混乱時ほど既存のお客さま第一で(小宮一慶先生 経営コラムVol.103)
本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.153(2026.7)に掲載されたものです。
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生
イラン情勢により原油価格が上昇し、それとともに中間製品であるナフサの供給に不安が生じています。政府は来年度までのナフサは確保できていると言っていますが、目詰まりが起こっているのか、ナフサ由来の製品不足が懸念されています。不安に思って各人が普段より多く買い込めば、供給が足りなくなるのは目に見えています。
こういう状況ですから、卸売りや小売りの段階で在庫を多く持っているところは、普段より儲かるという話をよく聞きます。とにかく製品がなくなることで仕事ができなくなることが一番困りますから、少々高くても買おうという人が増えるからです。もちろん、仕入れの値上がり分をユーザーに転嫁するのは当然ですが、こういう時期に過度に儲けようとするのは望ましい姿勢ではありません。
ずいぶん前のリーマンショックの時にあった次の話を私は思い出しました。ある機械のメンテナンスと販売をしている会社は、リーマンショックとなり、そのお客さまへの販売やメンテナンスの仕事が格段に減少しました。
その会社は資金的に余裕があったので、その機械の買い替えが必要なお客さまにはメンテナンスで使用期間が伸ばせるように、また、メンテナンス時期を迎えているお客さまでも資金繰りが十分でないお客さまには、メンテナンス料をもらわなくてもメンテナンスをするように、社長から指示が出ました。自社も不況期ですから、人が余っているのでそのように対応したわけです。
もちろん、お客さまはそれで操業を続けられるわけですから大喜びです。不況が終わって元の経済状態に戻った時に、どの会社に機械の発注がくるかは明らかです。その会社は、今ではリーマンショック時の3倍程度の規模になっています。
お客さまが困っているときこそ、その会社の真価が出ます。今回のナフサ由来製品の混乱時に、ある卸売り会社の社長は、とにかく既存のお客さまには、できる限り供給を続けると言っていました。もちろん、仕入れ価格は上がっているので、その分は価格を上げますが、マージン率は変えていないとのことでした。「仕入れ価格が上がっている分、マージン率を変えなくても、その分は儲かりますから」とのことでしたが、暴利をむさぼらないということをモットーにし、ただし、既存のお客さまへの対応が優先なので、新規のお客さまには十分対応できていないとのことでした。 こういう時期こそ、会社の姿勢が現れます。お仕事が長く続くことが一番です。
小宮 一慶
こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現:セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を展開する一方で、年100回以上講演を行っている。経営・会計・経済・ビジネススキル等をテーマにした著書160 冊以上、累計発行部数は410 万部を超える。

