土地の貸付けで消費税徴収漏れ<気になる税務トピックVol.18>

白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

2023/11/24
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。

土地の貸付けで消費税徴収漏れ
青森県弘前市は、市有地の貸付に関し消費税などの徴収漏れが書類で確認できたという(Web東奥 2023/11/18配信)。過去10年前後で17件、計約182万円が判明したと発表。平成元年の消費税導入時から誤っており、いままで修正されないまま35年間徴収漏れが続いてきたとのことだ。
「市の市有地の使用料を定める市条例も消費税法などの制定に合わせて改正されたが、建物が立った土地や駐車場は使用料と一緒に消費税を徴収する―との規定が抜け落ちていたという。」「市は使用料徴収済み分の税の支払いは貸し付け相手に求めず、今後請求する分は支払ってもらうよう協議する。市条例改正案は24日開会の定例市議会に提出する。)」
過去の分を遡って支払う借地側の税務処理もそれなりに大変だ。顧問税理士は更正の請求をするのだろうか。

総務省が外形標準課税の見直しを議論
最近は資本金を1億円以下にして税制上の中小企業になる事例が多く登場し批判もあるところだ。とくに外形標準課税を逃れることに対して、現行の資本金基準に「資本金と資本剰余金の合計額」を追加することは以前から検討されている。資本金を減少して資本剰余金に振り替えることが多いがこれに規制がかかることになる。

さらに、一定規模以上の親法人の100%子会社等を外形標準課税の対象とするという議論もあるとのこと。大企業の顧問先なんてうちにはないよ、と言う税理士でも、その子会社が関与先になっていることは多い。「制度の施行まで一定の期間を確保することが適当としている。」がこれは影響が大きい。

中堅企業の優遇税制枠を創設
 政府は従業員2千人以下の企業を「中堅企業」とし、賃金など一定要件を満たせば、投資やM&A(合併・買収)に税の優遇措置を受けられるようにする方針とのこと。こちらはあくまで優遇税制との位置づけのようだ。

組織再編税制の否認事例
組織再編税制の否認事例の記事が増加している。最近だと令和4年8月19日の裁決だ。
青果物等の売買の受託等を行う親会社X社は、100%子会社A社に新設分割を実行させ、新設したB社にA社の経営する青果物卸売事業を移転、X社がA社を吸収合併した。事業を別会社に移動して空っぽにした会社を吸収合併して青色欠損金12億円を引き取ったわけだ。

これは過去に注目を集めたTPR事件と同じ。再編の否認事例はいずれも青色欠損金や土地の含み損を節税利用するために組織再編を行い否認されている。本裁決はコンサルティング会社の提案に基づくものということだが、リスクをどう説明していたのだろうか。

これまで紹介されてきたのは大企業の多額の節税が否認される事例だったが、今後は中小企業の小規模な再編の否認事例が登場すると思う。街の税理士の身近なリスクと認識する必要があるだろう。再編に経営目的があるか、節税のみが目的になっていないかが問われる。

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