「株特外し」の強引なスキームに警鐘
<今月の気になる税務トピック Vol.48>
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.152(2026.6)に掲載されたものです。
白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生
株特外しが否定された裁決
株特外しが否定された裁決株式等保有特定会社を外すための借入&不動産取得が否認された。令和7年9月5日裁決(東裁(諸)令7第21号)だ。最近はよく似た事例が見受けられるがこれはその典型だ。
上場会社の筆頭株主の資産管理会社が、上場株式を大量に保有する中、贈与の直前に約15億8千万円を借り入れて不動産を取得し、株式等保有割合を49%に引き下げた事案である。その2日後に非上場株式の贈与を実行している。課税当局は、評価通達189なお書により資産構成の変動はないものとして、特定会社に該当すると判断した。
評価通達189なお書では、贈与等の前に、会社の資産構成の変動があり、それが株式等保有特定会社を外すための恣意的なものと認める時はその変動はなかったものと扱う。
背景には、コロナ禍での株価下落というチャンスがあった。税理士は、会社が保有する上場株が下落した令和2年7月の月平均株価を使えば、借入と不動産取得の一押しで株式保有割合を引き下げることが可能だと提案している。株価は同年8月以降上昇に転じており、この提案は期限付きスキームだった。
裁決は、直前2日前の全額借入と不動産取得、49%の株式保有割合、平均株価を使える期限内の実行という一連の事実関係を重視し、借入と購入の取引は株式保有割合を動かすためのものと認定した。
実務上は、投資判断の経緯、資金調達の合理性といった目的やその後の株主としての行動について説明が可能であるかどうかだが、「直前2日・全額借入・49%ピンポイント・期限付きスキーム」が揃ってしまうとアウトとしか言えない。
さて、こういった事例も、現在議論されている非上場株式の評価見直しにどう影響するか興味深い。
底地紛争と取得費
底地は自分の土地だ。しかし自由には使えない。借地権という他人の利用権が乗っているからだ。
国税不服審判所の公表裁決事例で紹介されている令和7年5月20日裁決は、典型的な底地紛争だ。地主は、借地人に対して建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。しかし最終的には和解となり、借地権と建物を買い取った上で、賃借人に立退料を支払い、建物を解体した。そして土地を保育園用地として利用した。
問題は税務処理だ。地主側は、弁護士報酬・立退料・解体費用・建物未償却残高を必要経費や繰延資産として処理した。しかし裁決は、すべて借地権取得費に算入されると判断した。
「当初から建物を取り壊し、更地として利用する目的」が明らかだった点を重視している。そして、借地権の取得、立退き、解体、保育園用地化までを一連一体で把握した。その結果、弁護士報酬まで含め、すべて借地権の取得費に算入されるとした。
裁決は「土地管理費用」ではなく、「権利取得費用」と見た。単なる明渡交渉ではない。訴訟上、借地権の存在を認め、その権利を買い戻した。だから資本的支出だ、という整理だ。
白井 一馬
しらい・かずま/石川公認会計士事務所、 税理士法人ゆびすいを経て独立。『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』 『一般社団法人一般財団法人信託の活用と課税関係』『一般社団法人・信託活用ハンドブック』ほか 著書多数。
