特定路線価の注意点<元国税調査官の告白 税務調査㊙ノートVol.22>

元国税調査官 税理士
松嶋 洋

2021/12/3

元国税調査官であり、現在は税務調査に特化したコンサルタントとして活躍する松嶋洋先生が、調査の論点となりやすい税法上の論点、税務調査への効果的な対応等について、法律、実務の両面から解説します。 ※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.97(2021.11)に掲載されたものです。

特定路線価の注意点


路線価が付されていない道路に認められる特定路線価ですが、これは「設定できる」という規定ですので、設定が義務付けられる訳ではありません。しかし、特定路線価が一度設定された場合には、原則としてそれで評価する必要があり、有利不利判定のようなことはできないとされています。

平成24年11月13日裁決(J89-4-16)
特定路線価を設定して評価する趣旨は、評価対象地が路線価の設定されていない道路のみに接している場合であっても、評価対象地の価額をその道路と状況が類似する付近の路線価の付された路線に接する宅地とのバランスを失することのないように評価しようとするものであって、このような趣旨からすると~その評定において不合理と認められる特段の事情がない限り、当該特定路線価に基づく評価方法は、路線価の設定されていない道路のみに接続する路線に設定された路線価を基に画地調整を行って評価する方法より合理的であると認められる。本件特定路線価の評定についてみると、不合理とみられる特段の事情は見当たらないから、本件各土地の価額は、本件特定路線価を正面路線価として評価するのが相当である。

特定路線価に関し、注意したいことの一つに「旗振り評価」があります。路線価の付されていない道路に接している土地については、特定路線価を申請するほか、旗振り評価することも実務上認められます。

平成19年11月5日裁決(J74-4-22)
評価基本通達に従って評価する場合、本件A土地のように路線価の設定されていない道路のみに接している宅地につき、特定路線価を設定することなく、その道路~に接続する路線~の路線価を基に、その接続路線と評価対象地である本件A土地との位置関係等に基づき同通達に定める画地調整を行って評価することも不合理とはいえない。なぜなら、一般に、その土地がその接続路線から遠く離れている場合や地区区分が異なる場合などを除き、その接続路線の影響を受けていると解されるからである。

しかしながら、旗振り評価が適正でないと税務署長が認めれば、税務署長が自身で特定路線価を設定し、更正する可能性があります。

東京地方税理士会税務相談事例Q&A0116
相続税 贈与税 特定路線価の検討(相続事例東地会020116)
特定路線価は財産評価通達14-3で、「特定路線価を納税者からの申請等に基づき設定することができる。」と規定~特定路線価の申請をせずに旗竿地で評価した場合には、実情以上に評価額が下がる可能性がある~納税者からの申請等と通達で規定されていることから、納税者以外には申請ができないと理解されている方もおられますが、「等」に税務署長が含まれております~土地の評価額が著しくバランスを欠いたものと税務署が判断した場合、税務署長が特定路線価の申請をして土地の評価額を是正したという事例があります。

なお、特定路線価ですが、以下を前提とすると固定資産税の路線価などを前提に決めていると解されます。このため、この路線価も見ながら、申請を考えるべきでしょう。

平成24年11月13日裁決(J89-4-16)
特定路線価の存する地域の路線価と~固定資産税路線価~の均衡が取れている場合には固定資産税路線価との格差によって評定することが妥当であると認められるところ、本件各土地のある地区はこの均衡が取れていることから、本件特定路線価は、本件市道と本件位置指定道路との固定資産税路線価の格差によって評定~原処分庁は、本件市道及び本件位置指定道路に付された各固定資産税路線価の割合に本件路線価を乗じる方法により本件特定路線価を算定~

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