顧客の売上を創出する!ビジネスインフラを目指す「琉球会計」の次なる戦略とは? 沖縄からアジアを見据え、税理士の枠を超える若きトップの流儀に迫る  Vol.2

顧客の売上を創出する!ビジネスインフラを目指す「琉球会計」の次なる戦略とは? 沖縄からアジアを見据え、税理士の枠を超える若きトップの流儀に迫る

税理士法人琉球会計 公認会計士・税理士 松茂良 昇

沖縄県で開業4期目にして25名規模へと急成長を遂げ、クラウド会計の導入実績で全国アワードのルーキー賞にも輝いた琉球会計。圧倒的なスピードで組織を拡大する裏には、異業種からの未経験者採用やAIの徹底活用、そして「会計事務所をビジネスインフラにする」という壮大なビジョンがあった。「活気ある島を創る」をミッションに掲げ、既存の税理士業界の常識を次々と打ち破る若きリーダー、松茂良昇代表に、事務所経営の実践的な戦略や今後の業界展望についての熱い思いを伺った。

単純な入力作業はAIが完璧にこなす時代
人にしかできない「感情に寄り添う提案」を

先ほどAIのお話が出ましたが、クラウド会計以外にAIをどのように業務へ落とし込んでいるのでしょうか。

直近の具体的な例で言いますと、マネーフォワードが提供しているSTREAMEDに似た記帳システムを、社内で独自に開発しました。開発をメインで担当したスタッフの名前をもじったネーミングで運用しています。また、複雑な税務相談などをすべてGeminiに読み込ませて、基本的な質問への回答をAIに任せたり、スタッフが作成した申告書レビューの一次チェックをAIが自動で行えたりするような業務フローの整備を進めています。単純な生産性向上はもちろんですが、人間のミスを防ぎ、より高度な判断にリソースを割くためにもAIの活用を推し進めています。


業務効率化の枠を超えた、新たな提案活動にもAIを活用される予定はありますか。

我々は現在、オンラインミーティングや電話、あるいは対面での面談データを、お客様の許可を得たうえで基本的にすべて録音するようにしています。そして、自動で文字起こしをしたテキストデータを、顧客管理システムのkintoneにシームレスに入るように構築しています。現在はそれをベースに次回の面談記録を効率的に作っている段階ですが、今後は蓄積されたその膨大な会話データをAIに解析させ、「今日お話しした経営状況やオフィス環境の課題であれば、こちらの補助金・助成金の活用がおすすめです」といった付加価値の高い提案が、システムから自動的に出せるような未来を目指して開発を進めています。

すごいですね。AIが浸透していくと、これまで入力作業を得意としていた方々の仕事はどうなっていくとお考えですか。

これまでのような単純な入力作業などの事務系タスクは、間違いなくAIが完璧に行うようになります。そのため、そうした入力作業を得意としていた方も、お客様の前に出て直接コミュニケーションを取るフロント業務へシフトしていくことが絶対に必要だと思っています。AIはデータを整理・分析することはできても、自らお客様の感情に寄り添い「提案」することは現時点ではできないと考えているので、人間ならではのフロント業務の価値を徹底的に高めていきます。
また、AIの活用によって劇的に余った時間を使って、スタッフ自体の高度な能力開発を行い、コンサルティングなど他の価値提供ができるようにしていくことを考えています。もし、どうしても対面コミュニケーションが苦手で、黙々と作業をするのが好きだという方がいれば、単なる記帳代行をより高度に拡張した「経理代行」という業務を専門で担当してもらうなど、適材適所で輝ける場所を作りたいと考えています。

とはいえ、AIがすぐに業界全体へ完全浸透する部分ばかりではないため、人的なサポートは引き続き不可欠です。ただ、採用面接などで「私は入力がめちゃくちゃ早いです」とアピールされる方がいますが、この時代においてはAIのスピードと正確性に勝てなければ何の自慢にもなりません。スピードだけを誇っていた経験者の方は、この考え方に合わずに辞められたケースもありましたね。AIが自動処理したものを盲目的に鵜呑みにせず、専門家の目で「ちゃんとチェックする」という作業の本質を担っていけるかどうかが、これからの士業には重要だと考えています。

税理士の枠を超え「ビジネスインフラ」へ
財務データと絶対的な信用力で描く未来像

今後、会計業界全体はどのように変化していくと予測されていますか。

業界の垣根は、今後どんどんなくなっていくのだろうなと確信しています。例えば、通信大手のソフトバンクがPayPay銀行を傘下に持ち、au(KDDI)も独自の金融サービスを展開しているように、彼らは自社の巨大な顧客データや顧客網をフルに生かして、金融という次のサービス展開に乗り出しています。今後、我々のような会計事務所が展開するビジネスにおいても、地域に根ざした「中小企業の顧客網」と、その緻密な「財務データ」が最大の武器になってきます。そのリアルな経営データを生かして、最適なタイミングでアップセルやクロスセルの提案をどんどん行えるような、プラットフォーム的な業界になってくると思うのです。だからこそ、税務顧問だけでなく、どれだけ多様なサービスラインの商品を持てるかが勝負の分かれ目になります。

その中で、琉球会計としてはどのような立ち位置を目指すのでしょうか。

我々としても、昔ながらの税理士業務だけにとどまるつもりはありません。社労士業務や行政書士業務といった周辺の士業業務からしっかりと固めていき、次に企業の血液である資金繰りを支える融資コンサルなどを展開する。そしてその次は、お客様の業務効率化を推進するIT・DX支援まで踏み込んでいく。ゆくゆくは、企業の成長に欠かせないいわゆる「ビジネスインフラ」になれるような絶対的な存在になるという構想があります。一方で、会計業界全体を俯瞰して見ると、我々のようにあらゆる課題を解決する「総合型の会社」になるのか、あるいは個人を主体とした「本当にニッチで専門的なことだけをやる職人」になるのか、この両極端な二極化に分かれていきそうだなと予想しています。前者の総合型を目指す場合は、顧客基盤やデータを取得するという意味でも、M&Aなどを活用して組織規模がますます大規模になっていくでしょうね。

顧客の財務状況をすべて把握しているからこそできる、特有のサービスなどはすでに取り組まれていますか。

会計事務所という存在は、他業界の一般企業と比べて圧倒的に「社会的な信用力」が違います。我々としても、その絶対的な信用力を最大限に生かした新しいサービスを展開しています。例えば、4月から本格的にスタートした面白い取り組みがあるのですが、飲食店などを営むお客様から魅力的なSNSの素材写真や動画をいただき、それを我々「琉球会計」の法人アカウントで大々的に宣伝するという広報代行サービスを始めました。

フォロワー数など、影響力としては普通の人気インスタグラマーと比較するとまだまだ全然なのですが、我々会計事務所がこれをやる意義は全く別のところにあります。我々が「用心棒」のように背後にいて、「顧問税理士として、このお店をしっかり見ていますよ」という絶対的な安心感をお客様に対して付与することにあります。そして、そのSNSを見ているその先のエンドユーザーにも、「信頼ある会計事務所がしっかりついている、経営のしっかりした会社だ」という無形のブランド価値が届けばいいなと思っています。この取り組みで実際にお金を取っているわけではないのですが、「税理士が推薦しているから」という言葉の背景にある絶大な信用力を、お客様の売上貢献に活かしていきたいのです。ちなみにSNSの運用は、私個人のアカウントでXなどを発信しつつ、法人アカウントは若手スタッフたちが中心となって活発に運用しています。

掲げるビジョンは「活気ある島を創る」。
沖縄から東京、そしてアジアへと続く挑戦

琉球会計が掲げているビジョンについて教えてください。

Missionは「沖縄を起点に、挑戦を共にし、成長と安心を支え続ける」、Visionとして、「挑戦があふれ、未来が広がる、活気ある島を創る」を掲げています。実際に地方創生のセミナーなどに登壇することも多いのですが、言葉だけでなく、まずは我々自身が前例にとらわれない様々な挑戦を体現していくことが重要です。そして、県外へ積極的に出て得た最新の知見やつながりといった「還元」を地元沖縄に持ち帰り、周囲の企業や若者たちに熱い刺激を与えられればいいなと思っています。第一ステージとしては、私たちのホームである沖縄という「島」を中心に見据えて活動していますが、日本全体も海に囲まれた島国であることを深く意識したうえで、この「活気ある島を創る」という言葉を選びました。

将来的には沖縄を飛び出し、県外への進出も視野に入れているのでしょうか。

もちろんです。沖縄から県外へも打って出ますし、ある程度沖縄で圧倒的な知名度を得た後に、満を持して東京に進出したいと考えています。東京に事務所を構える理由や戦略的な狙いとしては、単なる市場拡大だけではありません。最大の理由は、沖縄へのUターン希望者の「受け皿」を作ることです。東京の最前線で働く優秀な人材の中には、30代になって「そろそろ地元に帰りたい」と考える層が一定数います。そうした方々が、これまでのキャリアを途切れさせることなくスムーズに沖縄へ戻れるような最高の環境を作りたいのです。
沖縄は他県と比べても特に地元愛が強い県民性です。「琉球会計」という看板を東京で掲げることで、そうした優秀な沖縄出身者を早期に惹きつけ、事業を拡大できると期待しています。闇雲に全国制覇を目指すのではなく、あくまで「東京で得たノウハウや人材を、沖縄にどう還元できるか」という視点を何より大切にしています。

「琉球会計」という事務所名には、台湾などアジア圏への意識も込められていると伺いました。

はい、我々があえて「琉球」と付けた名前の一つにも明確な理由がありまして、実は台湾には「小琉球」という呼び方をする美しい場所があります。将来的には、台湾など東アジア地域にもビジネスを展開し、進出できたらいいなと長期的には見据えています。あえて漢字で「琉球会計」と名乗っているのも、日本国内だけでなく、将来的に中華圏やアジア諸国にもスムーズに受け入れられるようにというグローバルな思考を込めているんです。
とはいえ、先輩経営者の方々からは「まずは国内の県外で遠隔ビジネスの難しさを徹底的に学んだ後にやらないと、いきなり海外は難しいよ」と的確なアドバイスをいただいたので、最近はあまり大きい声では言わないように自制していますが、いつかは必ずそうしたいと闘志を燃やしています。よく考えてみれば、沖縄から飛行機で福岡に行くのも1時間半ですが、台湾に行くのも同じ1時間半ですからね。心理的な距離はとても近いのです。何か面白いビジネスの種がないかなという感じで、アンテナを張るために年に2回は台湾に足を運ぶようにしています。


必要なのは完璧な準備より
「行動を正解にする」覚悟

松茂良代表と同じように、30代で独立や起業を考えている読者に向けて、アドバイスをお願いします。

アドバイスというと少し偉そうになってしまうのですが、あえて言うなら「とりあえずめちゃくちゃ完璧に準備したところで、それがそのまま役立つことはほぼないので、本気で独立したいならさっさと行動に移した方がいい」ということですね。あとは、自ら下したその決断を「正解」にするように、泥臭くやり切るしかない。これは私自身が身をもって痛感したことなので、同年代の挑戦者たちに強く伝えたいと思います。もちろん、市場の徹底的な分析や、沖縄県内の既存の税理士のリストアップ、数年先を見据えた資金計画など、経営者として最低限の準備はしっかりと行っています。しかし、どれだけガチガチに隙なく準備したところで、いざ開業すれば想定外のトラブルは日常茶飯事で起きます。頭で考える時間を、走りながら軌道修正する時間に充てた方が絶対に早いです。

ご自身の事業拡大にあたって、参考や支えにされている方はいるのでしょうか。

同じ目線で相談できるメンター的な人が身近にいたら、精神的にも戦略的にも非常に強いかもしれないですね。私の場合、アーリークロス代表の花城さんの影響はかなり大きいです。SNSやスタートアップ系の映像などにいつも熱気にあふれた姿で出ていらっしゃったのを見て、「この人とどうにかお話しできないかな」と強烈に惹かれ、思い切って直接連絡をとってみたんです。実際にお会いすると、映像のままのすごく熱い方でした。

「経営なんて、結局やる気でしかないよ」という力強い言葉をもらい、事業を大きくしていくための組織拡大のノウハウや、経営者としてのパッションの持ち方など、本当に多くのことを惜しみなく教えてもらっています。5月も一緒に沖縄で駅伝のタスキを繋いで走ったりと、単なる業務の枠を超えたプライベートなところでも密に連絡を取らせていただき、常に刺激をもらっています。

最後に、今後の組織拡大への具体的な打ち手があればお聞かせください。

県外への展開として、東京の後は大阪を狙うのか、それとも一気に台湾へ行くのか、その進出の角度とタイミングは慎重に考えたいところです。同時に、足元の沖縄県内でも戦略的なM&Aなどができないかなと模索しています。長年地域に根ざしてこられた老舗の事務所様などと、お互いの強みを持ち寄って協力していきたいと考えています。我々の明確なデメリットとしては、勢いはあるものの業界としての経験年数が短いというところと、いわゆる「ザ・税理士」という職人気質の集団ではないため、マニアックで細かい税務上の論点になった時にまだ弱い部分があることは自覚しています。そこをしっかりと補っていくために、お互いのビジョンが合う相手を厳格に選んだ上でM&Aが実現できたら、双方にとって計り知れない強みになるよね、と未来に向けて準備を進めています。

プロフィール
税理士法人琉球会計 松茂良 昇
沖縄県出身。公認会計士・税理士。
EY新日本有限責任監査法人を経て、2023年に税理士法人琉球会計グループを設立し代表に就任。
設立4期で約25名のスタッフとともに県内約550事業者の会計・税務を支援する体制を構築し、M&A・組織再編・外部CFO業務を軸に企業の成長支援を手掛ける。関連会社として琉球会計ビジネスサポートを運営。
直近ではAIを活用したバックオフィスの効率化・体制構築の支援にも注力する。
「沖縄を起点に、挑戦を共にし、成長と安心を支え続ける」ことを理念に、地域企業の財務基盤強化に取り組む。

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