一般社団法人・信託活用ハンドブック』ほか 著書多数。

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