令和6年度の業務改善助成金とは?昨年との違いを交えて詳細解説

令和6年度も新たに業務改善助成金の受付が実施されています。
生産性向上に悩む事業所を担当している税理士・会計士の方は、活用をおすすめしてみてはいかがでしょうか。

本記事では、令和6年度の業務改善助成金の詳しい概要や令和5年度の業務改善助成金からの変更点など、詳細を説明しています。今一度、概要を確認したい方は、ぜひ記事内容をご確認ください。

目次

業務改善助成金の概要と詳細について

業務改善助成金とは、事業所内の最低賃金を一定額以上引き上げつつ、生産性向上のための設備投資を行った場合に、かかった費用の一部を助成する制度です。

賃上げの計画と設備投資などの計画を申請して、計画どおりに実行した後の結果を報告することで最大600万円が支給されます。

事業所内の最低賃金とは、雇用から3ヶ月経過した従業員が受け取る賃金の中で、もっとも安い賃金のことを指します。

対象の事業者

次の3つの条件を満たす事業者が業務改善助成金の対象となります。

  • 中小企業または小規模事業者
  • 事業所内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
  • 解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がない

事業所内の最低賃金は、地域の最低賃金に限りなく近いことが前提となっています。従業員に対して不当な賃金引き下げや解雇を行っている企業は対象外です。

申請は会社単位でなく事業所単位で行います。

対象となる経費または設備投資

生産性向上に意味のある経費が助成金の対象です。経費の区分と対象となる経費の例を一覧表にまとめました。

経費区分対象経費の例
機器と設備の導入・PDSレジシステムの導入による在庫管理の効率アップ
・自動食器洗浄機の導入
経営コンサル専門家による業務フロー見直しにて得られる顧客回転率の向上
その他店舗のリフォームによる配膳時間の短縮など

コンサルの経費計上について、具体例を交えて説明します。

例えば、ある飲食事業者が店内飲食の減少を受けて、コンサルティングを利用して業務改善を試みたとします。

飲食店はデリバリー販売を拡充することになり、受注システムは配送用のバイク、フライヤーなどを導入しました。あわせて業務拡大による仕事量の増加に伴い、従業員の時給を100円アップしました。

この場合は、コンサルティング費用や各種設備の導入・購入費用が助成の対象になります。業務改善の具体的な活用事例は、厚生労働省が公開している「生産性向上のヒント集」で確認できますので、担当している事業所の改善計画が該当するか確認してみましょう。

特例事業者の扱いについて

次の3つの要件を満たす事業者は特例事業者として、助成金の対象となる経費が拡大されます。

1.賃金の要件事業場内最低賃金が950円未満の事業者→助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)が受けられる
2.生産量の要件
(令和6年3月31日申請分まで)          
新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高や生産量等の事業活動を示す指標の直近3か月間の月平均値が、前年、前々年又は3年前同期に比べ、15%以上減少している事業者→助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)のほか、助成対象経費の拡大が受けられる
3.物価高騰などの要件原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月の利益率が3%ポイント以上低下している事業者→助成上限額の拡大(助成上限額の区分10人以上)のほか、助成対象経費の拡大が受けられる

2と3の要件を満たす事業所は、パソコンや車などの費用も対象となるため、思い切った業務改善に踏み切ることもできます。

事前に特例事業者の要件も確認しておきましょう。

業務改善助成金 申請から支給までの流れ

業務改善助成金の交付申請先は、事業所がある都道府県の労働局です。交付申請から支払いまでの手続きの流れは次の通りです。

支給までの流れ詳細
1.交付申請交付申請書や事業実施計画書などの必要書類を提出
2.交付決定審査の後、交付決定が通知される
3.事業の実施申請内容に沿って、設備の導入や賃金の引き上げを進める
4.事業実績報告労働局に事業実績報告書や助成金支給申請書などを提出する
5.交付額確定書類の確認と審査を経て適正と認められれば交付額が決まる
6.助成金受領労働局から助成金が入金される

令和6年度分の申請期限は令和6年の12月27日、事業の完了期限は令和7年の1月31日です。

令和6年度の業務改善助成金の変更点をチェック

令和5年度の業務改善助成金から変更されている4つのポイントを紹介します。

変更点詳細
1.特例事業者要件新型コロナウイルスの影響を受けた事業者向けの「生産量要件」が終了(賃金要件と物価高騰等要件は引き続き継続)
2.経費の特例「生産量要件」又は「物価高騰等要件」の事業者に認められていた「関連する経費」が終了(車・PCなどの導入は引き続き実施)
3.申請回数 令和6年度中に可能な申請回数は1回まで
4.賃金引上げ方法 事業場内最低賃金の引上げは1回のみ(複数回の引上げは助成対象外)

今から申請する場合、令和6年度の取り扱いとなるため、変更点はすべて適用されます。令和6年度の新たな要件では、複数回にわたる賃金の引き上げは無効となりました。

引き上げ1回のみは要チェックポイントです。

助成金の上限額と助成率について

助成金の上限額と助成率について、定められているルールを紹介します。

助成上限額

助成金の上限額は、賃金を引き上げた労働者の数と、引き上げた賃金の金額によって決まります。
引上げ金額ごとの上限額を一覧表にまとめました。

※引上げ労働者数10人以上の上限額は特例事業者のみ対象となります。

賃金引上げ30円以上

賃金を引き上げた労働者数右記以外の事業者事業場規模30人未満の事業者
1人30万円60万円
2〜3人50万円90万円
4〜6人70万円100万円
7人以上100万円120万円
10人以上※120万円130万円

賃金引上げ45円以上

賃金を引き上げた労働者数右記以外の事業者事業場規模30人未満の事業者
1人45万円80万円
2〜3人70万円110万円
4〜6人100万円140万円
7人以上150万円160万円
10人以上※180万円180万円

賃金引上げ60円以上

賃金を引き上げた労働者数右記以外の事業者事業場規模30人未満の事業者
1人60万円110万円
2〜3人90万円160万円
4〜6人150万円190万円
7人以上230万円230万円
10人以上※300万円300万円

賃金引上げ90円以上

賃金を引き上げた労働者数右記以外の事業者事業場規模30人未満の事業者
1人90万円170万円
2〜3人150万円240万円
4〜6人270万円290万円
7人以上450万円450万円
10人以上※600万円600万円

助成率

事業所内の最低賃金助成率
900円未満9/10
900円以上950円未満4/5(9/10)
950円以上3/4(4/5)

※()内は生産性の要件を満たした事業所の場合です。
設備投資などの経費に助成率を乗じて、助成金が算出される仕組みです。

引き上げる労働者の数の数え方

引き上げる労働者のカウント方法は、事業所内最低賃金の労働者と賃金を追い抜かれる労働者です。申請コースの金額以上に引き上げなければカウントの対象にはなりません。

引上げ労働者のカウント方法はかなり難解です。

厚生労働省のサイトに詳細が記載されていますので、内容を確認して理解を深めましょう。

助成金の計算方法

業務改善助成金は、設備投資にかかった費用に助成金を乗じた金額、もしくは助成上限額のいずれか低い方が支給されます。

例えば事業所内最低賃金が900円の事業所が90円コースに申請して、8人の賃金を引き上げたとします。この場合の助成上限額は450万円です。

一方で生産性向上のために投じた設備投資経費は600万円でした。600万円に該当の助成率4/5を乗じると480万円になります。

したがって、450万円<480万円となり、事業所が受けられる助成金は450万円です。

業務改善助成金を申請する時の注意点

業務改善助成金を申請する際に気をつけたいポイントは次の3点です。

  • 交付が決まる前に導入した対象の設備は助成の対象外
  • 予算がなくなり次第募集が終了になることもある
  • 過去に業務改善助成金を利用した事業所でも再度申請できる

交付決定前に使った経費は助成金の対象外です。必ず決定の通知を確認してから事業をスタートすることを事業所へ伝えましょう。

業務改善助成金は、予算の範囲内で運用されるため、予算がなくなり次第打ち切りになります。活用を迷っている事業所には、早期打ち切りの可能性があることも伝えておく必要があります。

また、過去に業務改善助成金を活用した事業所でも再度申請可能です。

まとめ

業務改善助成金は、生産性と収益性の向上を目指す中小企業にとって、とてもありがたい制度です。低コストで設備投資やコンサルティングが利用できるのは、心強い限りです。

助成金を受けるには賃上げが必須とされていますが、生産性向上によって売り上げが上がれば、人件費と相殺できるでしょう。収益性の向上に悩む事業所には、業務改善助成金を案内してみてはいかがでしょうか。

【まとめ記事】令和6年度の助成金・補助金について紹介します

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