介護支援パッケージ:賃上げとDXによる経営強化策<小濱道博先生の介護特化塾 vol. 12>
本コラムでは、介護経営コンサルタントとして、日本トップクラスの小濱道博先生が、介護業界の「知って得する」トピックスを取り上げて解説します。会計事務所の皆様に、介護マーケットの魅力・重要性のほか、介護特化を進めるためのヒントや戦略などを毎回お届けします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.147(2026.1)に掲載されたものです。
小濱介護経営事務所 代表
C-SR(一社)介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
小濱 道博 先生
今回の介護事業支援パッケージは、令和8年度介護報酬改定を待たず、人材流出の防止と物価高騰への緊急的対応を目的として実施される。会計事務所として顧問先を指導するにあたり、この支援策の全体像、特に三つの柱—処遇改善、サービス継続、そして将来に向けた体制確保—を正確に伝えることが極めて重要となる。
まず、介護従事者の処遇改善と職場環境改善支援(総額1,920億円)では、持続的な賃上げを実現する観点から、三層の支援が用意されている。第一に、介護従事者に対して幅広く月1.0万円の賃上げ支援を実施する。これは、処遇改善加算の対象外サービス(訪問看護、ケアマネジャー等)も準ずる要件で対象となる。第二に、処遇改善加算を取得し職場環境改善に取り組む事業者に対して、人件費に充当することで介護職員に月0.4万円相当の支援が行われる。第三に、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員には、さらに月0.5万円が上乗せされる。この0.5万円の上乗せを受けるためには、訪問・通所系サービスではケアプランデータ連携システムの加入(または見込み)が、施設・居住系サービス等では生産性向上加算IまたはIIの取得(または見込み)が要件となる。これらの賃上げ支援は、令和7年12月から令和8年5月までの半年間が対象である。令和8年6月からは改定される処遇改善加算に引き継がれる。
次に、介護事業所・施設のサービス継続支援(総額510億円)は、物価高騰と災害リスクへの対応を目的とする。施設系サービスに対しては、「介護施設等に対するサービス継続支援事業」(210億円)として、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などに対し、入所者の食事提供を円滑に継続するため、定員1人あたり1.8万円を上限とする食材料費の購入費が補助される。一方、居宅系サービスを含む全サービスを対象とする「介護事業所等に対するサービス継続支援事業」(278億円)では、訪問・送迎に伴う移動経費に加え、大規模災害発生時に備えるための備蓄物資、ポータブル発電機、熱中症対策機器などの購入費用が補助される。この補助上限額は、訪問介護で最大50万円、通所介護で最大40万円など、サービス類型や規模に応じて区分されている。さらに、老朽化施設の改修や大規模修繕(耐震強化を含む)に対する交付金(22億円)も措置される。
介護テクノロジー導入・経営改善等支援(総額220億円)では、介護記録ソフトや見守り機器、インカムといった業務時間削減効果が確認されているICT機器の導入費用に対し、国・都道府県が4/5を補助し、事業者は1/5の負担で導入でき、生産性向上を通じた職場環境改善を加速させる。なお、詳細は補正予算の成立後に通知が発出される。
小濱 道博
こはま・みちひろ/介護経営コンサルタントとして、全国各地で介護事業全般の経営支援、コンプライアンス支援に 特化した活動を行う。2009年にC-MAS 介護事業経営研究会の立ち上げに関与。 税理士、社労士など200を超す専門士業事務所との全国ネットワーク網を構築し、 国内全域の介護事業経営者へのリアルタイムな情報提供と介護事業経営の支援活動を行う。 介護経営セミナーの講演実績は、全国で年間300件以上。 書籍の大部分はAmazonの介護書籍で第一位を獲得。
