グループ通算制度<令和時代におさえておきたい会計 金融キーワード 第3回>

佐藤経営税務会計事務所 代表税理士
佐藤 充宏

2021/11/8

第3回:グループ通算制度


税制改正により登場した用語ですが、上場企業の決算や資金繰り等にも関係があり、今後注目される内容のため、今回は、このグループ通算制度についてご案内します。
 
【グループ通算制度とは】
完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度です。
 
【グループ通算制度創設の経緯】
次の経緯から令和2年度税制改正において創設されました。
 
従来の連結納税制度を見直す。
連結納税制度は、企業グループ全体を一つの納税主体ととらえて、そのグループ内の各法人の損益通算をする方法や、その他連結納税特有の処理に基づいて申告納税をする制度です。

制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行う事となりました。

グループ通算制度へ移行する。
損益通算の基本的な仕組みは維持しつつ、企業グループ内の各法人が一定の方法により、個別に各法人の法人税額等の計算及び申告を行います。
 
【適用開始時期】
令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用します。
 
【財務・経理部門で必要な対応例】
1、グループ通算制度の概要を理解する。
 
2、業務に関する内容を把握する。
(1)税金計算及び税効果会計による会計処理等
グループ通算制度における税額計算を行い、制度の内容に応じた税効果会計に基づく処理を行います。
そして、実効税率の算定や繰延税金資産の回収可能性の判断等をしなければなりません。
 
(2)開示情報
有価証券報告書等の記載にあたって、注記等の開示情報の対象となる内容を理解し、具体的にその情報をどのように集約して開示するのかを理解する必要があります。
※上述については、企業会計基準委員会の実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」等に詳細が掲載されていますが、企業会計基準における法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準や税効果会計に係る会計基準等の定めに従う事となります。
 
3、グループ通算制度の対象となる関係会社との連携
特に、親法人であれば、対象のグループ各社へ次のような周知及びフォローをしなければなりません。
・グループ通算制度の説明
・関係会社の税金計算及び税効果会計による計算方法
・連結報告用ツール(パッケージ等)の処理方法等の説明
・連結決算内容及びスケジュール
・グループ通算制度に基づく確定申告税額計算処理のグループ内連携処理及び申告・納付に関するスケジュール
・その他
 
以上
 
なお、上述のご案内は、一般的な情報提供を目的としており、法務や財務・会計、税務その他の専門的助言を提供するものではなく、実際の個別の判断等については一切責任を負いませんので、実際の対応等にあたっては、取引金融機関の担当者や会計監査人、その他関係者・専門家とご確認・ご相談の上、ご対応をお願い致します。
 
<出典元>
グループ通算制度の概要

企業会計基準委員会
実務対応報告第42号
「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」

法人税法等その他関連法令

 ※本記事は2021年9月時点の情報に基づいて作成しております。

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