罹災証明書・被災証明書とは?申請方法・受けられる保証を解説
地震や豪雨により自宅が損壊・倒壊してしまった場合、公的な支援を受けるには罹災証明書が申請書類として使われます。罹災証明書は、支援金だけでなく、応急仮設住宅への入居、住宅の応急修理、税・保険料の減免、災害援護資金などにつながる入口です。
一方、車や家財、塀、物置などの被害については、被災の届け出があった事実を示す被災証明書等が使われる場合があります。
この記事では、罹災証明書と被災証明書の違い、申請方法、取得後に利用を検討できる支援制度まで、被災後の行動順に沿って解説します。
目次
なぜ罹災証明書が生活再建の入口になるのか
災害後の支援には公費が使われるため、行政は住まいの被害を共通基準で判定します。その結果を記録し、各制度の判断材料にする書類が罹災証明書です。
東日本大震災後に法律上の制度へ
東日本大震災では被害認定と証明書交付の遅れが、生活再建を妨げました。2013年の災害対策基本法改正で法律上の制度となり、市町村長には、被災者の申請後に被害を調査し、遅滞なく交付する義務が定められました。
災害は休業や失業、避難先の家賃、二重ローンなどを通じて家計を圧迫します。公的支援、保険、貯蓄や融資を組み合わせる出発点として、被害を公的に確定する意味があります。
「保証」「保障」「補償」は意味が違う
罹災証明書について調べる際、「どのような保証が受けられるのか」と考える人もいるでしょう。制度を正確に理解するには、「保証」「保障」「補償」を分けて考える必要があります。「保証」は、結果や責任を請け負う意味です。公的な給付や減免によって生活を守るのは「保障」、保険契約に基づいて損害を埋め合わせるのは「補償」に当たります。
罹災証明書は、住家が受けた被害の程度を市町村が公的に証明し、支援金、税や保険料の減免、住宅支援などの適用を判断するための基礎資料です。証明書の交付だけで公的支援の利用が決まるわけではなく、交付後に制度ごとの申請と審査があります。保険金についても、保険会社が契約内容と損害を別に確認して支払額を決めます。
罹災証明書と被災証明書の違い
二つを分ける基本は、行政が被害の程度まで判定するのか、被害の届け出があった事実を証明するのかです。ただし、被災証明書の名称や対象は自治体によって異なります。
対象、調査、使い道を比較
| 比較項目 | 罹災証明書 | 被災証明書 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 現実に居住している住家 | 車、家財、塀、物置、店舗設備など |
| 証明内容 | 市町村が調査した被害の程度 | 被害の届け出を受けた事実 |
| 確認方法 | 原則として市町村の被害認定調査 | 写真や申請書類による確認が一般的 |
| 交付時期 | 調査後のため一定期間を要する | 比較的早く交付される場合がある |
| 主な用途 | 支援金、仮設住宅、応急修理、減免、融資 | 自治体独自支援、勤務先、車や家財の手続きなど |
出典:内閣府「被害認定調査・罹災証明書」、三木町「『罹災証明書』と『被災証明書』について」、嘉島町「令和8年熊本地震に伴う『り災証明書』『被災証明書』の発行について」、留寿都村「罹災証明書・被災届出証明書」を基に作成。
住家は持ち家に限らず、実際に暮らしていた賃貸住宅も対象になり得ます。被災証明書の名称と運用には地域差があり、「被災届出証明書」「罹災届出証明書」とも呼ばれます。非住家にも罹災証明書を出す自治体や、火災では消防署が申請先になる地域もあります。災害原因と被災物を伝えて確認します。
住家の被害は6区分で判定
| 被害区分 | 住家全体に占める損害割合 |
|---|---|
| 全壊 | 50%以上 |
| 大規模半壊 | 40%以上50%未満 |
| 中規模半壊 | 30%以上40%未満 |
| 半壊 | 20%以上30%未満 |
| 準半壊 | 10%以上20%未満 |
| 準半壊に至らない一部損壊 | 10%未満 |
出典:内閣府「災害の被害認定基準について」(令和3年6月24日、府政防670号)および「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(令和8年6月)を基に作成。
損害割合は、修理見積額を住宅価格で割った数字ではなく、屋根、外壁、基礎、柱、床、設備などを基準に沿って評価します。また、応急危険度判定に用いる赤や黄のステッカーは余震による倒壊などの危険を知らせる別制度なので、赤い「危険」でも全壊とは限りません。
罹災証明書・被災証明書の取得方法
罹災証明書・被災証明書の取得方法や必要な準備は、自治体によって異なります。まずは自身の安全を確保したうえで、被災した住家が所在する市町村に、申請方法や必要な準備について確認することが基本になります。
片付け前に確認すべきこと
被害状況の調査が行われる前に片付けや修理を進めてしまうと、被害の程度が正しく認定されないおそれがあります。そのため、片付けに着手する前の段階で、市町村や保険会社に連絡し、どのような形で被害の記録を残しておく必要があるかを確認しておくことが大切です。
なお、倒壊のおそれがあるなど危険な状態の建物には近づかず、無理に記録を残そうとしないようにしてください。安全の確保を最優先にしたうえで、対応方法は自治体の案内に従っていただくことをおすすめします。
申請先、必要書類、オンライン申請
罹災証明書は被災した住家の市町村へ、被災証明書もそれぞれの市町村や関連窓口へ申請します。必要書類や手数料の有無、受付期間、代理人申請の可否などは自治体ごとに異なるため、事前に自治体の公式サイトや窓口で確認しておくと安心です。
2026年には、マイナポータルや自治体独自のオンライン申請に対応している地域もありますが、対応状況は自治体によって異なります。オンライン申請の可否も含めて、お住まいの自治体の案内をご確認ください。
調査と再調査
被害認定調査は、外観中心の調査から始まり、必要に応じてより詳しい調査が行われる場合があります。判定結果に疑問がある場合は再調査を依頼できる制度もありますが、具体的な手続きや必要な資料は自治体によって異なります。
判定内容に納得がいかない場合は、まず自治体の窓口に相談し、再調査の可否や必要な準備について確認することをおすすめします。
罹災証明書の取得後に確認したい9つの支援
罹災証明書に記載された被害区分は、給付、住まいの確保、融資、税や保険料の減免などを申請する際の判断材料になります。なかでも、住宅に大きな被害を受けた世帯への代表的な給付が、被災者生活再建支援金です。
被災者生活再建支援金とは
被災者生活再建支援金は、自然災害によって住まいに大きな被害を受けた世帯の生活再建を支える公的な給付金です。被災者生活再建支援法が適用された自然災害で、住宅が全壊した世帯、半壊などにより住宅をやむを得ず解体した世帯、長期間にわたり居住できない世帯、大規模半壊世帯または中規模半壊世帯が対象になります。
支給額は、住宅の被害程度に応じる「基礎支援金」と、建設・購入、補修、賃借といった再建方法に応じる「加算支援金」の合計です。2人以上世帯の支給額は、次のようになります。
| 住家の被害区分 | 建設・購入 | 補修 | 民間賃貸住宅 |
|---|---|---|---|
| 全壊・解体・長期避難 | 300万円 | 200万円 | 150万円 |
| 大規模半壊 | 250万円 | 150万円 | 100万円 |
| 中規模半壊 | 100万円 | 50万円 | 25万円 |
※単身世帯は各金額の4分の3です。民間賃貸住宅には公営住宅への入居を含みません。
出典:内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」を基に作成(2026年8月19日閲覧)
罹災証明書が活用される9つの主な支援制度をチェックしよう
罹災証明書は、被災者生活再建支援金をはじめ、融資、税や保険料の減免、応急仮設住宅などの支援を受ける際に、住家の被害程度を確認する資料として使われます。ただし、証明書が交付されただけで支援が始まるわけではありません。対象となる災害、被害区分、所得、世帯構成などの条件を確かめ、制度ごとに申請します。
- 被災者生活再建支援金:すでに前段でご紹介したように、自然災害によって住まいに大きな被害を受けた世帯へ支給される給付金です。2人以上世帯では、全壊、やむを得ない解体または長期避難に該当し、住宅を建設・購入する場合に最大300万円が支給されます。大規模半壊や中規模半壊も対象ですが、被災者生活再建支援法が適用された災害であるなどの条件があります。
- 応急仮設住宅:災害救助法が適用された地域で、自宅に住めず、自力で住まいを確保できない被災者などに、建設型の仮設住宅や自治体が借り上げた民間賃貸住宅が提供されます。家賃は原則として不要ですが、光熱水費などは入居者負担です。供与期間は原則2年間で、入居要件や募集時期は自治体が案内します。
- 住宅の応急修理:被災した住宅の屋根、居室、台所、トイレなど、日常生活に欠かせない部分を自治体が修理業者を通じて応急的に修理する制度です。2026年4月の基準額は、大規模半壊、中規模半壊または半壊で1世帯75万7,000円以内、準半壊で36万7,000円以内です。現金が被災者へ支給される制度ではないため、修理業者との契約や工事の開始前に自治体へ相談してください。
- 災害援護資金:世帯主が1か月以上の負傷をした場合や、住居・家財に一定以上の被害が生じた場合に、生活再建資金を借りられる制度です。貸付限度額は被害状況などに応じて150万円から350万円で、所得制限があります。給付金ではなく返済が必要な融資であり、利率や据置期間も確認しておきたい項目です。
- 災害復興住宅融資:住宅金融支援機構が、被災した住宅の建設、購入または補修に必要な資金を融資します。罹災証明書に記載された被害区分のほか、住宅の床面積や技術基準、返済能力などの審査があります。融資限度額や金利は申込時点の条件が適用されるため、工事や購入の契約前に住宅金融支援機構へ確認します。
- 公営住宅・災害公営住宅への入居:災害によって住宅を失い、自力で住まいを確保するのが難しい被災者は、公営住宅などへ入居できる場合があります。家賃は収入に応じて決まり、一定期間の減免が設けられる場合もあります。応急仮設住宅とは別の制度であり、所得、住宅に困窮している状況、募集時期などの要件は自治体ごとに異なります。
- 税金の軽減・納付猶予:住宅や家財に損害を受けた場合、所得税では「雑損控除」と「災害減免法による軽減・免除」を比較し、有利な方を選べます。住民税、固定資産税、自動車税などの地方税でも、減免、徴収猶予、申告・納付期限の延長が認められる場合があります。所得税は税務署、地方税は自治体への申請が必要です。
- 保険料・医療費・公共料金などの減免:国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料のほか、医療機関の窓口負担や介護サービス利用料が減免・猶予される場合があります。水道料金や施設使用料、電気・ガス・電話料金、NHK受信料などにも特別措置が設けられる場合があります。対象となる被害区分や期間は、自治体、保険者、事業者によって異なります。
- 義援金・見舞金・自治体独自の支援:日本赤十字社などに寄せられた義援金は、災害ごとに設けられる配分基準に従い、被害区分や世帯状況に応じて支給されます。このほか、自治体独自の見舞金、住宅再建費、引っ越し費用、学用品、授業料などの支援が用意される場合もあります。国の制度に該当しなくても独自支援の対象になる可能性があるため、市町村の支援制度一覧を確認してください。
罹災証明書がどの制度に必要か、どの被害区分から対象になるかは一律ではありません。証明書を受け取ったら、市町村の被災者相談窓口で利用可能な制度を一覧にしてもらい、申請期限の早い制度から手続きを進めると安心です。
保険・税・生活支援を取りこぼさない対応
罹災証明書の申請だけで待つのではなく、保険会社への連絡、領収書の保存、支援制度の確認を並行して進めます。窓口と期限の管理が生活再建を左右します。
保険金請求は罹災証明書を待たない
損害保険金の請求では罹災証明書は原則不要です。保険会社は補償範囲、免責金額、被害原因、損害額を独自に確認するため、市町村の区分と保険金額は一致しません。証明書を待たず、写真を残して連絡します。
火災保険で水災補償を外していれば洪水などが対象外となり、地震、噴火、津波による火災や倒壊には原則として地震保険が必要です。消費者庁や日本損害保険協会も、住宅修理などに関わる悪質商法への注意を呼びかけています。「保険で必ず直せる」と迫る修理業者や高額な請求代行とはすぐに契約せず、保険会社や消費生活センターへ確認し、もしトラブルが起こってしまった場合も、相談ダイヤルへ相談するようにしましょう。
参考:災害に便乗した悪質商法に注意!| 消費者庁
参考:住宅の修理などに関するトラブルにご注意 | 日本損害保険協会
税の手続きには損害額の資料も必要
所得税では、住宅や家財など生活に通常必要な資産の損失に雑損控除を使える場合があります。所得金額の合計が1000万円以下で、住宅や家財の損害が時価の2分の1以上なら、災害減免法による所得税の軽減・免除と比較し、有利な方を確定申告で選びます。
罹災証明書だけでは税務上の損害額を確定できません。取得価額と時期、保険金、撤去費や修理費の領収書を保存します。住民税、固定資産税、保険料は申請先と期限が別なので、担当課を確認し、対応するようにしてください。
参考:No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除) | 国税庁
交付後に行う確認
交付後は住所、世帯主、被害区分を確認し、複数部や原本証明を相談します。支援金、住まい、税、保険料、融資ごとに、要件、期限、原本か写しかを記録し、提出前に画像を残します。受付日と担当窓口も併記すれば、追加書類の照会にも迷いません。
隣の自治体や過去の災害で受けられた支援が、今回も同じとは限りません。罹災証明書を受け取っただけで安心せず、自分の住宅所在地と今回の災害に適用される支援内容を確認します。書類が期限までにそろわない場合も、早めに窓口へ事情を伝えます。
まとめ
罹災証明書は主に住家の被害程度を示し、被災証明書は車や家財などの被害を届け出た事実を示すのが一般的です。証明書は支援や保険金の支給を保証する書類ではなく、制度別の申請へ進むための入口です。
被災後は、まず自身と周囲の安全を確保することを最優先にしてください。そのうえで、片付けや修理に着手する前に、被害の記録の残し方について自治体や保険会社へ確認することをおすすめします。自治体へ証明書を申請すると同時に保険会社へも連絡し、発行された書類や領収書は保管しておきましょう。交付後は9つの支援一覧と自治体の最新案内を照合し、住まい、給付、税、保険料、融資を個別に申請します。
本記事は2026年8月時点での情報であり、制度の詳細や最新の基準額、申請期限は災害や自治体によって異なります。この記事の内容を出発点としつつ、最終的には内閣府や住んでいる市町村など公的な情報源で必ず確認するようにしてください。
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