ムゲン・ADワークスはいずれも納税者敗訴が確定<気になる税務トピックVol.10>

白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

2023/3/24
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。

ムゲン・ADワークスはいずれも納税者敗訴が確定
転売目的で取得した賃貸物件につき、賃貸人が入居しており売却までの間に生じる非課税家賃収入があるとして、課税売上対応の仕入れとする納税者の処理を認めず、共通対応の課税仕入れとして課税庁が更正処分した2つの事例は、3月6日の最高裁の判断により国の勝訴が確定した。

もっとも、居住用賃貸不動産については、取得段階での仕入れ税額控除を禁止し課税、賃貸への転用や譲渡があった際には購入後3年間の課税収入の実績に基づき、仕入れ税額控除を追加で認める税制改正がすでに行われており、これから取得する賃貸物件の処理に影響はない。それゆえ、納税者勝訴もあるかなと個人的には思っていた。今後の実務に影響がない処理には裁判所はその存在感を示すために納税者勝訴というパフォーマンスをすることがある。しかし今回はそのような判決にはならなかった。

さらに過少申告加算税の取り消しも認められなかった。平成17年以降、税務当局は共通対応とすべき見解を採っており、新しい質疑応答事例等を真面目に勉強していた税理士に言わせれば今回の納税者敗訴の判決は当然なのかもしれない。

税務署より怖いのは「ネット民」
広告目的でのユーチューブやインスタグラムの投稿は「企業案件」と呼ばれ、フォロワー数や閲覧数に応じて報酬を受け取ることができる。無申告に加え、なかには海外のペーパーカンパニーを使って所得を多額に隠していた人物もいたとのことだ(「インフルエンサー」女性9人、計3億円申告漏れを国税指摘…8,500万円追徴か 読売新聞 2023年3月8日)。今回は非公表になっているので誰かは分からないが、すぐに特定されてしまうのがネット時代。炎上したらネットの世界からは退場。授業料で済むものではないことを認識すべきだろう。

空き家譲渡特例の改正と実務への“炎上”
空き家譲渡特例について、令和5年改正では、譲渡年の翌年2月15日までに譲受側が取り壊した場合でも3,000万円控除が認められることになった。現行では家を現状のまま譲渡した後に税理士に依頼があった場合、空き家譲渡特例は適用できない。そのような大量の事例を受けての改正だろう。そうはいっても買手が2月15日までに取り壊してくれなかったら大変だ。今後も実務は引き渡しまでに取り壊すのが基本と認識すべきだろう。

実務が変わるのは契約日で譲渡所得を申告する場合でも空き家譲渡特例が適用できるようになることだ。現行制度では契約を締結してから取り壊す場合は適用できない。譲渡までの取壊要件に欠けることになるからだ。

なお、改正は令和6年1月以後の譲渡に適用される。契約日が令和5年で翌年の令和6年になってから引き渡すような事例では、契約日基準で申告すると改正前の制度が適用になるため注意が必要だ。

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