2026年の日本経済の懸念(小宮一慶先生 経営コラムVol.98)

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.148(2026.2)に掲載されたものです。


株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生

今年の日本経済の大きな懸念はインフレが長引くことです。現状、3%程度のインフレ率ですが、それがしばらく続くと考えられます。3%程度のインフレなら、それほどの心配はないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、問題は、賃金(名目賃金)がインフレ率に勝つほど上昇していないことです。つまり、名目賃金からインフレ率を差し引いた「実質賃金」がマイナスの状況が昨年も続き、それが、今年も継続する懸念があります。

昨年同様かそれ以上の賃金上昇が起こるかどうかがポイントです。昨年は大企業で5%ほどの賃上げが行われましたが、それでも日本全体で見れば、先にも述べたように、実質賃金のマイナスが続いたのです。

円安も大きく物価には影響を及ぼすので、インフレ抑制や円安阻止のために、昨年12月に日銀は政策金利をそれまでの0.5%から0.75%に引き上げましたが、今のところそれほどの効果は出ていません。

そのことに関連して、今年は金利が上昇するでしょう。現状のインフレ率や円安を考えれば、政策金利はさらに上昇することが予想されます。したがって、主に政策金利に連動して動く短期金利はさらなる上昇が予想されます。企業の短期借り入れや変動型住宅ローン金利が上昇します。今年末の政策金利は、1.25%ではないかと予想しています。米国の短期金利は低下することが予想され、現状よりは少し円高気味に動くと考えます。

そして、日本では長期金利も上がります。10年国債利回りが年初に2.1%を超えましたが、さらなる上昇が予想されます。理由は、ひとつは、短期金利の上昇に伴って長期金利が上がりやすいことと、高市政権の「責任ある積極財政」の「責任ある」の部分への投資家などからの評価が低く、財政拡大懸念から長期金利が上昇するものです。10年国債利回りは3%を目指すと考えられます。企業にとっては長期金利の上昇は、設備投資抑制に働き、個人でこれから住宅を購入する人の固定金利も上昇することとなります。

金利の上昇は、もちろん、預金や債券の保有者には朗報ですが、それでなくても格差が開きつつある中で、さらに格差が開くこととなります。

対中国関係も心配です。高市首相の「存立危機」発言から、日中関係は大きく冷え込みました。一部の百貨店では免税品の売上にすでに影響が出始めています。レアアースなどの戦略物資の調達も心配です。 日本全体を見れば、企業業績はまずまずで、景気は現状程度を維持すると考えますが、実質賃金や中国問題など、懸念材料は決して少なくありません。

小宮 一慶

こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現:セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を展開する一方で、年100回以上講演を行っている。経営・会計・経済・ビジネススキル等をテーマにした著書160 冊以上、累計発行部数は410 万部を超える。

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