定期的にxx繰り返すSNSトラブル
<ネット時代に必要な企業防衛の極意 vol.48>
昨今のサイバー攻撃強化で改めて注目度が高まっているセキュリティ対策。2022年4月に施行された改正個人情報保護法でも、個人情報の利用や提供に関する規制が強化されています。一方で、ネット上の情報漏洩や誹謗中傷といった事例も近年、急増しています。当コラムでは、こうしたネット上のリスクや対応策について詳しく解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.152(2026.6)に掲載されたものです。
弁護士法人戸田総合法律事務所 代表
中澤 佑一 先生
2026年4月、西日本シティ銀行の行員が支店の執務室内をSNSアプリ「BeReal」で撮影・投稿し、顧客7人の氏名が記載されたホワイトボードが映り込んだ動画がX上で拡散されるという事件が起きました。投稿は1千万回以上閲覧され、同行がホームページで謝罪する事態に発展しています。なお、この投稿は最近のものではなく、過去の投稿が第三者によって発見・拡散されたものです。一度ネットに出た情報はいつ掘り起こされるかわからないという、SNSの恐ろしさを改めて示す事例です。
この4月は他にも、テレビ番組制作会社の新入社員が番組のシフト表や入館証をInstagramに投稿した事件、大手メーカーグループの新卒社員が機密保持誓約書をSNSに投稿した事件と、従業員のSNSによる情報漏洩が立て続けに発生しました。以前このコラムでSNSガイドラインの策定をお勧めしましたが、この種のトラブルは数年おきに繰り返されています。2013年頃のアルバイト店員による不適切動画、2019年頃の「バイトテロ」、2023年の「醤油ぺろぺろ」事件などなど、大きなニュースになっても、数年経つと同種の事件がまた発生します。大きなニュースを見て「自分は気をつけよう」と思った世代はしばらく慎重に行動しますが、時間が経つと忘れてしまったり、またそのニュースがあった時にまだ子供だった世代が、教訓を経験しないままSNSを使い始め、同じ過ちを繰り返すのです。
今回問題になったBeRealは、毎日ランダムな時間に通知があり、その通知が届いてから2分以内に撮影して投稿しなければならない仕組みです。投稿は24時間で消えるため「すぐ消えるから大丈夫」という感覚があったのかもしれません。しかし、スクリーンショットで保存されれば拡散されますし、西日本シティ銀行の事例のように過去の投稿が後から発見されることもあります。ネットに一度出た情報は消えないという大原則は、どんなアプリを使おうと変わりません。
企業としての対策は、SNSガイドラインを策定し、企業としてのSNSに対する距離感や社員に求める対応を明確化することに加えて、ガイドラインに基づくリテラシー研修を「毎年繰り返す」ことが重要です。「職場で顧客の個人情報が映り込む写真を撮ってSNSに載せてはいけない」─こんなことは当たり前だと思われるでしょう。しかし、現にその当たり前ができていない人がいるからこそ、銀行が謝罪に追い込まれているわけです。研修では、こんなことをわざわざ言わなければならないのかというレベルのことから、具体的な事例を示して伝える必要があります。「入館証の写真」「シフト表」「PC画面の写り込み」「執務室の風景」─何がダメなのかを具体的に示さなければ、「業務上知り得た秘密を漏らしてはならない」という抽象的な規定だけでは伝わりません。当たり前のことを当たり前に、しかし毎年繰り返し伝え続けること。終わりのないこの取り組みこそが、企業を守ることにつながります。
中澤 佑一
なかざわ・ゆういち/東京学芸大学環境教育課程文化財科学専攻卒業。 上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。2010 年弁護士登録。2011 年戸田総合法律事務所設立。 埼玉弁護士会所属。著書に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』(単著、中央経済社)、 『「ブラック企業」と呼ばせない! 労務管理・風評対策Q&A』(編著、中央経済社)など。
