【令和8年度】免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の見直し・控除割合の変更について解説

【令和8年度】免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の見直し・控除割合の変更について解説

免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置は、令和8年税制改正により、見直されました。

従来は、令和8年(2026年)10月1日以降、控除割合が50%になる予定でしたが、2年間は、控除割合を70%とし、経過措置が延長されることになりました。

免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置とはどのような制度なのか、経過措置の見直しに伴い、何を行うべきなのかについて解説します。

目次

消費税の仕入税額控除とは

消費税の課税事業者は、自社の売上にかかる消費税を納税しますが、その際、自社の仕入れにかかった消費税を差し引いて(控除して)計算します。

例えば、1,000万円(税抜)の売上がある場合、100万円の消費税を受け取ります。

一方で、500万円(税抜)の仕入れを行っている場合は、50万円の消費税を支払っています。100万円をそのまま納税すると、仕入れ先に支払った50万円とあわせて「二重課税」になってしまいます。

そのため、売上時に受け取った消費税から仕入時に支払った消費税を差し引いた、差額の50万円を納税すればよいことになっています。

これを「仕入税額控除」と言います。

仕入税額控除を受けるには適格請求書(インボイス)が必要

令和5年(2023年)10月1日からインボイス制度が始まりました。インボイス制度のもとでは、上記の仕入税額控除を受けるには、売手側が交付した適格請求書(インボイス)を保存しなければならないことになりました。

しかし、インボイスを発行できる適格請求書発行事業者になるためには、課税事業者とならなければなりません。売手側が消費税の免税事業者の場合は、インボイスを発行できないため、仕入税額控除を受けられないわけです。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置とは?

免税事業者との取引で仕入税額控除を受けられない場合、免税事業者が取引の対象から外されるなどの不利益を受ける恐れがあります。

そこで、インボイス制度の開始後の数年間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置による具体的な納税額

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置を受ける場合、消費税の納税額はどうなるのか、具体例で計算してみましょう。

例えば、1,000万円(税抜)の売上があり、100万円の消費税を受け取ったとします。

一方で、免税事業者等から500万円(税抜)の仕入れを行ったとしましょう。免税事業者等との取引については、仕入税額控除を受けられないため、100万円を納税しなければならないのが原則です。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置により、80%控除を受ける場合は、
50万円×80%=40万円となり、この分は、仕入税額控除として計上できます。

その結果、100万円−40万円=60万円 として、この金額のみ納税すればよいわけです。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合は?

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合は、次のとおりでした。

期間控除割合
令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日まで80%
令和8年(2026年)10月1日から令和11年(2029年)9月30日まで50%

令和8年税制改正による免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の見直し

令和8年税制改正では、免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置が見直されました。

控除割合が上記の通り、令和8年(2026年)10月1日以降は、50%となり、令和11年(2029年)10月1日からは控除割合がなくなるというのが従来のスケジュールでしたが、これが変更されました。

具体的には次の経過措置になりました。

期間控除割合
令和8年(2026年)10月1日から令和10年(2028年)9月30日まで70%
令和10年(2028年)10月1日から令和12年(2030年)9月30日まで50%
令和12年(2030年)10月1日から令和13年(2031年)9月30日まで30%

令和8年(2026年)10月1日以降2年間は、70%の控除割合になったこと、控除割合を適用できる期間が令和13年(2031年)まで延長されたことが大きな変更点です。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置を受けるためには?

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置を受けるためには次の要件を満たさなければなりません。

  • 経過措置の対象となる取引であること
  • 必要事項が記載された帳簿及び請求書等を保存すること
  • 1免税事業者ごとの年間適用上限仕入額を超えていないこと

一つ一つ確認しましょう。

経過措置の対象となる取引であること

まず、経過措置の対象となる免税事業者等からの仕入れであることが前提となります。

具体的には次のような仕入れのことです。

  • 免税事業者からの仕入れ
  • 消費者からの仕入れ
  • 適格請求書発行事業者の登録をしていない課税事業者からの仕入れ

必要事項が記載された帳簿及び請求書等を保存すること

経過措置を受けるためには必要事項が記載された帳簿及び請求書等を保存することが求められています。帳簿については、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要です。

具体的には、次の事項です。

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 課税仕入れを行った年月日
  • 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)及び経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
  • 課税仕入れに係る支払対価の額

請求書等については、区分記載請求書等と同様の記載事項が必要です。

具体的には、次の事項です。

  • 書類の作成者の氏名又は名称
  • 課税資産の譲渡等を行った年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  • 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
  • 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

1免税事業者ごとの年間適用上限仕入額を超えていないこと

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置には、1免税事業者ごとの年間適用上限仕入額が設定されています。

従来は、1免税事業者ごとの年間適用上限仕入額は、「10億円」でした。令和8年税制改正により、この金額が「1億円」に変更されたので確認しておきましょう。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置を受けるための手続き

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置を受けるためには特別な手続きは必要ありません。事前の届出や申請等は必要なく、上記の要件を満たしていれば、適用することが可能です。

免税事業者等である仕入先との交渉の注意点

令和8年税制改正では、免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置が延長されることになりましたが、いずれは、経過措置が終了すると考えるべきでしょう。

経過措置の終了を見越して、少しずつ対策を講じておく必要があります。具体的には、免税事業者等である仕入先との取引を見直すことになりますが、その交渉ではいくつか注意すべきことがあります。

免税事業者に適格請求書発行事業者になることを強要しない

適格請求書発行事業者の登録は任意のため、 免税事業者にはその義務はありません。

仕入先の免税事業者に対して、適格請求書発行事業者になることを強要すると、独占禁止法等に抵触する恐れがあるので注意が必要です。

取引価格を引き下げる、取引を打ち切るといった、一方的な通告を行わない

仕入先の免税事業者との間で、税額控除の割合が減額されることや経過措置が終了することを前提に、取引価格の減額交渉を行うことはできます。

ただし、交渉を行わずに、取引価格を引き下げる、取引を打ち切るといった、一方的な通告を行うと独占禁止法等に抵触する恐れがあるので注意が必要です。

経過措置にあわせて資金計画の見直しを行う

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置は今後、縮小し、いずれ終了する方向性に変わりはありません。各年度ごとに、消費税の税負担額が増加していくことになるため、納税額の増加に合わせて、価格転嫁や経費削減を検討すべきこともあります。

そのためには、具体的な増加額を試算しておくことが大切です。

特に、免税事業者からの仕入れ比率が高い建設業や小売業などは影響が大きいことも考えられます。こうした顧問先を抱えている場合は、具体的な増加額を試算して示し、今後の資金計画についてアドバイスすることが求められます。

 まとめ

免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置については、令和8年(2026年)10月1日以降、控除割合が50%になる予定でしたが、令和8年税制改正により、70%に変更されました。

また、経過措置も延長されることになります。

しかし、いずれは終了する措置なので、この経過措置を適用できる期間中に仕入先の免税事業者との取引について交渉したり、資金計画の見直しを行う必要があります。

税理士や公認会計士としては、顧問先に、税負担が具体的にどれだけ増えるのかを示したうえで、今後の資金計画についてアドバイスしましょう。

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