政府税調、持株会社型の子会社に対する外形標準課税を検討<気になる税務トピックVol.5>
白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生
2022/10/26
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
政府税調、持株会社型の子会社に対する外形標準課税を検討
政府税調で持株会社型での子会社も外形標準課税に取り込むことが検討されている(第18回 税制調査会(2022年10月12日)説明資料[地方法人課税]総務省)。事業税の計算は会社単位であるため、持株会社が子会社を通じて事業を行っていると、持株会社のみが外形標準課税の対象になり子会社の事業は対象にならない。直接事業を行っている会社だと会社全体が外形標準課税の対象になることと比較すると問題があるというわけだ。
外形標準課税の節税目的で持株会社形態を選択する事例が見受けられるのかもしれない。これまで資本金基準の見直しが議論されてきたが、持株会社形態のグループにおいて子会社も外形標準課税に取り込むことが検討されているわけだ。
「親の駐車場を使用貸借し得た地代」、収益は親に帰属
親が持つ駐車場を使用貸借して子供が地代収入を受け取る。これが認められるのであれば親から子への所得の移転や家族への分散が可能になってしまう。実質所得者課税の原則(所法12)の問題だが、大阪地裁令和3年4月22日判決は、親から与えられた土地の使用収益権に基づき、子は第三者との間で賃貸借契約を締結し、本件各土地の賃借人から各駐車場収入を得ることになると判示してこれを認めた(東京税理士界令和4年9月1日号)。
このような使用貸借による所得の移転が認められたら実務への影響は計り知れない。土地だけでなく収益建物や株式を使用貸借して家賃や配当金を子供に与えることも可能になってしまう。
控訴審の大阪高裁令和4年7月20日判決は、子供は単なる名義人であってその収益を享受せず駐車場業による収益は親に帰属するとし納税者敗訴となった。親子間の土地使用貸借契約の成立は認めたが、親が所有権者として享受すべき収益について相続税対策を目的に子に無償で処分したものと判断した(TACTニュースNo.899)。常識的な結論に落ち着いたわけだが、いったん父に帰属した賃料相当の経済的利益を父親が子に無償で与えられたわけだから、子には贈与税(相法9)が課されることになるのではないだろうか。
生命保険料の実質的負担者をめぐる裁判例
相続税の申告において、生命保険契約に係る保険料の実質上の負担者が誰なのか争われた事例が紹介されている(国税速報令和4年9月26日(6724)号)。被相続人が保険料の全額負担者であるとした相続税の更正処分に対し、配偶者が実質的な負担者であるとして、納税者は処分の一部取消を求めた。これについて審判所は、保険料負担者は保険契約者が原則であるとしつつ、例外となる特段の事情の有無の検討が必要であるとしたが、保険料支払いの原資の形成過程を確認・検討すると、配偶者は自身の稼働で収入を得ていた事実が認められず、被相続人の給与収入で生計を立てていたと認定された。こちらも妥当な結論だが、実務の取扱を再確認する事例といえる。