受取配当金の益金不算入の改正<気になる税務トピックVol.11>
白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生
2023/4/24
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
味噌会社の高額役員報酬の否認事件
京都市にある著名な味噌会社で役員報酬の高額否認事例があった(東京地裁令和5年3月23日判決)。この会社が属する松井味噌グループは中国内で模造品が出るほど有名だという。ベトナム事業に役員である弟を担当させ平成25年12月から4か月で月額2億4,000万円、計約10億円を支払った。松井健一社長自身も25年10月から1年間、月額5,000万円、年間6億円の役員報酬を得ていた。これに対し国税当局は平成30年に税務調査を実施し、平成25年から平成28年の4年間で2人に支払われた役員報酬21億5,100万円のうち、約18億3,956万円分を「不相当に高額」と認定した。追徴課税は約3億8,500万円に上る。
近年、代表者への高額否認はほとんどないといって良い。昔はそれなりの否認件数があったように思うが、最近は「家族への所得分散を否認する趣旨」の過大役員報酬の否認がほとんどだろう。
ベトナム事業については収益が生じていないことを問題視され、弟のベトナムへの赴任が具体化していない状況でこれだけの役員報酬を支払うことはおかしいと認定した。また多額の投資有価証券売却益が生じていたようだ。しかしそれ以上に、非居住者である弟に払った役員報酬は20.42%源泉分離課税で済んでしまうため、これが否認の最も大きな理由ではないだろうか。
残波事件もそうだが否認されたら代表者含め家族もろとも。否認されない処理を心がけることはもちろん、問題が生じても現場で解決。これが鉄則だ。
受取配当金の益金不算入の改正
グループ法人税制が創設されて以来、受取配当金の益金不算入の条文が複雑になった。令和4年4月1日以後開始する事業年度からは100%グループが保有する持ち株を合わせて持ち株判定を行う。ほとんどの会社でこの3月決算から適用になるので注意したい。
右図のようなケースは、それぞれ親子会社が保有する持ち株を含めたところで3分の1超または5%以下の持株判定を行う。納税者有利の改正だ。
孫会社から受け取った配当について、改正前だとケース1では親会社、子会社は自分の持株のみで各々が判定し、その他株式だったのだが、改正後は合算して関連法人株式に区分されることになる。同じくケース2は、非支配目的株式に該当していたが、改正後はその他株式に該当する。