コスト競争の加速による危機<中小・中堅企業のためのSDGs入門 Vol.6>

金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長 情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授
平本 督太郎

2021/7/17

vol.6 日本の中小企業が直面する危機とSDGsとの関係②
   (コスト競争の加速による危機)

今回は、日本の中小企業が直面する5つの危機のうち、「②コスト競争の加速による危機」について、概要と先行企業事例について簡潔にお伝えしましょう。

日本の中小企業の技術レベルは世界でも群を抜いて高く、経営者の経営に関する思想も大変優れていると私は思っています。しかしながら、新製品・サービス開発を 行っていると自負している中小企業でも、既存の製品・サービスの自社開発、もしくは品質・性能のみの改善を、新製品・サービス開発と呼んでいることが多いのも 実態であり、最終的にはコスト競争に陥りがちです。コスト競争から脱するためには、顧客ニーズを自ら発掘し、自社独自の価値を提供できる製品・サービスの開発 が有効です。

SDGsは2030年までの顧客ニーズの変化が詰まったニーズ集としての役割を担っています。SDGsは17個の目標、169のターゲットという2030年までに顕在化する世界中のニーズを内包しているからです。顧客が次に何を望んでいるのかを見極めるためには、顧客との直接的な対話に加え、その背景にある大きな世界の動きとしてのSDGs を理解することが有効です。

例えば、建物内部の空間を仕切るパーティションを販売している石川県小松市に本社があるコマニー株式会社は、県内の企業として真っ先に大々的なSDGs宣言を行い 、Goal5「ジェンダー平等を実現しよう」という観点から、災害時における体育館等の避難所での着替えやトイレを女性が安心して行えるプライベート空間を作るキットの開発に取り組んでいます。この取り組みを同社の塚本直之氏(取締役常務執行役員。2020年8月現在)がSDGs関連の講演会等で対外発表する中で、異なる業界の企業から連携可能性の打診が来る等の新しい展開が出てきました。令和2年7月の豪雨によって、日本中で、新型コロナウイルス感染拡大の対策と、豪雨等に対する災害 対策の両立を目指した避難所の環境改善が強く求められています。同社の取り組みはまさに時代を先取りした取り組みになりました。今後、同社による取り組みはコ スト競争を脱するための切り口の一つへと成長していく可能性を秘めています。

このようにSDGsに沿って将来の顧客ニーズになりうる社会課題に向き合い、その取り組みを社会に情報発信すると、同様の問題意識を持っている人たちとのパートナ ーシップが生まれます。これにより、自社だけでは実現不可能であった独自の価値提供が可能となり、最終的にはコスト競争から抜け出すことが出来るようになるの です。

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