先行き不透明な時はキャッシュポジションを高めておく(小宮一慶先生 経営コラムVol.102)
本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.152(2026.6)に掲載されたものです。
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生
イラン情勢の先行きが不透明な状態が長引いています。補助金が出ているもののエネルギー価格が上昇しています。それだけではなく、石油に関連する製品の今後の供給不足が懸念されています。一部の大手メーカーが供給停止を発表したら、政府からきついクレームが来たという噂も聞きました。当社のお客さまの中にも、メーカーから販売数量の制限を言い渡されているところもあります。とにかく、先行きが不透明です。
こういう時期は、キャッシュポジションを高めておくことが大切だと、私はよくお客さまに伝えています。現預金など、すぐに使える資金を普段より多めに確保しておくのです。いざという時に役に立つのは、自社でコントロールできる資金だけだからです。
もちろん、自己資本比率が高く、手元流動性(現預金やすぐに調達できる資金)が潤沢にある会社の場合は、これまで通り、「お客さま第一」で事業を展開していけばいいでしょうが、手元流動性が十分でない会社の場合には、このような状況では、その残高を普段より少し高めておくことが重要です。
具体的にどれくらいの手元流動性を確保すると安全なのかというと、経済が比較的安定している場合には、私は、大企業なら月商の1か月程度、中堅企業で1.2から1.5か月、中小企業なら1.7か月というふうに説明しています。企業規模によって必要な手元流動性の額が違うのは、通常は、企業規模が大きいほど、銀行や市場から資金調達がやりやすいからです。上場しているような大企業の場合にはコマーシャルペーパーという短期の社債を比較的簡単に発行することも可能です。
中小企業の場合には、そう簡単に短時間で資金調達はできませんが、比較的確実なのは、「当座貸し越し」の枠を確保しておくことです。これは、当座預金をある限度額までマイナスにして資金調達ができる仕組みです。ただし、これは銀行にもリスクがあるので、信用が十分にあるか、従来からある程度の取引を重ねるなどをしている先にしか認めないことが多いです。銀行が口約束で資金枠があると言っているような話はいざというときには役に立たないこともあります。
先ほど述べた手元流動性の基準に達していないのなら、早め早めに銀行などと話をして、資金を多めに持っておくことです。
金利が上昇局面で、多めの資金を借り入れで賄うことは、金利負担が多くなりますが、「保険」だと考えるべきです。イラン情勢が落ち着くなどすれば、返済すればいいのです。
小宮 一慶
こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現:セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を展開する一方で、年100回以上講演を行っている。経営・会計・経済・ビジネススキル等をテーマにした著書160 冊以上、累計発行部数は410 万部を超える。
