提言「続けることの大切さ」を再確認しておこう

習慣化コンサルタント 習慣化コンサルティング株式会社 代表取締役
古川 武士
続ける力は人生を変える
ダイエット、片づけ、英語、運動、日記、節約、早起き――年始に掲げる目標の定番ですが、多くは「三日坊主」で終わってしまいます。
実は私もかつては何をやっても続かず、習い事やダイエットに挑戦しては挫折を繰り返していました。友人からは「究極の飽き性」と言われるほどで、続けることに苦手意識を持っていたのです。
しかしある時、習慣化できている人に話を聞いて、続かない原因が性格や意思の問題ではないと気づきました。彼らは「続けるためのコツや原則」を押さえ、片づけ、ダイエット、英語学習など、さまざまな分野で応用していたのです。
そこで私も彼らに倣ってみたところ、驚くほど継続できるようになり、5年で52の習慣を身につけることができました。そのおかげで念願だった独立を果たし、理想のライフスタイルを手に入れるまでに至ったのです。
私はこの経験をもとに習慣化のメソッドをつくり、「続けるチカラ」を広める活動をしています。この記事ではまず、続けることで得られる2つの効果からご紹介していきます。
続けるチカラの効果
1. 複利的に成長する
続けることの大きな効果の一つ目が「複利的な成長」です。たとえば、毎月3万円を貯金すると20年で720万円になりますが、3%の複利運用をすれば約1,000万円になります。これと同じように、習慣も続けるほど成長が加速します。
英語学習を1日30分続ければ、最初は小さな変化でも、6か月後には外国人と簡単な会話ができ、1年後にはTOEICのスコアが向上します。さらに3年後には海外出張、5年後には海外赴任と、より大きな成果につながる可能性が広がります。読書も同様で、毎日30分読めば6日で1冊、3年で180冊分の知識が蓄積され、仕事の成果や昇進にもつながり得ます。
人間関係においても、笑顔を続けるだけで周囲の反応が変わり、仕事や生活が好転します。これにより、前向きで快活に過ごせるようになり、さらなる好循環が生まれるでしょう。続けることが、単純な積み重ね以上の大きな成果をもたらすのです。
2. 自己評価が上がる
続けることの効果の2つ目は、自己評価の向上です。やると決めたことを達成すると、自分との約束を守れたと感じ、自信が生まれます。一方で続けられないと、自分への失望から落ち込んでしまいがちです。自己評価が低いと、どれだけ成功しても満たされず、高価なブランド品やハイスペックな恋人など、外的なもので自分の価値を補おうとします。しかし、真に自己評価を高めるには、内面からのアプローチが欠かせません。
そのために大切なのは、自分との約束を守ること。その最も簡単な方法が、何かを続けることなのです。
続けるチカラが身につけば、複利的に成長できて自己評価も高まり、人生が輝きだします。人間関係や仕事、プライベートでも良い影響の連鎖が生まれてくるのです。アリストテレスも「人は習慣によってつくられる。優れた結果は、一時的な行動ではなく習慣から生まれる」と述べています。日々の積み重ねが自分を形づくり、未来を変えていくのです。
継続力について知っておきたいこと
なぜ、あなたは続かないのか?
では、どうすれば「続けるチカラ」が身につくのでしょうか。
そもそも、物事が続かないのは意志が弱いからではありません。人間の本能が「変化を避け、いつも通りを維持しよう」と働くためです。
風邪で熱が出ても自然と平熱に戻るように、脳も「いつも通り」を保とうとします。そのため、例えばダイエットを決意しても、生存本能が働き、普段通り食べたくなってしまうのです。私はこの変化を拒む本能の働きを「習慣引力」と呼んでいます。続かない原因は、意志の弱さではなく、この習慣引力にあるのです。
習慣化とは、意志に頼らず自然に続く状態を作ること。習慣引力は、はじめこそ習慣化の壁となりますが、逆に一度習慣化してしまえば、維持の後押しをしてくれます。毎日の歯磨きのように、「していない方が落ち着かない」という状態を作ってくれるのです。習慣引力を味方につけるまで、粘り強く続けましょう。
習慣は3種類ある
習慣にはさまざまな種類があり、定着するまでにかかる期間も異なります。私は、習慣は大きく分けて以下の3種類があると考えています。
- 行動習慣(習慣化の目安:1か月)
片づけ、英語学習、日記、節約など、日常の行動に関わる習慣です。 - 身体習慣(習慣化の目安:3か月)
ダイエット、運動、早起き、禁煙、筋トレなど、身体のリズムに関わる習慣です。 - 思考習慣(習慣化の目安:6か月)
ポジティブ思考、発想力、論理的思考力など、考え方に関わる習慣です。
続けたいことの習慣化にはどれだけの期間が必要なのか、知ったうえで取り組むことが重要です。
三日坊主を防ぐ3原則
これまで多くの人の習慣化をサポートしてきた経験から、続かない原因は習慣を始める前の計画と取り組む姿勢にあることがわかりました。三日坊主を防ぐために、次の3つの原則を実践してみましょう。
原則1 一度に1つだけ取り組む
挫折の最大の原因は、一度にいくつも挑戦しすぎることです。
たとえば、片づけ・ダイエット・英語の勉強を同時に始めると、3日目に英語が続かなくなり、5日目でダイエットを諦め、最終的に片づけも挫折…というように、次々と失敗しがちです。特にダイエットは、運動と食事制限を同時に始めると身体への負担が大きくなり、継続が難しくなります。
私自身も、一度にいくつも挑戦した際は、数日でペースが落ち、1週間も経たずにすべてやめてしまうことを繰り返していました。成功のポイントは、「一度に1つに集中すること」です。たとえばダイエットなら、まず食事制限を習慣化し、その後で運動を加える。そうすることで無理なく続けられ、習慣が定着しやすくなります。
原則2 複雑なルールにしない
行動ルールを複雑にしすぎることも、挫折の原因になります。
たとえば、私が英語学習を習慣化しようとしたとき、次のようなルールを決めました。
- 朝の電車で単語を覚える
- 会社で英字新聞を読む
- 昼食中にリスニングをする
- 帰りの電車で英文日記を書く
英語学習という目的は1つでも、ルールが多すぎて続けられませんでした。
大切なのは、1つの行動に絞って取り組むこと。上記の例で言えば、はじめは「通勤電車で単語を覚える」だけで十分です。もし、1か月続けられたら2つ目のルールを追加すれば良いのです。シンプルなルールほど続けられます。
原則3 結果より行動を重視する
結果にこだわりすぎることも、行動リズムの崩れにつながります。たとえば、私がダイエットを決意した時は、「1か月で体重5キロ減」を目標に、毎日の摂取カロリーを1,500kcalに制限していました。しかし、20日が経っても2キロしか減らず、焦って900kcalに制限。その結果、一時的に5キロ減は達成できたものの、無理がたたってすぐにリバウンドしてしまいました。
もし、目先の結果にとらわれず、1,500kcalのペースを3か月続けていたら、より安定して減量できていたかもしれません。習慣が定着するまでは、毎日続けることが最優先。焦らずとも、習慣化できれば成果は後からついてきます。また一度習慣化してしまえば、ペースを落としても継続できるようになります。
次回からは、習慣化するための実践的な3つのステップをご紹介します。
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古川 武士
習慣化コンサルタント 習慣化コンサルティング株式会社 代表取締役
関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に人材育成会社を設立。
コーチング・心理学を専門にこれまで企業研修・講演を通じて2万人以上の育成に携わってきた。
また、個人コンサルティングとしては経営者から若手ビジネスパーソン、主婦まで幅広く200名以上を支援している。多くの育成現場で痛感したことは、人が本当に変わっていくためには、
よい習慣を確実に身につける「続ける習慣」が重要と考え、オリジナルの習慣化理論とメソッドを開発。
独自メソッドを元に、企業研修、個人向けセミナー、コンサルティングを行っている。
著書に『続ける習慣』(現在7万部突破、韓国・台湾・中国で翻訳)『やめる習慣』
『すぐやる習慣』など計16冊で70万部を超えている。メディア掲載実績として、NHK、テレビ朝日、テレビ東京、朝日新聞、日経ビジネス、日経ウーマン、OZPLUS、プレジデント、
プレジデントファミリー、「企業と人材」等がある。