会計業界の常識を変えていく。 BEEKCY SOLUTION株式会社 「ワクワク」を生み出すハブ型事務所の挑戦 Vol.1

BEEKCY SOLUTION株式会社 代表取締役 綾部 雅祥
威圧感を捨て「焚き火」を灯す。
人が集い、ヒラメキを生むオフィス空間への変革
2025年1月に会社を移転されていますが、どのような経緯だったのですか。
もともとは「形山会計」という会社と「税理士法人サンアクア(形山オフィス)」という会社があったのですが、創業者で代表だった形山が亡くなり、税理士資格を持たない私が実質的にすべてを任されることになったのが大きな転機になりました。亡くなる1年前から私が代表として動いてはいたのですが、正式に引き継いだ形です。
そのタイミングで、急遽でしたが事務所も新しい場所へ移転しました。これは、単なる引越しではなく、税理士事務所をもっと人が自然と集まってくるような場所にしたいと考え、オフィスも非常に綺麗で開放的な空間に作り変えました。会計事務所やいわゆる士業であるサムライ業は、都会の事務所も含めて「敷居が高い」「近いようで遠い存在」という堅苦しいイメージを持たれがちです。私はそういう事務所にはしたくないと強く思っていて、お客様がもっと気楽に相談できて、家族の次くらいに頼りになる、特別な存在になりたいという思いがあったのです。
同じタイミングで社名も変えられていますね。
社名の「BEEKCY SOLUTION」も、あたたかい雰囲気の事務所を目指したいという想いを込めて付けました。デザイン会社とも相談しながら、人が集まる魅力的な場所にしたいと、ロゴやデザインも含めて一新しました。

「焚き火(BEEK)」を語源とした造語「BEEKCY」は私の発案です。社員が常に上を向いて、「ニコニコ」と「ワクワク」しながら働ける明るい事務所にしたいという願いも込められています。ロゴの頂点にある火の粉のようなデザインは、「ヒラメキ」を意味しています。焚き火のあたたかさに加えて、常にクリエイティブなアイデアを生み出し続けるという私たちの思いやインパクトを表現しました。オフィスの内装工事の際にも、このコンセプトをベースにイメージを作り上げていきました。
ホームページも非常にスタイリッシュで、一見すると会計事務所と気づかないデザインですね。
どんなねらいがあったのですか。
会計事務所のホームページというのは、横に並べるとどれも同じような見た目や内容になりがちです。そのため、もっと遊び心を取り入れたいとずっと思っていたのです。もちろん、ただ遊んでいるわけではなく、我々が本当にやりたいこと、訴えかけたいメッセージをしっかりと伝えるために、あえて崩したデザインやイメージを採用しています。これまでの「先生稼業」にあぐらをかいているようなイメージや、敷居が高いイメージを少しでも脱却したかったのです。
オフィスも、いわゆる「税理士事務所」のイメージを払拭するカフェのような空間ですね。
初めて見た方は皆さんびっくりされます。モデルハウスと事務所が併設されていた物件を購入し、相当な資金を投じて改装しました。最近は「事務所にお金をかけるのはどうか」という意見もありますが、一方で、そのビルに行くこと自体にステータスを感じるような素晴らしいオフィスもあります。お客様が入りやすく、明るくてあたたかい雰囲気を出したくて、思い切って作りました。以前、ジブラルタ生命さんのイベントに合わせて全国から180社ほどの会計事務所の方々がオフィスを見学に来られましたが、「事務所も明るいけれど、それ以上に働いている社員がみんなとても明るくて生き生きしている」と言っていただけたのです。これは本当にうれしかったですね。
若手に一流を経験させる教育投資
同業者と強みを共有し、業界全体の底上げを図りたい
社員の皆さんの「ワクワク」を引き出すために、どのような教育や経験の場を提供されているのでしょうか。
社員旅行は非常に力を入れています。というのも、当社では、社員が個人ではなかなか経験できないことを、会社がどんどん提供して経験値を高めることを大切にしているからです。例えば、社員旅行で行ったことのない場所へ行く、移動に新幹線のグリーン車を使ってみる、個人ではなかなか行けないような高級な食事を経験する、といったことです。ワクワクする経験が増えれば視野が広がり、お客様に提供できるものも増えます。若い時に「グリーン車ってこんなに快適なんだ」「世の中にはこんな世界があるんだ」ということを知る経験は非常に重要です。

「またここに乗りたいから頑張ろう」というモチベーションにもなりますし、経験によって物事を見る視野が変わります。東京等に行って都会の空気を吸い、洗練された人たちを見るだけでも刺激になります。そういった「知らないことを知る」楽しさや経験を、会社としてどんどん提供していきたいと考えています。
ほかにも、社員の家族への感謝を伝えるために、家族を呼んで忘年会を開いたりしています。そこで表彰式をやったり、ビンゴゲームも行って楽しんでいます。仕事は家族の支えがあってこそですから、家族にも会社を知ってほしいのです。
他の会計事務所との交流も積極的に行っているそうですね。
同業者との接触を嫌がる事務所もあると聞きますが、私としては、経営者自らチャンスを潰しているようなものだと思います。今年は沖縄、その前は仙台へ行きました。仙台ではアビーナリーグループさん、沖縄では琉球会計さんと意見交換の場を持ち、懇親会では、社員同士も親しくやり取りを行っていました。また、ITやAIを使った先進的な取り組みを行っている企業の勉強会にも参加しています。
会計事務所同士でも、それぞれ強い分野が違います。お互いの強みを利用し合い、情報提供し合うことが業界全体を盛り上げるために不可欠です。「自分たちの技術を取られてしまう」「仕事がなくなるのが怖い」と情報を共有しないのは、器が小さいと私は考えていますし、完全にお客様目線ではなく自分たち目線だと私は思います。損をするのは社員とお客様です。
会計業界の顧問料は何十年も変わらず、物価や人件費が上がっているのに顧問料が下がっているようなおかしな状況です。安売りの価格競争には参加せず、付加価値を高め、業界全体で適正な価格設定ができる仕掛けを作っていくべきだと思っています。
そうした外に目を向けた取り組みが、結果として社員の方々の良い刺激になり、
自発的な成長にも繋がっているというわけですね。
社員一人ひとり個性も感受性も違うので、他の事務所を見ることで必ず視野が広がりますし、より多くの可能性を見て自ら積極的にチャレンジしていくことが、事務所を一緒に作り上げていく上で非常に大切だと考えています。
私自身、若い頃に自費で様々な勉強会に足を運んで学び今の自分があると思っているので、若い社員にはそういう経験を早いうちに会社の支援でさせてあげたいのです。こういった効果は如実に表れており、一般的な会計業務しかしていなかったスタッフが、生保などの提案も自発的にできるまでに成長しています。
顧客の悩みを遮断しない
「ハブ」としての会計事務所の役割
税務の枠を超越するコミュニティの創出
ホームページにある「業界をぶっ壊す」という強いメッセージには、どのような真意が込められているのでしょうか。
昔ながらの会計事務所の良さもあるとは理解しているのですが、一方でお客様に対する「情報の遮断」が多すぎる点に疑問を感じていました。
中小零細企業や個人のお客様は、税理士を信頼しているからこそ、人生の悩みや経営の様々な相談を持ちかけてくれます。それなのに「うちは税務しかできません」「自分の専門範囲じゃないから分からない」と遮断してしまう事務所が少なくないのです。また、先生が有益な情報を持ち帰っても、担当者レベルで「面倒くさい」と情報をお客様に伝えず遮断してしまう。規制で守られている業界だからと、そこに落ち着いてしまっているのは良くないと感じています。税務という枠にとらわれず、もっと広く対応することで、本当は相談したいけど…というお客様が相談しやすくなります。
具体的には、どのような形を目指されているのですか。
私は自分の事務所を「ハブ(空港)」のような存在にしたいと考えています。とりあえずうちの事務所に来ていただければ、「ここに行けばこの路線に乗って解決できる」というルートを作ってあげるのです。うちの事務所だけでできる仕事には当然限界があります。だからこそ、弁護士さん、司法書士さん、あるいは様々な業種のクライアントさんとの縦横のネットワークをしっかり構築しています。例えば、「沖縄に店舗を出したい」という相談があれば、ご縁のある沖縄のネットワークを通じて支援することができます。ネット上だけでなく、リアルな交流を広げていくことで、お客様のあらゆる課題を解決できるチャンスを生み出していきたいのです。会計事務所にどんどん人が集まるような環境を作るという意味でも、業界の常識をぶっ壊していきたいと思っています。
「税務」という一つの路線だけでなく、そこからいろいろな路線(サービス)を広げて付加価値を高めていく。他業種とも連携して、本当の意味でお客様の悩みを解決できる「ハブ」になる。そうすれば、地方であろうと、人が集まる、ワクワクするような事務所が作れると信じています。
「会計事務所の常識を変えていく」というメッセージも非常に印象的でした。
これは私が昔から、さまざまなセミナーや同業者の前でも言い続けてきたことです。会計業界には、どうしても「先生」と呼ばれて現状に甘んじる人が少なくない、お客様の悩みに向き合い、よりよい未来へと導くという本当の意味でのサービスができていないという課題があると感じていました。お客様が良いサービスを受けられないのは不幸なことですし、もっと気軽に人が集まってくるような事務所でありたい。そういった強い想いから、「常識を変えていく」というフレーズを掲げています。


このような大胆な路線変更に対して、以前から一緒に働いていたスタッフの方々は驚かれたのではないでしょうか。
実は、敷居を低くして明るい事務所にしたいという提案は、前代表の時代からずっと言い続けていたのですが、当時はなかなか実現することができませんでした。ただ、前代表のやり方と私のやり方は、根本的な部分は一緒だと思っています。お客様のために一生懸命やるという志は同じで、ただ「表現の仕方」が違うだけなのです。お客様を萎縮させるような事務所ではなく、のびのびとできる雰囲気づくりを、今は一生懸命に進めています。
お客様や人が集まる場所にするため、今後新しいサービスや展開は考えていらっしゃいますか。
前代表の時代には「形山塾」という勉強会を月に一度開催し、必ず懇親会を行っていました。これは知識の習得や人脈作りも目的でしたが、一番の狙いは「社員のコミュニケーション能力の向上」でした。人と気さくに話せる能力を養うことで、明るく人が集まる事務所を作りたかったのです。コロナ禍のタイミングで中断してしまっていたのですが、事務所も新しくなった今、改めてそういった面白い仕掛けを再スタートさせようと動いています。
例えば、事務所の女性スタッフを綺麗に、男性スタッフをカッコよくしたくて、メイクアップの先生を呼んでセミナーを開いたり、「ダンディ」になるための講座を開いたり。以前企画した際にとても盛り上がったので、じゃあ今度は社員だけじゃなくてクライアントも巻き込んで、さらにはクライアント以外の方も呼んで一緒に勉強しよう、という風にどんどん広げていっています。
税務から離れたテーマをあえて選ぶ理由はどのようなものなのですか。
税務をしっかりやるのは当たり前です。それ以外の、地方ではなかなか学べないような身のこなしや美意識などを学べる場を、私たち会計事務所が作ってもいいじゃないかと思うのです。本格的なプロのところへ行くのは腰が引けるという方でも、会計事務所が主催なら気軽に参加できますよね。会計業界の懇親会に行くと、皆さんコミュニケーションを取らずにただご飯を食べに来ているだけで、名刺交換もせず、乾杯したらすぐに食事を見に行く、ビールもつがれるのを待つかもしくは自分の分だけつぐ、こんな風景が当たり前のようにありました。「この業界は特殊すぎる」と愕然とした記憶があります。だからこそ、私たちが主催する懇親会では、参加者から「会計事務所っぽくないですね!」「イメージが変わりました」と言われるのが最高の褒め言葉です。社員にとっても幅広い勉強になりますし、相談しやすいオープンな事務所づくりに繋がっています。
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