所有者不明土地利用の円滑化等に関する特別措置法改正<所有者不明土地の解消に向けた実務ノウハウ Vol.27>

全国公共嘱託登記司法書士協会協議会
名誉会長・司法書士 山田 猛司

2022/7/6

所有者不明土地をめぐる施策が相次いで法制化されるのに伴い、登記をはじめとする実務の需要が爆発的に増加することが予想されます。そこで、この問題に精通している山田猛司先生が実務的な知識やノウハウについて解説します。 
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.104(2022.6)に掲載されたものです。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の改正


平成30年6月6日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立し、同法は令和元年6月1日に全面施行されたが、同法の附則において、「政府は、この法律の施行の年の経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と規定を受けて、令和4年4月27日同法の一部を改正する法律が成立し、5月9日に公布された。同法は公布後6か月以内の施行を予定しているが、その概要は以下の通りである。

(1)利用の円滑化の促進関連
所有者不明土地を公益性の高い施設として活用する「地域福利増進事業」の対象事業に、備蓄倉庫等の災害対策に関する施設等の整備を追加し、民間事業者が実施する地域福利増進事業のための土地の使用権の上限期間の延長や、事業計画書等の縦覧期間の短縮等を措置し、老朽化の進んだ空き家等がある所有者不明土地であっても、地域福利増進事業や土地収用法の特例手続の対象として適用する

(2)災害等の発生防止に向けた管理の適正化関連
法目的に、「利用の円滑化」に加え、「管理の適正化」を位置付け、引き続き管理が実施されないと見込まれる所有者不明土地等について、周辺の地域における災害等の発生を防止するため、市町村長による代執行等の制度を創設するとともに、民法上利害関係人に限定されている管理不全土地管理命令の請求権を市町村長に付与し、代執行等の準備のため、所有者探索に必要な公的情報の利用等を可能とする措置を導入する

(3)所有者不明土地対策の推進体制の強化関連
市町村は、所有者不明土地対策計画の作成や所有者不明土地対策協議会の設置をすることができることとし、所有者不明土地利用円滑化等推進法人として所有者不明土地や低未利用土地等の利活用に取り組む法人を指定することができ、計画の作成や所有者探索を行う上で、国土交通省職員の派遣の要請が可能とする

なお、登記関連では令和4年4月1日から所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令の一部改正により、所有者不明土地の調査対象者について、死亡後30年という期間を死亡後10年と短縮し、調査対象が増えている。

また、税法関係においては、租税特別措置法第84条の2の3による登録免許税の免税措置に対して期間を令和7年3月末までと3年間延長し、2項における対象土地については市街化区域内の土地を加え、対象土地の価額についても10万円から100万円に引き上げを行い拡充した。

これにより、さらなる不明相続人の解消作業が推進されることを期待する。

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