動き商標とは<経営戦略のための知財Vol.26>

特許業務法人 浅村特許事務所
会長・弁理士 金井 建

2022/6/10

M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.103(2022.5)に掲載されたものです。

知財におけるマーケティング戦略⑪


動き商標
新しいタイプの商標のうち、今回は「動き商標」についてご紹介します。

動き商標とは、文字や図形等が時間の経過に伴って変化する(「移動」を含む)商標のことです。新しいタイプの商標の中でも登録数が多く、現在まで159件が登録となっています。

動き商標は、実際にはスムーズに動いている絵、写真、文字等が、時間の経過と共に変化する様子を、各図に番号を振りコマ送りする方法で特定します。主に、コマーシャルの一部を切り取り、動き商標として登録する例が多くなっています。

下の図①は、自社名とキャッチフレーズ、オリジナルキャラクターをセットにした動き商標です。下の図②のように図形と文字の結合商標も取得しているため、2つの商標で企業名とキャラクターが強力に保護されています。下の図③のように、立体的形状であって動画を切り取った形でも、動き商標として登録することができます。こちらもCMでおなじみですね。

動き商標は、変化の対象である文字や図形等を必ず商標の構成要素としなければなりません。そのため単なる動きそのもの、すなわち動き自体が会社又は商品やサービスを識別する機能を有しない場合は、商標登録できないことに注意が必要です。

また、動き商標に音を組み合わせた形の商標も考えられますが、今後の検討課題とされており、今のところ認められていません。例えば「菊正宗~」という声を、③の動き商標と合わせた形で商標登録することはできません。

動き商標から特定の会社又は商品やサービスが識別され、広告・宣伝機能が発揮されます。かかる機能が発揮されることによって、動き商標に関する会社や商品等のブランド価値が向上するとともに、他社による類似の動き商標の出現が抑制されます。

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