生命保険の節税効果(新米税理士のための自己啓発ガイド Vol.5)
税理士法人SBL
八木 正宣
2021/7/16
生命保険には、死亡等による保障の目的のほか、節税の効果がありますので、税理士業務と保険は関連性が高いといえます。顧問税理士としてクライアントから信頼を得るためには保険のことをよく知っておかないといけません。
皆さんは、顧問先企業から「なぜ税理士が保険の提案をするのか」と聞かれたときに、すぐに答えることができるでしょうか。
保険契約が成立すると、保険代理手数料が税理士に入ることになるので、後ろめたい気持ちになるかもしれませんが、顧問契約を結んだ税理士としての立場を考えると、次の理由から保険提案をするのに最適なのです。
1.当面の運転資金や社長遺族への保証に充てられる
中小企業では、経営は社長に大きく依存していて、資金繰り面では内部留保額(税引後の利益の蓄積)は多くなく、金融機関からの借入金に頼っているケースが多いと思います。もし、社長が死亡したとすれば取引先との契約が打ち切られ、借入金を返済する目途がつかなくなるかもしれません。借入金が返済できず会社が倒産すると、連帯保証した社長の財産を失い、社長家族の生活に影響が出るかもしれません。もちろん従業員や取引先にも迷惑がかかります。
経営者保険は、社長の死亡等に際し保険金が会社に支払われ、当面の運転資金や社長遺族への保障(死亡退職金)に充てることで、先のような誰も望まない事態を避けることができます。もし保険事故が起こらなかったときには、社長の定年退職時に解約して、その返戻金を退職金に充てることもできます。
2.生前に受取人を決めておくことができる
生命保険は、相続の場面でも効果があります。
①相続税の非課税枠がある
遺族の生活保障の目的で、死亡保険金には「法定相続人の数×500万円」までの非課税枠が設けられています。
②遺産分割協議の対象外となる
預貯金のまま相続発生時まで保有していると、相続財産となり相続人全員で協議しなければなりません。一定の保険契約に振り替えると、相続財産ではなく契約により受け取る財産となり、遺産分割対象の財産から除外することができます。なお、相続税課税上はみなし相続財産として相続税がかかります。
③その他の効果
本人が生前に保険金の受取人を決めておくことができます。また、保険事故や満期まで金銭を保険会社に預けておくことができ、財産を守ることができます。