令和8年度臨時改定での介護職員等処遇改善加算
<小濱道博先生の介護特化塾 vol.15>
本コラムでは、介護経営コンサルタントとして、日本トップクラスの小濱道博先生が、介護業界の「知って得する」トピックスを取り上げて解説します。会計事務所の皆様に、介護マーケットの魅力・重要性のほか、介護特化を進めるためのヒントや戦略などを毎回お届けします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.150(2026.4)に掲載されたものです。
小濱介護経営事務所 代表
C-SR(一社)介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
小濱 道博 先生
令和8年度に実施される介護報酬の期中改定は介護事業所の経営および財務に極めて重大な影響を与える。本来は令和9年度の予定であった改定を前倒しし、令和8年6月から実施される異例の措置となった。核心は他産業と遜色のない賃金水準の確保であり月額最大1.9万円、約6.3%の明確な賃上げ目標が掲げられている。
今回の制度改正において給与計算や賃金規程の改定実務に直結する最大の変更点が対象職種とサービスの歴史的な拡大である。これまで制限があった事務職員等への配分が可能となり柔軟な賃金配分が行えるようになった。さらに長年対象外であった居宅介護支援や訪問看護および訪問リハビリテーション等にも新たに処遇改善加算が創設された。
加算率は居宅介護支援が2.1%、訪問看護が1.8%、訪問リハビリテーションが1.5%と設定されている。新しい加算は広く介護従事者を対象とした月額1.2万円相当のベースアップ措置と生産性向上や協働化に取り組む事業所に対する月額0.7万円の上乗せ措置の二階建て構造である。
実務上極めて重要なのが、令和7年度と比較して新たに増加した加算額は過去の賃金改善実績に関わらず基本給や毎月の手当を引き上げるベースアップで還元が基本となる事である。また加算額の二分の一以上を月額賃金の引き上げに充てる月額賃金改善要件にも注意が必要である。上位区分取得の最大のハードルが生産性向上要件である。施設系サービスでは生産性向上推進体制加算の算定が求められ、在宅系サービスではケアプランデータ連携システムの加入と活用が事実上の必須条件となった。このポイントは「活用」が要件となった事である。
しかし令和8年6月の施行までに新たなシステムの選定や運用ルールの整備を完了させることは多くの事業所にとって物理的に困難である。そこで令和8年度に限り特例措置が用意されている。申請時点でシステム未導入や規程未整備であっても令和9年3月末までに対応を完了させる旨の誓約を計画書に記載するだけで施行初月から上位加算の算定が認められる。まずはこの誓約を活用して上位区分を見切り発車で確保し、その後の猶予期間を利用してICT投資や就業規則の改定を計画的に進める戦略的ロードマップが重要である。
最後にスケジュールの周知徹底である。令和8年6月からの新加算を算定するための処遇改善計画書の提出期限は原則として令和8年4月15日と非常にタイトである。新規対象サービスのみの場合は6月15日が期限となるが既存サービスを持つ多くの法人にとっては準備期間が短い。会計事務所の職員は早急に顧問先へアナウンスを行い新たな加算率に基づく増収見込額の算定やそれに伴う必要賃上げ額のシミュレーションそしてシステムの導入に伴う費用対効果の検証といった財務面からのサポートを直ちに開始しなければならない。
小濱 道博
こはま・みちひろ/介護経営コンサルタントとして、全国各地で介護事業全般の経営支援、コンプライアンス支援に 特化した活動を行う。2009年にC-MAS 介護事業経営研究会の立ち上げに関与。 税理士、社労士など200を超す専門士業事務所との全国ネットワーク網を構築し、 国内全域の介護事業経営者へのリアルタイムな情報提供と介護事業経営の支援活動を行う。 介護経営セミナーの講演実績は、全国で年間300件以上。 書籍の大部分はAmazonの介護書籍で第一位を獲得。
