“2年で2倍”の成長を実現し、2030年に年商100億へ 「採用」と「クロスセル」で突き抜けるグロースリンクグループの設計図

グロースリンク税理士法人 代表・税理士 鶴田 幸久 先生 × 株式会社ビズアップ総研 代表取締役・税理士 吉岡 高広

名古屋を本拠に、東京・大阪へと拠点を広げてきたグロースリンクグループ。直近2期で売上を約2倍に伸ばし、2030年にはグループ年商100億円という大きな目標を掲げる。その成長を支えているのは、派手なM&Aでも、特定の商品・サービスでもない。「採用」への徹底的な投資と、グループ各社が一体となって動く「クロスセル」の文化だ。AIによる自動化が進む時代に、会計事務所はどこで付加価値を生むのか。新卒離職率ゼロを実現する組織づくりから、BPO・人材紹介・フランチャイズ構想に至る新規事業まで、代表の鶴田幸久先生に、その設計図についてじっくりとお話を伺った。 【BIZUP 2026年8月号掲載】

“2年で2倍”の成長を牽引したものとは?

吉岡 高広(以下吉岡):ここ数年、順調な成長を続けてこられ、さらに先を見据えた大きな目標も掲げていらっしゃると伺っています。その全体像はあらためてじっくりお聞きするとして、まずは足元のお話から。直近の業績と、成長を牽引した要因についてお聞かせください。

鶴田 幸久 先生(以下鶴田):今年4月に第16期が終わりましたが、着地は23億9千万円前後でした。第15期がおよそ15億2千万円でしたから、1年で8億円超の増収です。牽引した要因はいくつかありますが、まず東京が大きかった。渋谷への拠点開設に加え、M&Aによる亀戸の開設も重なり、東京での伸びが全体を引っ張りました。もうひとつ、より本質的な要因として挙げたいのが、東京・大阪・名古屋の3拠点が出揃ったことです。これまで名古屋に限られていた生命保険の提案や労務といったサービスが、東京・大阪でも本格的に展開できるようになりました。名古屋で培ってきたアップセル・クロスセルのノウハウを他拠点でも実践できるようになった。伸び率という意味では、これが最も効いていると思っています。

吉岡:3拠点が出揃い、名古屋で積み上げてきたノウハウが着実に横展開されているわけですね。その23億9千万円という数字を、もう少し分解していただけますか。事業ごとの内訳はどのようになっているのでしょうか。

鶴田:税務が17億円、労務が2億5千万円、生保・損保・IFAなどの金融関連が2億2千万円から2億8千万円、司法書士・行政書士が約7千万円、不動産仲介も約7千万円という構成です。ただ、数字の見た目以上に金融関連の存在感が大きいですね。保険の手数料を税務スタッフと保険チームで折半して計上しているため、金融チームが実質的に作り出している売上は、計上額の倍近くになります。手数料ベースで換算すると、約4億2千万円ほど上積みになるイメージです。ですから実態としては、かなり保険のウェイトが大きい会社だと言えますね。

M&Aは「吟味して」、拠点は「10拠点構想」

吉岡:数字の伸びの背景に拠点展開があるとのことでしたが、拡大の手段としてのM&A、そして今後の拠点戦略についてお聞きします。M&Aへの温度感と、拠点をこの先どこまで広げていく構想なのか、お聞かせください。

鶴田:これまでM&Aは4度実行しており、買収先の売上総額はおよそ4億円。昨年の8億円超の増収のうち、約2億円がM&Aによるものです。引き続き案件があれば実行していく方針ですが、これからは中身の質をしっかり吟味したいと考えています。以前はスピード感を重視していましたが、今は質を優先する、というスタンスです。拠点については、「10拠点」というビジョンを社内で宣言しています。東京・大阪・名古屋を軸に、関連エリアへあと4拠点ほど増やしたいですね。東京は現在、渋谷と亀戸の2拠点ですが、山手線沿線や横浜なども十分に候補になり得ます。一方、北海道・沖縄・福岡といった遠方の政令指定都市は考えていません。理由はシンプルで、拠点ごとへの理念浸透が重要だからです。距離が遠すぎるとそれが難しくなる。近隣に複数拠点を持つことには、別のメリットもあります。
たとえば、亀戸で離職意向が出た社員を渋谷に異動して活躍してもらう、といったことが実際にありました。「気分を変えるために、勤務地を変える」という選択肢が持てるのですね。関東エリアで、転勤が苦にならない範囲にもう一、二拠点あっても良いと思っています。規模拡大を目的に大型M&Aを重ねる動きも業界では出てきていますが、私たちは「クロスセルをしっかり機能させられる形でなければ広げない」というスタンスです。

吉岡:今後の成長について、どのようなビジョンを描いていらっしゃいますか。

鶴田:大きな目標として、「2030年までに100億円」を掲げています。もともと、これほど短いスパンで100億円という話ではありませんでした。売上がまだ10億円だった頃、年間平均成長率がおよそ125%で推移していたので、「このペースで行けば、私が60歳くらいの時に100億円かな」という、どちらかといえば漠然としたビジョンでした。ところが、東京・大阪・名古屋と拠点を展開し、採用を強化していく中で気づいたことがあります。各地域で平均年収は異なりますし、当然、高い給与を出せるほど優秀な人材を引きつけられる。ただ、そのためには、その地域でのポジションを上げなければなりません。サービス価格の相場に影響力を持てる立場になるには、エリアで一番になる必要があり、そのためにはやはり100億円規模が必要だと思ったのです。地域一番店になれれば、顧問料の相場を動かし、給与水準をリードできる立場になれる。のんびりしていると60を過ぎてしまいますから、前倒しで動こうと考えました。実際にこの2年でアクセルを踏んでみると、11.5億円から23億円と、2年で2倍になりました。であれば、「2年で2倍」をあと2回繰り返せば、4年後には100億円に届く計算です。

ただし、税務顧問の件数を単純に積み上げるだけでは、私たちの仕事はなかなか付加価値が上がりません。ですから、提案を前向きに受け入れてくださる顧客層に絞って開拓し、そこに労務や生命保険など周辺サービスを提案していく。「どんどん提案してほしい」というお客様に選ばれると同時に、私たちもそのようなお客様を選ぶ。アップセル・クロスセルが機能する関係を前提に成長していく、というイメージです。

新卒離職率は驚異のゼロ
入社前後のギャップを防ぐ情報開示の仕組み

吉岡:年間8億円超という伸びは、業界全体を見ても突出しています。他の事務所ではなかなか実現できないことが、なぜグロースリンクさんにはできたのか。両者を分けたものは何だったのか、率直なところをお聞かせください。

鶴田:採用です。きちんとしたサービスを提供していれば、お客様を獲得すること自体は、ここ数年それほど難しくありません。

だとすれば、私たちがすべきことは、お客様を取ることより先に、良い人材に来てもらうこと—つまり採用に予算も組織も全力を注ぐことです。この意識が3年ほどで定着し、数年前に人事・採用の専任スタッフを配置しました。採用コストもそれなりにかかりますが、そこを第一優先に投資してきた結果、採用は毎年、ほぼ計画通りに進んでいます。具体的には、2年前の正社員数が100名、昨年が150名、今年4月時点で210名です。退職者も出ますので、実質的には年間70〜80名を採用している計算になります。

吉岡:会計業界は、希望を持って入っても申告実務のハードさでギャップが生まれやすく、定着が難しい世界です。新卒を重視されていますが、定着率はどのように推移しているでしょうか。また、新卒を定着させるための取り組みや、育成についてもお聞かせください。

鶴田:ここ数年、新卒社員の離職率はゼロです。ひとりも退職者を出していません。定着のために行った施策は年によって異なりますが、まず教育を根本から見直したこと、そして入社後のギャップをとにかく小さくすることに注力してきました。入社前の説明会を複数回実施し、オフィス見学会も行い、職場の実態をしっかり見てもらう。多くの方が「社員の雰囲気が明るい」と言ってくれるのですが、入社後もその印象が変わらないよう努めており、実際に多くの社員から「変わらなかった」という声をもらっています。
もうひとつ、同期の数も効いています。新卒が4、5名の頃は、「このふたりの関係が悪化して連鎖退職につながった」ということもありましたが、10名規模になると人間関係のリスクが分散され、その点は明らかに安定してきましたね。育成スピードについては、むしろ前倒ししています。弊社では担当を持つためにロールプレイ試験への合格が必要ですが、以前は「入社1年後」が基準でした。それを昨年は「入社した年の7〜9月」に前倒しし、今年はさらに早めています。

吉岡:最短だと、入社3か月で担当を持つことになるのですね。そこまで早期化したのはなぜですか。

鶴田:競争心を持ってもらうこと、「早く独り立ちしたい」という意識を育てること—これが本当に重要だと考えています。傍から見ると厳しい環境に映るかもしれませんが、それでも辞めないのは、1年目の売上目標をあえて高く設定していないからだと思います。弊社では等級ごとに目標売上高を設定しており、これを社内では「絶対値」と呼んでいます。1年目の絶対値はおよそ400万円と、比較的低めに設定しています。
ただ、育成を早める分、5年も経つと本当に頼りになる戦力に育ってくれます。その積み上げが、今の組織の厚みにつながっていると感じています。

吉岡:採用を最優先に据えるとなると、それを支える広報・人事の専門部隊が要になってきますね。専任を置くことの効果、そして求職者や紹介会社に対するブランディングの工夫を聞かせてください。

鶴田:専任を置くと、まずシンプルにスピードが上がります。採用業者とのリレーションも築きやすくなり、片手間でやるのとは全く違う。大学の就職課を回ったり、説明会の回数を増やしたり、説明会の運営自体も担ってくれています。「大学を回らなければ」とずっと言いながら実行できていなかったことを、専任が次々と形にしてくれています。

それから、求職者に対しては、会社の数字をオープンにしています。売上の推移や今後のビジョン、理念・クレドまで、説明会でかなり丁寧に伝えます。その結果、入社時のミスマッチがほとんどありません。インターンも実施しており、今年もそこから数名が入社しています。紹介会社向けには、年2回開催している経営計画発表会と総会に担当者をお招きしています。弊社のことをよく理解してもらうことで、紹介数も増え、社風や実態も正確に伝わりやすくなる。「活気がある」という雰囲気は、実際に発表会に来てもらえれば肌で感じてもらえますから。採用において、これは非常に効いていると思います。

なぜ保険部門が桁違いの成果を出せるのか?
連携の仕組みと評価設計の全貌

吉岡:冒頭で保険部門の成果が桁違いであることをお聞きしました。保険は、どの事務所も課題に挙げるテーマです。なぜここまでうまく機能しているのでしょうか。連携の仕組みから収益配分のルール、担当者のモチベーション設計まで、踏み込んで教えてください。

鶴田:弊社には以前から「クロスセルをするのが当たり前」という文化が根づいているので、ここは本当にうまく回っていると感じています。他社から転職してきた人が口を揃えて言うのが、「グループ内の横連携の密度が濃い」ということです。そして、案件ごとの協力体制が立ち上がるスピードが早い。税務と生保・損保・IFAが連動し、さらに行政書士・司法書士・不動産部隊も同じスキームの中で動いています。それぞれ別会社でありながら、ほぼ同じチームのような感覚です。会議も合同で行っています。それから、現場のマネージャーも、税務担当者への「火のつけ方」が上手い。「やらなければいけないのに動かない」という人が本当に少ないのです。

収益配分の仕組みはシンプルです。100万円の保険手数料が発生したら、税務担当者に45万円、保険担当者に45万円、残り10万円を会社の間接コストに充てています。ただし重要なのは、これを現金のインセンティブにはしていないことです。あくまで売上換算で評価に反映されます。
たとえば、売上目標3,000万円の社員が顧問先で2,000万円を持っていたとして、残り1,000万円をどう埋めるか。そこで保険の手数料100万円が出れば、45万円がオンされて2,045万円になります。税務の売上と保険の手数料を合算して3,000万円を目指す、という設計です。目標を達成すれば、当然、賞与に跳ね返ります。実は先日、会議でインセンティブ制の導入案が出たのですが、「弊社はやらない」と私がNGを出しました。税務担当者の役割は、ニーズを喚起して「担当から連絡させます」という状態をつくり、Chatworkのグループに保険担当を加えるところまで。クロージングは保険担当が直接行います。「つなぐだけ」という設計ですから、税務担当者に過度なプレッシャーはかかりません。それが継続性につながっていると思います。

吉岡:保険チームは、どういう方々で構成されているのですか。自分で売って稼ぎたいというタイプの方もいらっしゃるそうですが、そういう方とこの「折半」の文化は、どう折り合っているのでしょう。

鶴田:保険営業出身者が多いのですが、特に「ソリシター」と呼ばれる、保険代理店の育成側にいた人材を積極的に採用しています。40〜50代が中心で、そのメンバーが税務チームの若手に保険の知識を教える役割も担っています。現在はマネージャー1名、男性営業2名、女性営業2名の5名体制で、2億2千万円を回しています。今期はさらに3〜4名増やす予定です。「自分で売って収入を最大化したい」「サポートはいらない」というタイプ、いわゆるフルコミッション型の営業スタイルでやってきた人は、正直、会計事務所には合わないと思っています。弊社はインセンティブも設けていませんから、なおさらです。逆に言えば、チームで動くことに価値を感じられる人にとっては、非常に働きやすい環境だと思います。

AI活用・DXの現在地と周辺業務への影響

吉岡:システムやAIへの投資にも積極的だと伺っています。最近のお取り組みについて、ぜひご紹介ください。大きく変更した部分はございますか。

鶴田:まずGoogle Workspaceを全社的に標準化し、全員が使う環境に整えました。以前はツールがバラバラだったので、そこを統一したのは大きな変化です。AI-OCRも導入して記帳入力の工程をスリム化したほか、最近ではオフィス全体の業務管理システムも新たに入れています。また、AIについては社内にプロジェクトチームを立ち上げて、活用に取り組んでいます。ただ、方向性としては作業効率の向上が中心です。劇的に何かが変わったというより、日々の業務を少しずつ楽にしていく—そういう使い方が現在のフェーズには合っていると思っています。

吉岡:そうした効率化は、事業全体に良い影響を与えているのではないですか。

鶴田:はい。特に成果が出ているのがBPO、経理アウトソーシング部隊です。AIを活用した経理業務の効率化が大型受注につながっており、立ち上げからまだ2年ほどですが、直近1年の売上は1億5千万円規模になりました。ただ、先ほどの数字の話に少し補足をすると、税務17億円の中には、保険と折半している2億8千万円だけでなく、このBPOの1億5千万円も含まれています。ですから正直に申し上げると、純粋な顧問業務だけで見れば、そこまで大きく伸びているわけではない。周辺領域が一気に拡大した、というのが実態に近いですね。

吉岡:BPO部門では、どのような人材が活躍しているのでしょうか。

鶴田:実際に作業を担うのは、税務で採用したメンバーの中でも、特にバックヤードの適性が高いスタッフが中心です。経理系の求人で採用した正社員やパートも加わっています。
それから、これは冒頭でもお話ししましたが、BPOに加えて行政書士・司法書士業務も伸びており、今年は6千万円ほどですが、来年はBPOと合わせて2億円に届く見込みです。もともと提携先の行政書士・司法書士に依頼していた業務を自社対応に切り替えた、それだけのことですが、一定の規模になりました。ここでも東京・大阪への進出が効いており、大阪で採用したスタッフが東京の案件を担う、という体制も整っています。

専任営業による市場開拓と、
東京市場で狙う「倍増」の成長戦略

吉岡:BPOは、どちらかというとこれまでの延長線上にある事業、つまり「守り」と「効率化」の柱だと言えますが、そうではない“攻めの新規事業”にもチャレンジされているのでしょうか。今いちばん動いているもの、そして構想として温めているものがあれば、ぜひお聞かせください。

鶴田:新たに立ち上げた「クラウド経理アウトソーシング」が、今いちばん熱いですね。今年は人員も予算も増強しました。加えて、6月からは人材紹介業もローンチしています。これはBPOのちょうど裏側にあるサービスです。お客様の経理担当者が不在という状況になった時、解決策は「経理を採用する」か「アウトソースする」かの二択です。その両方を自社で提供できる体制にしたい—そう以前から考えていて、今年ようやく形にしました。

吉岡:経理人材の紹介といっても、その人材はどう確保されているのでしょうか。

鶴田:士業専門の採用支援サービス「ミツカル」のフランチャイズに加盟しているので、そこで人材を見つけるのがひとつのルートです。マーケティングコストは、弊社が負担し、ミツカルが求職者への初期アプローチを代行してくれる分、効率的に進められています。ただ、事業として自走させるには自前での人材確保も必要だと感じており、そこには一定のコストをかけていくつもりです。

もうひとつ、ずっと温めている構想があります。自社がフランチャイズ本部になることです。私自身、現在ハウスドゥという不動産ショップのFCに加盟して1年が経ち、近く2店舗目も出す予定ですが、自分でFC加盟を経験すると、将来は本部側をやってみたいという気持ちが強くなりました。実はこれ、20代の頃からある発想で、セブンイレブンが名古屋に上陸した際、その第一号店を担当させていただいたのですが、その時に「これをまとめてやれたら面白い」「FC本部になれば顧問先が芋づる式に増えるのでは」と感じたのが原点です。弊社はサービスのラインナップが豊富ですから、FC加盟店に対して税務顧問・BPO・労務をまとめて提案できます。お客様のFC本部づくりを支援するのか、あるいは自分たちが本部になるのか—どちらの方向にも可能性を感じており、いずれ形にしたいと思っています。

吉岡:その「芋づる式」というのは一般企業向けFCの話だと思いますが、同業である会計事務所に対しても、何か構想はありますか。

鶴田:会計事務所に対しては、FCというよりボランタリーチェーンに近いイメージを持っています。社名や看板はそれぞれのままに、ノウハウやビジネスの仕組みを共有していく。
たとえば、弊社のクロスセルの仕組み、特に保険の売り方には再現性のあるノウハウがあると思っています。年商1億円規模で税務だけで手一杯、ひとり辞めたら経営が揺らぐ—そういう事務所では、税務以外に手が回らないのが現実です。そのような事務所に対して、保険の売り方をレクチャーしたり、共同募集の仕組みを作ったりすることで、収益性を高めるお手伝いができないかと考えています。保険で収益性が上がれば、スタッフの給与も上げられる。そうしなければ、業界全体の競争力が落ちていくばかりです。もちろん、同業が絡むと「顧客を取られるのでは」「人を引き抜かれるのでは」という警戒心が先に立つのは理解しています。そうしたことが起きない設計で実現できれば、業界にとっても意味のある取り組みになると思っています。

「一般企業化」を推進するため、
マーケット開拓にも専任を配置

吉岡:組織の作り方そのものが、士業というより一般企業に近いと感じます。専任営業を置いて自ら市場を開拓するという発想はどこから来たのか。あわせて、顧客層がこの数年でどう変わってきたかも教えてください。

鶴田:「一般企業化しなさい」—実は2年前にインタビューしていただいた時、吉岡さんに言っていただいた言葉です。専任営業を置き始めたのも、まさにそこが出発点です。王道は税務のお客様を起点に周辺業務を乗せていくことですが、もうひとつの軸として、不動産・行政書士・司法書士がグループに揃ったことを生かし、一般の相続マーケットにBtoCで入っていく活動を始めました。

以前から相続税申告の案件はありましたが、経営者案件が中心で、一般マーケットは取りにいっていなかった。今は行政書士がいるので遺言支援もでき、司法書士がいるので信託にも対応できる。不動産部隊もいる。ToCの相続を一気通貫で支援できる体制が整いました。現在は専任営業が3名ほどおり、紹介待ちではなく自ら開拓していく部隊として動いています。

顧客層もこの数年で変化しています。以前は医療、特に歯科が得意というイメージが強かったと思いますが、社内での医療のシェアはむしろ下がっています。東京・大阪では医療をうまく攻められていない。最初の一歩は私や一部のメンバーが開けられても、現地に精通した人材がいないと継続が難しく、そこが課題です。代わりに伸びているのが、ある程度規模のある一般企業です。渋谷エリアでも、スタートアップというよりしっかりした中堅どころのお客様が増えています。医療は、保険も相続対策もあり、一通り学ぶには非常に良い分野です。支払いも安定していて、優良顧客が多い。
ただ、東京・大阪に進出してから売掛金が大幅に増えました。名古屋で医療が中心だった頃は引き落とし不能などほぼありませんでしたが、東京・大阪では、支払いが滞る、突然倒産する、というケースが出てきました。医療は好きな分野なのですが、適切な人材が採れていないため伸び悩んでいる—それが正直なところです。

吉岡:100億円計画の中で、最大のマーケットである東京の位置づけはどうなりますか。名古屋を超えていくような絵を描いていらっしゃるのか、聞かせてください。

鶴田:東京は、相当伸びると見ています。昨年が2億8千万円でしたが、今年は倍の5億6千万円を目標にしています。人員も増やしており、現在は30名ほどです。ただし、純粋な税務だけでは、頑張っても1.1〜1.2倍が限界です。そこにクロスセルの威力を加えることで、倍という数字が射程に入ってきます。
ただ、誤解のないよう申し上げると、100億円達成時点での東京の想定はおよそ20億円です。東京が名古屋を超えるというところまでは、まだ描けていません。ライバルの層が厚く、こちらの陣容もまだ少ない。あの市場で一番になるのは、容易ではないと思っています。とはいえ、マーケットの絶対的な大きさで言えば、東京が圧倒的です。可能性という意味では、どこよりも大きい。4年前に大阪を立ち上げた時は週一で通って自ら開拓しましたが、2年ほど前からは東京に行く頻度を意識的に増やし、人脈を広げています。トップが動かなければ、新しい土地は開けない—その感覚は変わっていません。

AI時代の分岐点はすぐそこに
業界の魅力を高め、相場をリードする存在へ

吉岡:先日、AIをテーマにした入社式にご招待いただきました。とても印象的でしたが、あの企画の狙いと、実施してみての手応えをお聞かせください。最後に、AI時代の会計業界の見通しもあわせてお願いします。

鶴田:あの入社式の企画は、私だったら出てこない発想でしたね。担当したマネージャーが「AIを前提にビジネスを推進する会社である」という姿勢を示したい、という意図で企画してくれました。内定者同士、また会社と内定者の接点を増やす目的で、AIを使って何かを”作り上げる”という内容にしたそうです。新入社員たちは内定期間中からコンテンツを制作し、マネージャーや現場のスタッフが定期的に確認しながら仕上げていきました。手応えは、式の最中からひしひしと感じましたね。新入社員がAIを駆使して質の高いアウトプットを出したことで、既存の社員にも相当な危機感と刺激を与えたと思います。ベテランが一方的にやり方を教えるのではなく、若手の感覚や新しい技術を踏まえながら、より良い方法を一緒に模索していく—組織としてそういうフェーズに入ったのだと実感しました。
その日の挨拶でも話したのですが、私たちが入社した頃は電卓で手計算をするのが当たり前でした。それがやがて「Excelで数式が組めないと」「マクロが使えないと」という感覚に変わっていった。「AIが使えないと」というのは、それとほぼ同じことだと思っています。

業界の見通しで言えば、AIそのものより、競合がAIを活用して新たな仕掛けを打ってくることのほうが脅威です。AIを前提に高付加価値・高効率の領域に進む事務所と、従来型のやり方にとどまる事務所とで、関わる顧客も収益構造も、競争のあり方自体も変わっていく。その分岐点が、もうすぐそこまで来ていると感じています。一方で、中小企業の経営者に伴走する存在としての私たちの役割がなくなることはないとも思っています。

伝え方やツールは変わっても、そのポジションは死守しなければならない。そのためにも、業界を目指す人が減ってはいけません。結局それは給与水準であり、労働環境の問題です。だからこそ、まず自社が良い状態を作って、相場をリードする立場になりたい。100億円という目標も、突き詰めればそこにつながっています。この業界を目指す人が、ひとりでも増えてくれたら良い—そのように思っています。

吉岡:グロースリンクさんの活動にこれからも注目させていただきます。本日はお忙しいところ貴重なお話をお聞かせいただき、どうもありがとうございました。

プロフィール
つるた・ゆきひさ
つるた・ゆきひさ
1975年、愛知県岡崎市生まれ。岡崎高校、名古屋市立大学卒。税理士、行政書士、中小企業診断士、M&Aアドバイザー、医療経営コンサルタント。2006年に独立開業し、2010年に税理士法人鶴田会計を設立。2020年4月に社名をグロースリンク税理士法人に変更し、同5月に名古屋の新たなランドマークとして注目を集めるグローバルゲートへ移転。

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