日本の弱点を露呈したイラン戦争…身動きできなくなった日本(小宮一慶先生 経営コラムVol.101)

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.151(2026.5)に掲載されたものです。


株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生

米国がイラン攻撃を行ったことで、日本の弱点がいみじくも露呈し、身動きが取れない状態に追い込まれました。原油価格が1バレル100ドルを超えるまでに上昇するとともに、石油を原料とするエチレンなどの製品の供給にも制限が出ることになりました。

それによりインフレの再燃が懸念されています。昨年は3%程度の日本のインフレ率でしたが、今年に入り1%台で推移しています。しかし、この先は、石油製品をはじめ、多くの製品の上昇が予想されています。

政府はそれに対応するために、昨年12月に廃止したガソリンの暫定税率だけではまったく対応できずに、ガソリン価格を170円程度に抑えるべく、月に数千億円単位で補助金を出しています。

また、電気・ガスについても、冬場ということもあって、1月から3月までは補助金が出ていました。これがガソリンの暫定税率廃止とともにインフレ率を下げていた大きな要因ですが、電気・ガスの補助金も4月には一応終わりです。しかし、この状況では補助金を出し続けなければならなくなるでしょう。

補助金が出ることは、目の前の国民生活には多少の恩恵とはなりますが、もう一つの大きな問題を生じています。

それは金利です。財源も十分でないまま補助金を出し続ける政府ですが、この国は、対名目GDP比で235%という、先進国中でも最悪の財政赤字を抱えています。そのため、長期金利が高騰しています。イラン戦争が起こり、補助金の話が出ることで、10年国債利回りが2.4%を超えました。約1年前の2025年1月には1.2%程度だったものが、ほぼ倍増です。

また、インフレの再燃を懸念して、日銀も現在0.75%の政策金利(短期金利)を上げざるを得ない状況です。場合によっては近々0.25%利上げした上で、さらに年内に0.25%上げることになる可能性もあります。そうなると政策金利は1.25%となります。

イラン情勢にもよりますが、政府はインフレ対応の補助金を出す必要が続く可能性があります。そうなれば、財政状況への懸念から長期金利の上昇が続きます。また、インフレが十分に抑えきれない場合には、政策金利の上昇を通じて短期金利も上昇するという、とても難しい政策運営を行わなければなりません。

イランでの戦争という、日本がほぼコントロールできない事態が、日本のぜい弱性を露呈したかたちとなっています。財政状況が悪いことを起因として、今後も弱点が露呈する事態が起こらないことを願うばかりです。

小宮 一慶

こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現:セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を展開する一方で、年100回以上講演を行っている。経営・会計・経済・ビジネススキル等をテーマにした著書160 冊以上、累計発行部数は410 万部を超える。

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