インボイス経過措置の見直し
<江崎光行先生の税理士事務所 四方山話 vol.25>
本コラムでは、日常の業務を通じて遭遇するお客様の反応や現場での出来事など身近なトピックに焦点を当てます。セミナーや研修で講師を務める経験豊富な江﨑光行先生が、これらの話題をわかりやすく、そして実用的なアドバイスを交えて解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.153(2026.7)に掲載されたものです。
「割合が変わるの? うちの負担が増えるということか…。」
先日、ある顧問先の社長へ令和8年度税制改正におけるインボイスの経過措置についてご案内した際のことです。この顧問先では、数社の免税事業者との取引があり、経過措置により消費税の仕入税額控除を行っていました。インボイス制度について、令和8年度税制改正では下記2つの大きな変更がありました。
- 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(8割控除)の控除割合の見直し(7・5・3割控除)
- 「2割特例」の終了と、個人事業者のみを対象とした「3割特例」の創設
冒頭の顧問先との会話は、この①に関するもので、8割控除が改正により7割へと引き下げられることをお伝えした際に、社長の口からこぼれた一言です。制度導入から時間が経過し、日々の実務として定着してきた一方で、「これらの特例や経過措置はずっと続くわけではなく、段階的に変わっていく」という事実が、お客様の頭から抜け落ちているケースは少なくありません。
免税事業者からの仕入税額控除に関する「8割控除」の経過措置が期限を迎え、今後は段階的に控除割合が縮小されます。当初は「令和8年10月から3年間5割控除」と予定されていましたが、激変緩和の観点から見直され、よりなだらかなスケジュールへと変更されました。
- 令和8年10月~令和10年9月末:7割控除
- 令和10年10月~令和12年9月末:5割控除
- 令和12年10月~令和13年9月末:3割控除
控除割合が下がるということは、買い手側の消費税負担が直接的に増大することを意味します。特に免税事業者への外注費や、免税事業者からの仕入れが多い企業にとっては利益を圧迫する要因となります。我々は単に制度変更の事実を伝えるだけでなく、「今の取引状況のまま控除割合が下がると、年間でこれだけ納税額が増える見込みです」と具体的なインパクトを数字で示す必要があります。これにより、お客様は取引先との単価交渉や取引条件の見直しといった経営判断に早期に着手できるようになります。
続いて②の「3割特例」の創設ですが、インボイス導入時に多くの事業者が利用した「2割特例」は、令和8年9月30日を含む課税期間をもって終了します。そこで、税負担の急激な増加を緩和するために設けられたのが「3割特例」ですが、適用対象が「個人事業者のみ(令和9年分・10年分)」に限定されている点に注意が必要です。これまで「2割特例」を利用していた法人は対象外となるため、特例終了と同時に原則課税か簡易課税のいずれかを選択しなければなりません。
なお、対象となる個人事業者であっても、卸売業や小売業など簡易課税のみなし仕入率が高い業種においては、簡易課税を選択した方が有利になるケースがあります。お客様ごとの事業区分を再確認し、事前のシミュレーションを提供することが求められます。
10月の適用開始は目前です。顧問先へ速やかに案内を進めたいところです。
江﨑 光行
えざき・みつゆき/江﨑光行税理士事務所 所長・税理士
大原簿記学校税理士講座講師、税理士法人古田土会計、川鍋直則税理士事務所を経て独立。
現在は、月次決算書、経営計画書の作成指導経験を踏まえ、
ビズアップ総研アシスタント養成講座などでセミナー講師を務める。
