高級車を社用車にすることは可能?2027年施行の新リース会計基準と合わせて解説

企業が社用車を導入する際、購入かリースかという選択をすると思います。
特に高級車を社用車としてリースする場合、経費処理の範囲や節税効果が大きな関心を集めています。経営者にとって「経費で落とせるのか」は判断基準のひとつですが、税務上の取り扱いは必ずしも単純ではありません。
この記事では、高級車を社用車としてリースする際のメリットや経費処理、さらに2027年に施行予定の新リース会計基準の影響、高級車のリースにかかる税務調査事例などについて整理していきます。
目次
社用車のリース契約とは
社用車の導入方法として、購入とリースの二択があります。購入は資産計上を伴い、減価償却によって費用化していきます。一方、リースは契約に基づき月々のリース料を支払う方式で、資金繰りに柔軟性を与える点が特徴です。
リース契約には「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」があり、実務上は前者が中心です。ファイナンス・リースは、実質的に購入と同じ性質を持つため、会計上は資産計上が求められる一方、税務上はリース料全額を損金算入できるのが原則です。
高級な社用車をリース契約するメリット

高級車を社用車としてリース契約する場合、以下のようなメリットがあります。
資金繰りの安定化
高級車は一台あたりの取得価額が高額になりがちですが、リースであれば一度に多額の資金を投じる必要がありません。月々の支払に分散されるため、資金繰りへの影響を抑えることができます。
維持管理コストの予測可能性
メンテナンス費用や車検費用を含むリース契約を選択すれば、突発的な修繕費の発生を回避でき、会計上も費用を平準化できます。
最新モデルへの更新が容易
契約満了後は、安価で再リースできますし、大きな費用の変動を伴わずに新車へ入れ替えることもできるため、常に企業イメージを高める最新の高級車を保持できます。特に役員車や営業用としてブランド価値を意識する企業にとっては重要なポイントです。
高級な社用車、リース料の経理処理
リース料は原則として損金算入が認められ、毎月の支払い分を費用計上します。ここで重要なのは、会計上の処理と税務上の処理が一致するとは限らない点です。
仕訳の基本(税務上の取扱い)
法人税法上は、ファイナンス・リースであっても「賃貸借取引」とみなして、毎月のリース料を経費処理できます。たとえば、月額リース料が30万円(消費税別)の契約の場合、次のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
リース料 300,000 | 現金預金 300,000 |
仮払消費税 30,000 | 現金預金 30,000 |
この仕訳により、リース料全額を「販売費及び一般管理費」として処理でき、損金算入が可能です。
会計基準上の処理(現行基準)
現行の企業会計基準(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」)では、ファイナンス・リース取引は「資産計上」が原則です。上記と同じケースでは、契約開始時点で以下の仕訳を行います。
借方 | 貸方 |
---|---|
リース資産 4,800,000 | リース債務 4,800,000 |
※契約期間を16か月、総リース料480万円(税抜)と仮定。
その後は減価償却費と利息相当額を計上していきます。
例:1か月目の処理
借方 | 貸方 |
---|---|
減価償却費 300,000 | リース債務 5,000 |
支払利息 5,000 | リース債務 5,000 |
リース債務 295,000 | 現金預金 295,000 |
仮払消費税 30,000 | 現金預金 30,000 |
会計上は資産計上・負債計上が求められる一方、税務上は単純にリース料を損金処理できるため、両者に一時差異が生じることになります。
全額経費処理ができない場合もある
高級車の場合、税務調査で「業務使用割合」が厳しく問われることがあります。役員や従業員が私用で利用している実態が認められれば、その分は経費算入を否認される可能性があります。
また、法人税法上の「交際費」とみなされるリスクもゼロではありません。例えば、役員が個人的な送迎やゴルフに使用していると判断されれば、経費処理が制限される可能性があります。
したがって、車両利用記録(運行記録簿)を作成し、業務使用を明確に証明できる体制を整えることが肝要です。
2027年施行の新リース会計基準とは
日本でも2027年からIFRSに準拠した新リース会計基準が施行される予定です。これにより、従来はBSに記載しなくてもよい「オフバランス処理」とされていた多くのリースが、資産と負債として計上されることになります。
高級な社用車は新基準ではどうなるのか
高級車のリースも、基本的には使用権資産とリース負債として計上されることになります。つまり、従来の「費用処理のみ」の認識から、資産・負債計上が加わる点でバランスシートへの影響が大きくなります。特に高額なリース契約ほど財務指標に与える影響は無視できません。
新リース会計基準による処理方法とは
新基準下では、リース開始時にリース資産と負債を計上し、その後は減価償却と利息費用を計上する形になります。したがって、従来の「リース料全額を費用」とする単純な処理はできなくなります。
ただし、税務では依然として「リース料=損金算入」の考え方が基本です。したがって、新基準下では 会計上は「減価償却費+利息費用」として費用化し、税務上は「リース料全額を損金」として処理することになります。このため、会計と税務に差異が生じるため、別表四による加算・減算調整が必要になります。
新リース会計基準による財務諸表上の影響
財務諸表の見えかたが変わってきます。リース料が費用から外れ、減価償却費が増加するため、償却前利益(EBITDA)は改善します。その代わり資産と負債がリース資産・負債の分だけ増加した影響で、自己資本比率が低下します。
試算の多くをリースで賄っていた場合、BSの印象が変わるので、金融機関やステークホルダーに説明しなくてはならない事項が増えることになります。資金繰りに有利だからと、機械装置や車両、高級車などほとんどの資産をリースしていた場合、その影響は大きいものになっていきます。
高級車のリース・購入と税務調査対応の事例

ご存じの通り、高級車といってもいろいろあります。国産の高級車なら普段よく見るご存じの車種を皆さんよくご使用になっておられます。
しかし、イタリア製のスーパーカーなどを社用車にして問題ないのでしょうか。ここでは似たような事例を紹介します。
フェラーリが社用車として認められた事例(国税不服審判所の判断)
1995年10月、所得者がフェラーリを社用車として購入し、減価償却費や維持費を法人の損金として処理しました。しかし、税務署は「社用車として不適切」として経費処理を否認しました。
税務署側の主張
フェラーリは明らかに個人の趣味による購入であること、法人の業務内容や社会常識に照らして事業遂行上必要とは認められないという判断がありました。
国税不服審判所の判断
走行距離や使用実態、代表者が他に高級車を所有している点などから、フェラーリが業務使用されていることが認められました。結果として、社用車としての経費処理が認められました。
一見、趣味の延長と思われそうな高級車であっても、業務使用の証明があれば、税務調査でも認められる可能性があるという、重要な判例です。
否認や追加課税リスクが高いケース:船舶併用・私的利用疑い
課税所の否認・認定賞与処理事例
ある法人が高級車およびクルーザーを所有し、減価償却費を損金算入していました。税務調査で否認され、クルーザーについては認定賞与として課税されるという厳しい措置が取られました。一方で、同じ条件でも高級車(外車)は損金として認められています。
高級車が事業に関連していると認められても、より豪華な資産(例:クルーザー)については否認されることがあり、「0か100か」で判断される可能性があるという厳格な実務対応が求められます。
これらの事例から得られる教訓とは
業務使用の証明を徹底する
走行記録、業務日報、車庫証明、用途が業務と合致する資料など、詳細な記録を残すことが、税務調査を乗り越えるための基本です。
高級車だから認められない、と決めつけない
フェラーリであっても、業務に使用されていることが明確であれば経費性が認められた判例があります。
過度な豪華設備はリスクが高い
高級車でも認められても、さらに豪華な設備(例:クルーザーなど)が否認されるように、個別に税務署の視点で判断されます。交際費や広告宣伝費ということでは不十分になる場合も考えられます。定款に定めるどの業務のどの作業に使用されるのか説明できるようにしておきましょう。
指摘に対する防衛策を講じる
顧問先や経営者には「業務使用を明示する証拠の整備」や、必要性の説明を支援し、「税務署に指摘された際に即反論できる」体制を整えるよう助言すべきです。
まとめ
高級車を社用車としてリースする場合、経費処理の柔軟性や企業イメージ向上といった大きなメリットがあります。ただし、私用利用が混在すると経費否認リスクがあるため、業務使用の証明が不可欠です。
2027年の新リース会計基準では資産・負債計上が求められるようになりますが、税務上は全額損金算入が可能なため、会計と税務の差異を正しく理解して処理することが重要です。
税務・会計に携わる者としては、経営者や顧客企業に対し、リース契約の有利不利を丁寧に説明し、経営戦略に沿った会計・税務処理を提案できるように準備しておきましょう。

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