4万円定額減税<気になる税務トピックVol.19>

白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

2023/12/22
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。

4万円定額減税
小さな小さな減税制度のために大変な手間が生じることになりそうだ。給与ソフトに頼るにしても減税額の管理が大変で申請手続が必要な制度になるようだ。語ることは大きいが出来上がった政策は効果がよく分からないという現政府の個性が反映されている。

M&A後の損失計上に備える準備金制度の拡充
M&Aを促す税制優遇として、買収した株式の取得額の70%までを中小企業事業再編投資損失準備金として損金算入できる制度があるが、現行制度に加え、令和6年度税制改正では新たな制度として、中小企業同士のM&Aで、1社目の買収について株式取得額の90%を、2社目以降は100%を損金として算入可能となる。取得した株式の価格下落に備えるというわけだ。産業競争力強化法の改正を前提にその認定に係る特別事業再編計画に従って取得した株式が対象になる。
現行制度では積み立てた準備金は5年後から取り崩すが、新制度は10年後からに延ばされている。
両制度を合わせると、1社目のM&Aは取得額の70%を損金算入、2社目は90%、3社目が100%ということになるわけだ。
なお、令和6年度税制改正では、現行制度、新制度ともに、M&Aの契約違反によって被る損害をカバーする保険表明保証保険契約を締結した場合は適用除外となることには注意が必要だ。今改正によって、現行制度について適用期間が3年間延長され令和9年3月31日までに経営力向上計画の認定を受けた場合が対象になる。新制度も令和9年3月31日までに特別事業再編計画の認定を受けた場合が対象になる。

ストックオプション税制
スタートアップ支援の一環で見直しが行われている。一番影響が大きいものは、権利行使価格の限度額引き上げだ。スタートアップに限っては、設立5年未満の会社は年額2,400万円に、設立5年以上20年未満の非上場会社と上場5年未満の会社は年額3,600万円となった。

事業承継関連
事業承継税制については特例承継計画の提出期限を2年延長し、令和8年3月31日までとされる。あくまで計画書の期限延長であり制度そのものは延長されない。課税庁の側から現段階で言及できないとは思うが制度の延長もあると思う。

買戻条件の付された種類株式の取扱い明確化
買戻条件の付された種類株式について買戻しが行われた場合の取扱いを明確化するとのこと。サザビーリーグ事件を受けて、買い戻しの際の適正時価を含めた取扱いが整理されるのかもしれない。

金・白金の地金が高額特定資産に
課税期間中の仕入れ合計額が200万円以上である金や白金の地金等が高額特定資産の範囲に含められる。1,000万円以上の高額特定資産に該当しないよう複数回に分けて購入して仕入税額控除を受け、免税事業者になってから売却して消費税分を稼ぐ節税が規制される。今後は高額特定資産として3年間は課税事業者が強制され簡易課税も適用できなくなる。

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