100年続く組織を目指して、税務とコンサルティングの融合で未来を拓くー あがたグローバル経営グループが船井総研と挑む、新しい会計事務所のかたち

あがたグローバル経営グループ様

あがたグローバル経営グループ 統括パートナー・税理士 芦原 誠 先生 / シニアパートナー・税理士・米国公認会計士 多賀谷 博康 先生 × 株式会社ビズアップ総研 代表取締役・税理士 吉岡 高広 

税務の枠を超え、経営・人事・労務・M&A・企業再生までワンストップでサービスを提供する総合型専門家集団―あがたグローバル経営グループ。長野県を拠点に、地域密着と高付加価値サービスを両立させてきた同グループは、2025年1月にコンサルティング業界大手の船井総研とタッグを組み、新たな合弁会社「株式会社船井総研あがたFAS」を立ち上げた。昨今、税理士業界では税務業務にとどまらず、経営全体を支援する新たなモデルへの移行が進みつつある。そうした流れの中で、上場企業と手を組む、言わば“クロス・プロフェッショナル”体制を築いたあがたグローバルの取り組みは、その先駆けとして注目を集めている。今回は芦原先生と多賀谷先生に、同グループの強みや理念、船井総研との提携の経緯、そして未来への展望を伺った。 【BIZUP 2025年9月号掲載】

多領域に広がる専門性と
高付加価値サービス

吉岡高広(以下吉岡):あがたグローバルは、税務会計にとどまらず経営や人事労務といった他領域にも展開され、高付加価値なサービスを提供されています。現在の業務の中心はどのような分野でしょうか。

芦原誠先生(以下芦原):最初は「正しい会計、正しい経営」、「適正な税務申告」というシンプルな姿勢で日々の業務に取り組んでいましたが、時代の変化やお客様のニーズに応える中で、自然と業務の幅が広がっていきました。特に大きな転機は、25年ほど前に企業再生支援業務に出会ったことです。当時はまだ「企業再生」という言葉自体が一般的ではありませんでしたが、私と多賀谷は国の政策に基づく長野県中小企業再生支援協議会(当時)の初代メンバーに選ばれ、未知の領域に足を踏み入れました。最初はノウハウも少なく、模索しながらの取り組みでしたが、実践を重ねる中で業務範囲が飛躍的に拡大していくことを実感しました。そして、その取り組みが金融機関とのご縁につながり、金融機関から再生支援業務や税務顧問をご紹介いただけるようになったことは大きな自信になりましたし、当グループの発展にとって非常に大きな転機になったといえます。

吉岡:なるほど。金融機関とのご縁がさらなる事業領域の拡大につながったのですね。

芦原:はい、そこからは、お客様の業種のみならず、公益法人など法人形態が多様化しましたし、それまで我々が経験したことの無い業務を多く手掛けると共に、規模の大きなお客様とのお付き合いが増えたことで、私たちの業務領域を一気に広げる原動力となりました。さらに、専門性を持った人材が増えるにつれて、M&Aや事業承継、医業や介護分野、公会計といった新たな専門分野が次々と立ち上がりました。ある担当者は、医療業界から介護業界へと顧客範囲を拡大しつつ、人事制度の構築にまでサービスを広げました。

今年の1月には社会保険労務士法人を設立し、現在は社労士7名体制で、手続き業務のみならず、労務コンサルティングや人事制度構築支援、給与計算のアウトソーシング事業などを手がけています。長野県内で社労士7名体制というのは非常に珍しく、当グループならではの強みになりつつあります。

吉岡:担当分野は明確に分かれているのでしょうか。

芦原:社会保険労務士法人は完全に独立して動いていますが、それ以外の部門では兼務が残る場合もあります。ただ近年は、できるだけ「専門特化」を進めるようにしてきました。人数が少なかった時期は、税務会計を担当しながらM&A業務にも携わる、といったように複数の分野を掛け持つことが当たり前でしたが、組織が大きくなると共に、「その分野を深く掘り下げられる人材」を育てる必要があると感じているところです。特にM&Aや事業承継、国際税務の分野では、引き続き専門人材を積極的に採用し、専門性の高い業務を提供できるようにしていきたいと考えています。少しずつですが、こうした体制を整えていることで、より高品質なサービスが提供できるようになり、お客様からの信頼も高まっていると感じています。

吉岡:「高付加価値業務」について、どのように考えていますか。

芦原:もともとは「専門家として、お客様に満足していただける良い仕事をする」ことを第一に考えていたのですが、企業再生や事業承継など新しい分野に挑戦するうちに、お客様の多様なニーズに対して「窓口」はすべて当グループが担うことの重要性を実感するようになりました。たとえば、私たち自身では対応できない弁護士業務や司法書士業務が発生した場合には、当グループが付き合いのある専門家につなげることで、ワンストップでお客様をサポートできる体制を構築しています。つまり、当グループの人材だけではなく、当グループのネットワークを総動員してお客様のニーズを満たす体制を作ることも、「高付加価値業務」の一つの形であると考えています。

「高品質な業務」と
「信頼度の高い組織」の両輪で成長を目指す

吉岡:第二次中期計画(2024~2026年)では「専門家意識の高い組織」を掲げていらっしゃいますが、具体的にはどのような取り組みを進めているのでしょうか。

芦原:私が理事長に就任してから、「高品質な業務の提供」と「信頼度の高い組織」が当グループにおける永続・発展の両輪である、と発信してきました。この両輪がしっかり機能すれば、組織は「自然と」成長していくし、仕事は「自然と」増えていく、と私は信じています。第一次中期計画においては「高品質を誇れる組織となる」ことに取り組み、第二次中期計画では、「専門家意識の高い組織となる」ことに取り組んでいるところです。ここで特に重要なのが「専門性」です。専門性の高いメンバーが集まり、それぞれが自覚を持って自己研鑽を積むことで、結果としてお客様に対して高品質なサービスを提供できるようになります。そのため、一人ひとりが「自分は専門家だ」という意識を持ち、日々の仕事や学習に取り組む文化を根付かせたいと考えています。組織としても、研修に参加したいというメンバーがいれば、申請書を提出すれば研修に参加できますし、ビズアップ総研さんのWEBセミナーを視聴できるなど、各種の支援制度を整えています。このようなバックアップ体制は、今後も拡大させながら続けていくつもりです。

吉岡:職員の皆さんへの意識づけは、どのように行っているのでしょうか。

芦原:私にできることとして、できるだけ多くの場面で自分の考えを伝えるようにしています。朝礼のみならず、たとえば、毎月の定例会冒頭での挨拶の際には、今期の重点取り組み方針など経営計画書に記載されている内容に絡めた話をするよう心がけています。他にも、マネージャー合宿やVISION合宿、等級別のフィロソフィ勉強会を開催し、私の考えを伝えると共にメンバーの皆さんの意見を聞く機会を作っています。特に今年4月には経営戦略発表会を開催し、4等級以上の皆さんに、私が考えている当グループの中長期的な行動方針をお伝えしました。

吉岡:評価制度はどのように運用しているのですか。

多賀谷博康先生:(以下多賀谷)評価制度については、長年試行錯誤を重ねています。私が入社した当時から評価制度の仕組み自体はありましたが、時代や組織の変化に合わせて何度も改良を加えてきました。人が人を評価する以上、唯一絶対の基準はありませんし、どんな仕組みでも完璧とは言えません。それでも「どうすれば人が育つか」という観点で改善を続けています。私たちは評価制度を“人材育成のツール”と捉えており、メンバーが成長するための仕掛けとして活用しています。現在も、新たな人事制度を構築しているところです。

「無名有力」を掲げた創業の精神

吉岡:あがたグローバルは、実力家集団でありながら、あえて露出を控えてきた印象がありますね。

芦原:そうですね…。一つには、私の性格に拠るところがあると思います。雑誌の取材に頻繁に応じるとか、大規模なセミナーで名前を広く売るというような活動は、あまり得意ではないということがあります。私自身や組織の知名度を上げる活動よりも、先ずは、目の前のお客様に対して価値ある仕事を提供することと、組織作りに注力したいと考えてきたこともあります。

多賀谷:初代理事長である小林邦一(以下小林)が、よく「無名有力」という言葉を使っていました。これは小林が私淑する安岡正篤氏の言葉で、「有名であることよりも、実力があり、自分の可能性を追求できる状態が大切である」という意味です。私たちはこの精神を自然と受け継いできた気がしますね。

吉岡:非常に素敵な考え方ですね。とはいえ、現代の採用活動においては、ある程度の“発信”が欠かせないのではないでしょうか。そのあたりはいかがでしょうか。

芦原:確かに、そこは少し考え方を変えましたね。昨年から、地元の信濃毎日新聞に新卒者採用広告を出すようにしました。その広告には、私も若手社員たちと一緒に写っています。この取り組みは、もちろん就職希望者へのアピールが一番です。ただ、実際には、長野県内で発刊されている新聞なので、大学生が直接目にする機会はそう多くないのが実情です。しかし、信濃毎日新聞は長野県内では非常に有力な日刊紙ですので、相続税対策や申告書の作成などで税理士を探している方が、その紙面広告を見て、「この税理士法人はきちんとした組織だろう」という印象を持っていただけた、という副産物もありました。また、私自身が写真に写ったことで、「芦原さん、信毎に広告を出していたね」と知人から多くの声をかけられたこともあり、採用活動だけでなく、地域社会における存在感を高めるきっかけにもなったと感じているところです。あとは、昨年WEBサイトを刷新しましたし、大原簿記学校主催の就職説明会にも参加するなど、採用活動の幅を広げることに取り組んでいるところです。

吉岡:そのほか、芦原先生が理事長に就任されてから、大きく変えたことはありますか。

芦原:私が心掛けたのは、むしろ「理事長が変わったからといって、急に組織を変えるべきではない」ということです。以前、ある中国の古典を読んでいた時に、「代が変わったからといって、直ぐに物事を変えるのは良くない」という趣旨の言葉を読み、それがずっと頭に残っていました。前任者が積み上げてきた価値観や業務方針を急に否定したり変更することは、メンバーに不安を与えるだけですからね。ただし、時代や制度変化に合わせて変えていくべきことは、変えなければなりません。私は理事長交代までに若干の準備期間がありましたので、変えるべき点と継承すべき点を整理する時間があったことはラッキーでした。結果として、理事長就任1年目から、パートナーやマネージャーの皆さんと課題解決に向けた具体的な取り組みができたことで、大きくつまづくことなく経営のバトンタッチができたと思っています。

吉岡:変化、ということでは今後の拠点展開についてはどのようにお考えですか。東京に拠点を出して18年が経過しますよね。

芦原:実は、今も拠点拡大を検討中です。正に、船井総研あがたFAS設立後は、「日本全国、どこで新規案件が出てくるかわからない」状況にあります。たとえば、事業承継に伴う株式の引き継ぎは、株式を手放す側の経営者にとっては人生を賭けた大きな決断であるはずです。その決断に当たって、すべてをオンラインで完結するのは、高品質な業務とは言い難いと思っています。もちろん、一部はオンライン会議で進めることができるでしょう。しかし、実際に会って信頼関係を築き、機微に富んだ会話をすることがお客様に寄り添った業務であろうと考えると、多拠点化は必達の課題である考えているところです。

10年来の信頼関係から生まれた
船井総研との提携

吉岡:では、いよいよ船井総研さんとの提携について伺います。そもそも合弁会社設立に至った背景や、決断のきっかけから教えていただけますか。

多賀谷:きっかけは、10年ほど前にさかのぼります。当時、船井総研さんがM&A事業に参入しようとしていて、「M&Aの基本から教えてほしい」という依頼があったのです。偶然にも、うちの小林のご縁で船井総研さんの方とつながりがあり、「あがたグローバルなら対応できるだろう」と声をかけていただきました。最初はM&Aの勉強会を開くところから始まり、その後はスキーム立案や実務のサポートなど、具体的な案件で協力するようになりました。彼らとしては、社内に専門家や有資格者を抱えたいという思いもあったようですが、「あがたと組んだほうが早い」という判断をされ、昨年夏に正式に合弁会社設立の提案をいただきました。

吉岡:提携は大きな決断だったと思いますが、迷いや懸念はなかったのですか。

多賀谷:もちろん慎重に検討しました。「私たちのポリシーを曲げてまで組むことはしない」、「条件が合わなければ見送る」ということは、最初から芦原と確認していました。合弁会社という大きな取り組みは、やるからには必ず成功させる覚悟が必要です。軽い気持ちで始めるわけにはいきませんから。

芦原:私も正直、不安はありました。船井総研さんは上場企業で、組織規模も圧倒的に大きい。一方、こちらは65名ほどの税理士法人です。相手が持ち前の営業力で次々と案件を持ち込んだ場合、私たちが対応しきれるだろうか、と。せっかく作った合弁会社が、「仕事は早いが、品質は低い」と評価されてしまうのは絶対に避けたかった。ただ、10年間の付き合いでお互いの仕事に対する価値観が似ていることはわかっていましたし、実際に話を進める中で、理念や業務の進め方において大きなギャップはありませんでした。いろいろ検討を重ねる中で、「これは一緒にやれる」と確信できたのが決め手です。

吉岡:上場企業との連携で、コンプライアンス面の変化はありましたか。

多賀谷:M&Aの現場はもともと守秘義務が厳しく、情報管理については私たちも徹底してきました。船井総研さんも社内で情報管理の体制が整っており、M&A部門は社内でも区切られたオフィスで機密保持を徹底しています。

芦原:うちもISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得していますし、専門家集団として情報管理には高い意識があります。設立前には船井総研さんの上場企業基準の規程をすべて確認し、意見交換も行いました。船井総研あがたFASは、その基準にしっかり準拠して動いています。

吉岡:立ち位置としては、東京事務所にいた方がそちらに移られているのですか。

多賀谷:フィナンシャルアドバイザリー業務を担当する公認会計士が出向して、FA業務を行っています。そして、税務上の相談が生じた場合には、税理士法人のメンバーが対応しています。

船井総研との提携で描く、
次のステージへの挑戦

吉岡:合弁会社で特に注力しているサービスは何ですか。

多賀谷:メインはM&Aと事業承継です。船井総研さんは営業力が非常に高く、案件獲得に強みがあります。私たちはその案件の税務面を中心に、専門性の高いサポートを行っています。彼らは後継者育成や会社の体質改善といったコンサルティングが得意なので、両者の強みを融合させて「ワンストップ」で支援しています。

吉岡:単なる提携以上の近さを感じますね。

多賀谷:ええ。提携によりメンバー同士の交流が生まれ、何かあればすぐに相談できます。このスピード感が双方にとって大きなメリットとなっています。以前のように「アポを取ってから話し合う」といったタイムロスがなくなりました。

吉岡:今回の提携は、あがたグローバル経営グループ全体にとっても非常に大きなインパクトがあったのではないでしょうか。

芦原:確かにそうです。先ほども申し上げましたが、これまで私たちは「無名有力」という言葉を掲げ、あえて表に出るよりも、実力と信頼で勝負することを大切にしてきました。しかし時代の変化とともに、「一定の規模と存在感を持つこと」の重要性を強く感じるようになりました。その理由は、大きく三つあります。まず一つは、お客様のニーズです。企業の経営環境や法律が複雑化する中で、「もう個人事務所では対応できないので、専門家を揃えている御社に頼みたい」とご相談いただくケースが非常に増えています。次に金融機関との関係です。金融機関の担当者が取引先様に税理士を紹介する際に、一定の規模を有していることは大きな安心材料になっているようです。

そして三つ目が人材採用。優秀な人材は、「この法人はどんな未来を描いているのか」、「自分はどのようなステージで活躍できるのか」を重視します。組織の規模や知名度は、働き手にとっての大きな魅力の一つなんです。そのため私は社内で、「全国区での知名度を有する存在になろう」と投げかけています。我々の業界では、150名規模の組織になると、多くの人が知る存在になれると感じています。今回の船井総研さんとの提携をきっかけに、65名規模の私たちが、まずは100名へと一歩ずつ成長していく未来が見えてきました。この挑戦は、当グループが「次のステージ」へ進むための大きな転機になると感じています。

「宮本先生の教えが、あがたグローバルを育てた」
専門家集団の原点

吉岡:あがたグローバルさんは、宮本嘉興先生と長年にわたり深いお付き合いがあったそうですね。

芦原:そうですね。1990年から、公認会計士・宮本嘉興先生のコンサルティングを、前身の小林会計事務所で受けるようになりました。当時、宮本先生は売れっ子のコンサルタントでしたが、個人で独立されて「東京経営研究センター」という会社を設立されたばかりの頃でした。そこで、うちの小林が「ぜひ、うちの事務所にもコンサルをしてほしい」とお願いに行ったのが始まりです。小林会計事務所は、元々、小林の父・小林茂美先生が設立した事務所です。実はその昔、宮本先生と小林茂美先生が机を並べたご縁もあったようで、通常なら10名にも満たない小さな事務所は見向きもされなかったかもしれませんが、その偶然のつながりが後押しになりました。結果、「それならお引き受けしましょう」と快諾していただき、月に一度、長野まで来てコンサルティングをしてくださったのが始まりです。私は1992年に小林会計事務所へ入所しましたが、その頃から経営計画書も作り始めていました。もちろん当初は今よりずっと薄く、簡易的なものでしたが、「計画を意識する」という視点を持てたことは非常に大きかったと思います。私はMAS業務をやりたくて入所したのですが、宮本先生はその分野にも造詣が深く、さまざまなことを教えていただきました。私自身も東京経営研究センターに何度も通い、たくさんのノウハウや業務に対する姿勢を学ばせていただきました。またMAS業務だけでなく、現在のQMS(品質マネジメントシステム)も、東京経営研究センターのコンサルのもとで取得しました。

吉岡:私たち吉岡経営センターも、宮本先生のコンサルを札幌で受けていました。業界内でも非常に知名度の高い先生ですよね。

芦原:はい、全国的にも大変有名な方でしたね。

吉岡:宮本先生の教えが、あがたグローバルの専門性や基本思想の礎になっているのですね。

多賀谷:そう思います。会計MASやQMSだけでなく、宮本先生には毎月、経営会議にも出席していただき、事務所経営全般を見ていただいていました。

芦原:宮本先生も非常に忙しかったと思いますが、月に一度長野までお越しいただき、幹部メンバーは前回出された課題を1か月かけて取り組み、その成果を報告し、また新たな課題をいただく―という流れを繰り返していました。ひと月ごとの進歩は小さなものだったと思いますが、毎月の積み重ねが組織づくりや業務の高品質化につながっていったのだと思います。宮本先生のコンサルというのは、徹底的に現場分析をして課題を発見させる実践型の学びと、物事を関連付けながら結論を見つけ出そうとするプロセスを学べるところに特徴がありました。今振り返っても、本当にかけがえのない機会をいただと思いますし、さまざまな刺激を受けられた時間だったと思います。

吉岡:組織の成長には具体的なターニングポイントもあったのでしょうか。

芦原:はい。私の中では、1996年に事務所で初めて「中期計画」を作成した際、「開拓者精神」という取り組み姿勢と、「一人当たり売上高」の具体的な数値目標が掲げられたことが大きかったです。その当時の所長だった小林が「一人当たりの売上高を倍にしよう」と掲げたのを今でも鮮明に覚えています。あまりに現実離れした目標だったので、最初は「そんなの無理だろう」と思いました。しかし、小林はこう言いました。「2割や3割増やすなら、ちょっと頑張ればなんとかなるかもしれない。でも倍を目指すには、仕事の仕方や提供する商品、お客様をガラッと変える必要がある。だからこそ挑戦しがいがあるじゃないか」と。その時私は、「おもしろい!」と考え直し、それから10年もの時間を要しましたが、その目標を達成することができました。私は32歳で税理士試験に合格し、33歳の3月に税理士登録をしたのですが、ちょうどその年の7月に、先ほど申し上げました長野県中小企業再生支援協議会(当時)が発足し、多賀谷と共に企業再生支援業務に関わったことで、業務範囲の拡大と共に、金融機関から業務依頼をいただける関係性を築くことができました。こうして税務会計の枠を超えた仕事が増え、結果的に、2006年に「一人当たり売上高倍増」という目標を達成できたのです。達成後に開催した焼肉大会は今でも良き思い出として残っていますし、あきらめずに挑戦し続ければいずれは達成できる「小さな成功体験」を得られたことは私の宝物となっています。

吉岡:宮本先生との長期間のお付き合いが、あがたグローバルに与えた影響は大きかったのですね。

芦原:はい、本当に大きかったです。どの事務所も、業務品質の向上と業務の標準化は大きな課題だと思います。また、組織の成長と共に組織体制をどのように整えていくかも、重要な経営判断だと思います。宮本先生は「経営とは何か」、「税理士が提供すべきサービスとはどのようなものか」を、時にはドラッカーの教えを紐解きながら我々に伝えてくださいました。また、「コンサルティングはテクニックを教えるものではない。物事の本質にせまることだ。」という教えも忘れられません。先生の指導のおかげで、我々は地方の税務会計中心の一個人事務所から税理士法人へと拡大し、今また船井総研あがたFASの設立を機に、新たな挑戦に取り組める組織へと成長できたのだと思います。改めて、私どもを導いてくださった宮本先生には、この上ない感謝を申し上げたいと思います。

写真左より、
宮本嘉興先生ご夫妻と小林相談役

■みやもと・よしおき/昭和7年5月11日生まれ。昭和28年4月関東信越国税局勤務。昭和35年3月中央大学商学部卒業。昭和35年4月日本創造経営協会勤務。昭和40年4月公認会計士開業登録。平成2年4月(株)東京経営研究センター設立、代表取締役。平成15年1月公認会計士宮本嘉興事務所開設。元八戸大学商学部教授。元日本公認会計士協会経営研究調査会副委員長。元国際コンサルタント・グループ常任理事研修部長。

あがたグローバル経営グループが
見据える未来

吉岡:未来の会計業界についての展望をお聞かせください。

芦原:一つは、士業間の垣根がますます低くなっていくだろうということです。税理士法人、社会保険労務士法人、司法書士法人…そうした縦割りの仕組みが緩やかになり、士業持株会社のような形態により「グループ化」が進んでいくのではないでしょうか。かつては「長野県の事務所」といった地域の色がありましたが、今後は規模の大きな税理士法人は全国展開と共に、国際税務の対応が求められて、正に国をまたいだグローバルな展開も重要度を増していくでしょう。他方、極端な話をすれば、地元の金融機関が士業法人を持ち、私たちの競合相手になるような未来さえ考えられます。激変が予想される外部環境の中で、私たちは専門性と組織力を磨き続け、「全国区での知名度を有する存在」にならなければ、選ばれ続けることは難しいと思っています。

吉岡:そのような状況の中で、あがたグローバルが目指す未来についてお聞かせください。

芦原:私たちは今、「お客様満足度日本一」の業務提供と、「全国区での知名度を有する存在になる」ということを掲げてさまざまな取り組みをしています。これらは、単に規模の拡大を目的とするのではなく、私たちの専門性をより多くのお客様に届けるために必要な姿勢だと考えています。そして、その先に見据えているのが「100年続く組織」です。そのためには、組織の仕組みや価値観をしっかりと作り上げ、私の次の世代、さらにその次の世代へと引き継いでいくことが欠かせません。

吉岡:100年続く組織づくりのために、どのような点を重視されていますか。

芦原:初代理事長の小林、二代目理事長の山崎健兒、そして私へと代替わりが進む中で、「理事長には任期制度がある」ということと、理事長といえども「組織を私物化することはできない」ということを、メンバーの皆さんに発信しています。これはトップが長く居座ることで組織が停滞することを防ぎ、世代交代による新陳代謝を促すための仕組みです。同時に、組織の基盤作りや価値観の構築にも注力してきました。社風や組織のルールをしっかりと形にしておけば、誰が理事長になっても揺るがない組織になります。「自分の代さえうまくいけばいい」という発想では、100年続く組織は実現しません。社風の醸成や価値観の共有化のために、毎年、VISION合宿を開催して方向性を共有する機会をつくっています。また昨年は、「2030VISION」なるものを策定しました。組織の永続と発展を両立させるために少し長期的な目線で将来を考えて欲しいと思い、私以外のメンバー全員に参加してもらって、「2030年にありたい姿」を明文化してもらいました。

吉岡:これからもあがたグローバルが大切にしたいコンセプトは何でしょうか。

多賀谷:一貫して持ち続けているのは、「お客様の経営企画室でありたい」という想いです。これは私が入社した頃から30年以上、ずっと変わらず大切にしてきたキーワードです。税理士として、単に資料にコメントをするだけでなく、経営者の隣に立ち、伴走しながら「一緒に汗をかく」存在でありたい。つい先日も、とある上場企業の経営者から「国税OBの先生はアドバイスはしてくれるが、一緒に走ってくれない。あがたグローバルなら伴走してくれそうだ」と言っていただき、とても嬉しく思いました。AIやテクノロジーが進化しても、この価値は決して代替されることはないと思います。

芦原:私たちは「目標達成会議」という名称を商標登録して、いわゆるMAS業務を提供しています。これはお客様のPDCAを確実に回すために、目標設定から実行管理まで伴走する商品です。お客様の成長こそが当グループの成長の源ですので、目標達成会議の提供は今後さらに広げていきたいですね。

吉岡:理念や思いを大切にしながら、時代に合わせて進化していく姿勢が伝わってきます。

芦原:ありがとうございます。組織が成長していく中で、変わるべきことと変えてはならないことがあります。価値観や理念はブレることなく守り抜きながら、「開拓者精神」を大切に新たな挑戦を恐れず進化し続けたい。それが、100年続く組織を作るために必要なことだと思っています。

吉岡:本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

プロフィール
あしはら・まこと
あしはら・まこと
あがたグローバル税理士法人代表社員・理事長、あがたグローバルコンサルティング株式会社代表取締役社長、株式会社船井総研あがたFAS取締役会長。長野県出身。1992年4月小林邦一税理士事務所入所。2003年7月~2008年9月長野県中小企業再生支援協議会窓口専門家(当時)。2012年あがたグローバル税理士法人の設立に参画し代表社員専務理事に就任。
たがや・ひろやす
たがや・ひろやす
あがたグローバル税理士法人代表社員・東京事務所長、あがたグローバルコンサルティング株式会社代表取締役常務、株式会社船井総研あがたFAS取締役執行役員。長野県出身。1995年1月小林邦一税理士事務所入所。2003年7月~2005年3月長野県中小企業再生支援協議会窓口専門家(当時)。

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