住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税<税理士事務所 四方山話 vol.15>

本コラムでは、日常の業務を通じて遭遇するお客様の反応や現場での出来事など身近なトピックに焦点を当てます。セミナーや研修で講師を務める経験豊富な江﨑光行先生が、これらの話題をわかりやすく、そして実用的なアドバイスを交えて解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.143(2025.9)に掲載されたものです。
江﨑光行税理士事務所 所長・税理士
江﨑 光行 先生
「父から住宅購入の資金援助を受けようと思っています。贈与税が非課税になると聞いたのですが内容を教えてください。」
先日、顧問先のお客様からこのようなご相談を受けました。そこで「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例」をご案内しました。
この特例は、父母や祖父母などの直系尊属から、自己が居住するための住宅の新築・取得・増改築等の資金として金銭の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば贈与税が非課税となる制度です。非課税限度額としては、令和6年1月1日から令和8年12月31日までは、贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までとされています。
なお、省エネ等住宅とは、末尾の表に記載した省エネ等基準のいずれかに適合する住宅用の家屋で、一定の証明書により証明されたものをいいます。
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例の対象となるには、受贈者は以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 贈与者が受贈者の父母や祖父母などの直系尊属であること。
- 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。
- 贈与を受けた年の合計所得金額が、原則2,000万円以下であること。(床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅の場合は、1,000万円以下。)
- 過去にこの特例の適用を受けていないこと。
- 親族などの特別な関係がある人から住宅を取得し、又は請負契約を締結していないこと。
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与された資金の全額を住宅の取得などに充てること。
- 原則として、贈与を受けた時点で日本国内に住所を有していること。
- 贈与を受けた年の翌年3月15日まで、又はその後の遅滞なく、取得した住宅に居住することが確実であること。
また、取得等の対象となる住宅に関する要件もあります。新築や取得の場合、登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下で、かつその床面積の2分の1以上が受贈者の居住用に供される必要があります。さらに、増改築の場合も、工事費用が100万円以上であることや、自己が所有し居住している家屋に対する工事であることなどです。
非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に必要書類を添付して納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
この規定は、基礎控除がある暦年課税制度、又は相続時精算課税制度との併用が可能なので、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税額に加えて、暦年贈与であれば110万円の基礎控除が、相続時精算課税であれば110万円の基礎控除と2,500万円の特別控除が非課税となります。(※)
※特別控除は、相続時に相続財産に持ち戻し計算されます。
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の規定は、適用に多くの要件があり検討が必要ですが、適合すればお客様にとって非常に有用な規定であると考えます。
家屋の区分 | 省エネ等基準 | ||
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省エネルギー性能 | 耐震性能 | バリアフリー性能 | |
① 新築した住宅用の家屋 | 断熱等性能等級5以上(注1)かつ 一次エネルギー消費量等級6以上(注2) |
耐震等級 (構造躯体の倒壊等防止)2以上 または免震建築物 |
高齢者等配慮対策等級 (専用部分)3以上 |
② 建築後使用されたことのない住宅用の家屋 | |||
③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋 | 断熱等性能等級4以上または 一次エネルギー消費量等級4以上 |
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④ 増改築等をした住宅用の家屋 |
(注1)一定のものを除く。(注2)一定の要件を満たすものについても、省エネ等住宅に該当するものとみなされるものあり。

江﨑 光行
えざき・みつゆき/江﨑光行税理士事務所 所長・税理士
大原簿記学校税理士講座講師、税理士法人古田土会計、川鍋直則税理士事務所を経て独立。
現在は、月次決算書、経営計画書の作成指導経験を踏まえ、
ビズアップ総研アシスタント養成講座などでセミナー講師を務める。