相続取得した土地所有権の国庫への帰属<所有者不明土地の解消に向けた実務ノウハウ Vol.28>【最終回】

全国公共嘱託登記司法書士協会協議会
名誉会長・司法書士 山田 猛司

2022/8/3

所有者不明土地をめぐる施策が相次いで法制化されるのに伴い、登記をはじめとする実務の需要が爆発的に増加することが予想されます。そこで、この問題に精通している山田猛司先生が実務的な知識やノウハウについて解説します。 
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.105(2022.7)に掲載されたものです。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の概要


令和3年4月21日「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「法」という)が成立し、同月28日に公布され、同法は令和5年4月27日から施行を予定しているが、その概要は以下の通りである。

社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的としている(法1条)。

土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができるが(法2条)、土地の管理コストの国への不当な転嫁やモラルハザードの発生を防止する必要から、「通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」に該当しないことを要件として、却下要件(法4条)と不承認要件(法5条)を定めた。

承認申請は法務大臣に申請をするが、承認申請を受けた法務大臣は、承認申請に係る審査のため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができ、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることもできることとされ(法6条)、実際には法務局職員がその職にあたることが想定されている。

法務大臣がその承認をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨が承認申請者に通知されるが(法9条)、承認申請者は、その管理に要する10年分の負担金を納付する必要があり(法10条)、承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において承認に係る土地の所有権は国庫に帰属するが(法11条)、承認申請者が負担金の額の通知を受けた日から30日以内に、負担金を納付しないときは、法務大臣の承認は、その効力を失うこととされている(法10条)。

国庫に帰属した土地のうち、主に農用地又は森林として利用されている土地は農林水産大臣が管理・処分し(法12条)、それ以外の土地は財務大臣が管理・処分することとされている(国有財産法6条)。

なお、承認に係る土地について当該承認の時において虚偽の申告により国に損害が生じた場合は、その損害を賠償する責任を負うものとされている(法14条)。

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