予算案・税制改正関連法案は年度内に成立するか?
<今月の気になる税務トピック Vol.46>

『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.150(2026.4)に掲載されたものです。


白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

空き家譲渡特例と税理士の責任

空き家譲渡特例をめぐり、税理士には損害賠償責任があるとした事例を紹介しよう(金融・商事判例 No.1732 2026年1月15日号)。

相続税申告を受任した税理士が、空き家譲渡特例について十分な助言を行わなかったとして損害賠償責任を認められた事例だ(令和6年9月2日東京地裁判決)。

本件では、父が平成24年に死亡し、母が令和3年に死亡している。建物は父名義、土地は母名義だった。

空き家譲渡特例を適用するためには、一人の被相続人から家屋と敷地の両方を相続または遺贈で取得していることが必要になる。家屋だけ、あるいは土地だけの相続では特例は使えない。この相続では、父の相続の遺産分割で相続人が建物を取得していた。その結果、後に母の相続があっても、建物と土地を一人の被相続人から取得した形にはならず、空き家譲渡特例は適用できなかった。

もし特例の適用を考えるのであれば、父の相続では建物を母が取得し、その後の母の相続で建物と土地を一体として取得する必要があったことになる。税理士は相続税の受任であっても所得税を意識した登記手順をアドバイスせよ、というわけだ。相続人らはその後、建物を取り壊して土地を売却した。しかし空き家譲渡特例が使えないと税理士から説明されたことに納得できず、説明・助言義務違反があるとして損害賠償請求訴訟を提起した。判決は税理士の責任を認め、相続人2人に対し合計1千万円余りの損害賠償を命じた。

相続税の申告受任であっても、その後の不動産譲渡を見据え、遺産分割の助言を行うべきだったと判断されたことになる。「相続税しか受任していない」は通らなかったわけだ。厳しい判決だが相続税申告を扱う以上、空き家譲渡特例は必ず検討しなければならないと意識する必要がある。

贈与税申告だけでは贈与は証明できない

贈与税を申告していれば名義株や名義預金の問題は生じない。そう考えている実務家は少なくない。子供名義の預金口座を作り、親が贈与税申告まで行っていたとしよう。子供がその事実を知らなければ、その預金は名義預金と認定される。税務署は贈与税の申告があっても贈与は認めない。

国税庁の発表では、申告漏れ相続財産は「現金・預貯金等」の837億円が最も多い。実地調査の件数は9,512件で、申告漏れがあった件数は7,826件。非違割合は82.3%だから、納税者に税務調査の連絡があったら名義預金の修正申告は覚悟しないといけない。

年度内に成立するか

2026年度予算案と税制改正関連法案は、3月13日、衆議院で賛成多数により可決され、参議院に送られた。今回の税制改正には、いわゆる「年収の壁」を178万円へ引き上げる改正のほか、大胆な投資を行った企業に対する法人税の設備投資減税、富裕層への課税強化などが盛り込まれている。参議院での審議は、16日から始まっている。果たして年度内に成立するだろうか。参議院では与党が過半数に4議席足りず、年度内に成立しない可能性もあるとのことだ。

実務家にとっては改正が成立した瞬間から実務が始まる。実務の空白が起きないようにしてもらいたい。

白井 一馬

しらい・かずま/石川公認会計士事務所、 税理士法人ゆびすいを経て独立。『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』 『一般社団法人一般財団法人信託の活用と課税関係』『一般社団法人・信託活用ハンドブック』ほか 著書多数。

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