介護制度改革の焦点:2040年を見据えた次期制度改正の審議ポイント <小濱道博先生の介護特化塾 vol. 11>

本コラムでは、介護経営コンサルタントとして、日本トップクラスの小濱道博先生が、介護業界の「知って得する」トピックスを取り上げて解説します。会計事務所の皆様に、介護マーケットの魅力・重要性のほか、介護特化を進めるためのヒントや戦略などを毎回お届けします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.146(2025.12)に掲載されたものです。


小濱介護経営事務所 代表
C-SR(一社)介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
小濱 道博 先生

2027年度介護保険制度改正に向けての審議が、12月末の取りまとめに向けて、終盤となっている。次期制度改正の審議の大きな柱の一つは、全国を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の主に三つの類型に分類し、それぞれの地域の実情に応じたサービス提供体制を構築することである。特にサービス需要が減少する「中山間・人口減少地域」では、サービス提供の維持を前提として、市町村が介護保険財源を活用してサービスを給付に代わる新たな事業(新類型)として実施できる仕組みの導入が検討されている。

給付と負担の見直しでは、利用者負担(2割負担)の範囲の見直しが喫緊の課題とされている。検討にあたっては、当分の間、一定の負担上限額を設けた上で、2割負担の対象者を拡大する案も軸として議論されている。また、介護保険における負担に金融所得や金融資産の保有状況を反映させるための検討も課題である。

ケアマネジメントの在り方についても結論が間近だ。現在10割給付であるケアマネジメントへの利用者負担導入の是非については、介護費用増大の中で財源確保や利用者自身の関心を高める観点から導入を求める意見も存在している。また、要介護1・2の軽度者への生活援助サービスを地域支援事業(総合事業)へ移行させるか否かの議論は、当面は地方への移行を見送る方向で調整に入っている。

介護事業者の経営戦略においては、生産性向上の推進が不可欠な潮流である。国は、2040年までに介護分野全体で20%以上の業務効率化を目標とし、テクノロジー活用(DX)やタスクシフト/シェアを推進している。小規模な介護事業者の経営安定化と生産性向上を支援するため、都道府県単位の介護生産性向上総合相談センターによる伴走支援が強化される。

さらに、有料老人ホームの運営の透明性確保と質の確保も焦点である。中重度の要介護者や医療ケアを要する入居者を対象とする有料老人ホームに対しては、入居者の安全確保のため、登録制などの事前規制の導入が検討されている。また、「住宅型」有料老人ホーム等における過剰サービス提供(「囲い込み」)の問題への対策として、運営事業者に住まい事業の会計と介護サービス等事業の会計を分離独立して公表させるなど、経営の透明性を高める措置が提言されている。

会計事務所は、これらの制度改革の動き、特に地域類型の導入や給付と負担の見直し、そしてDX推進の必要性を踏まえ、クライアントである介護事業所に対して、迅速な経営戦略の転換と、行政の支援体制の積極的な活用を促す重要なアドバイザーの役割を担うことが求められる。

小濱 道博

こはま・みちひろ/介護経営コンサルタントとして、全国各地で介護事業全般の経営支援、コンプライアンス支援に 特化した活動を行う。2009年にC-MAS 介護事業経営研究会の立ち上げに関与。 税理士、社労士など200を超す専門士業事務所との全国ネットワーク網を構築し、 国内全域の介護事業経営者へのリアルタイムな情報提供と介護事業経営の支援活動を行う。 介護経営セミナーの講演実績は、全国で年間300件以上。 書籍の大部分はAmazonの介護書籍で第一位を獲得。

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