iDeCo(個人型確定拠出年金)の改正について<President’s Report vol.32>

株式会社ビズアップ総研 代表取締役
吉岡 高広

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今回は、令和7年度税制改正大綱で大きく取り上げられたiDeCo(個人型確定拠出年金)の改正についてご紹介します。はじめにiDeCoの最近の加入動向を振り返ってみましょう。

金融庁や国民年金基金連合会が公表している資料によると、約10年前の2014年時点でiDeCoの加入者数は20万人にも満たない規模でした。

それが制度改正や加入対象者の拡大を重ねた結果、2024年3月末時点では3,286,747人にまで増加しています。この10年でiDeCoの利用者はおよそ18倍に拡大した計算になり、老後資金の「自助努力」がこれほど注目されるようになったのは、年金制度への漠然とした不安や資産形成の必要性が広く認識されてきた表れと言えるでしょう。

こうした背景のもと、令和7年度の税制改正大綱ではさらなるiDeCo拡充策が示されました。なかでも大きなポイントとなっているのが「加入可能年齢の引き上げ」と「拠出限度額の変更」です。

まず、加入可能年齢については、現在でも60歳以降に厚生年金や国民年金に加入している場合などは65歳未満まで掛金を拠出できますが、今回の改正では「70歳未満まで」拠出可能とする案が盛り込まれました。

具体的には、60歳時点で企業型DCまたはiDeCoに加入しており、公的年金やiDeCoの給付をまだ受給していない方が、最大69歳まで掛金を拠出できるようになります。働き方が多様化し、定年後も仕事を続ける方が増えている現状を踏まえ、60代後半まで老後資産形成の機会を広げる狙いがあるようです。

次に、掛金の拠出限度額にも大幅な見直しが行われます。これまでは、会社員や公務員の多くは月2万円程度が上限でしたが、令和7年度改正では企業年金を含めて合算で月6万2,000円まで拠出可能とする方向が示されています。

企業型DCや確定給付企業年金(DB)の掛金分を差し引きながら、残りをiDeCoに回す「合算枠方式」を導入することで、現行よりかなり多くの金額をiDeCoで積み立てられるようになります。また、自営業者等については月6万8,000円から7万5,000円へと上限が引き上げられる見込みです。この制度変更によって、コツコツ積み立てる方から積極的に拠出したい方まで、より幅広いニーズに応えられるようになります。

さらに、老後以外の資産形成策としては、新NISA(少額投資非課税制度)の恒久化・非課税枠拡大が2024年から始まり、iDeCoと新NISAを合わせた活用が大きな注目を集めています。iDeCoでは拠出時に所得控除を受けられるうえ、運用益が非課税で再投資され、受取時にも退職所得控除や公的年金等控除が使えるという大きな節税メリットがあります。
一方、新NISAは運用益が非課税となり、資金をいつでも引き出せるメリットがあるので、ライフイベントにも柔軟に対応が可能です。両制度の特性を組み合わせれば、より強固かつ機動的な資産形成プランを描けるでしょう。

今回の税制改正大綱は、政府が推進してきた「資産所得倍増プラン」の流れを汲んでおり、より長期的かつ多様な資産形成を促すための改正として位置付けられています。実際の施行時期や詳細要件は法案成立の進捗によって変わるものの、制度が整備されれば、老後資産をさらに充実させたい方には大きな追い風となるはずです。

iDeCoをこれから始めたい方や、すでに加入中で掛金アップを検討している方も、ぜひこの拡充策に注目してみてください。

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