マンション評価の通達公表<気になる税務トピックVol.17>
白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生
2023/10/25
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
マンション評価の通達公表
マンションの相続評価の個別通達「居住用の区分所有財産の評価について」が10月6日に公表された。8月20日まで実施された意見募集(パブコメ)の評価方法と大枠で変わりなし。居住用の区分所有財産の一室について従来の相続評価額に乖離率(区分所有補正率)を乗じて市場価格理論値を算出し、その60%をもって相続評価額とする。乖離率については統計から得られたものだと説明されている。
なお、パブコメの原案の修正としては、区分所有補正率がゼロあるいは負数となった場合の区分所有財産は評価しないことになった。
パブコメでの「なぜ、このような計算式になったのか説明すべきではないか。時価として妥当なのか」「敷地持分狭小度のウエイトが低すぎるのではないか」「固定値(切片)が大きすぎるのではないか」「算式中の数値が細かいのではないか」という意見に対し、国税庁は「価格形成要因を指数化して売買実例価額に基づき統計的に予測した市場価格を考慮して評価額を補正する方法が妥当」と回答しているが、「統計でこうなった」というだけで理論的な説明がない異例の評価方法だ。マンションの評価額を巡って裁判になったとき、国側はどのように評価の妥当性を主張するのだろうか。
税制改正が話題になる季節に
税制改正要望や報道から令和6年度税制改正が見えてきた。年末にかけて様々な情報が出てくる時期になってきた。
具体的に改正が予想される項目として、特許等の知的財産から生じる所得に優遇税率を適用する制度としてイノベーションボックス税制の導入、中小企業等の賃上げ税制について繰越控除・措置の期限など強化の検討、また、新リース会計基準を受けてのリース税制の改正、外形標準事業税の見直しによる資本金と資本剰余金の合計の基準を採用、事業承継税制について特例承継計画提出時期の延長などは改正の可能性が高いだろう。
また、首相の指示による給付金の支給と併せた所得税減税についても具体的内容が気になるところだ。さらに、2023年度の骨太の方針で盛り込まれた「退職所得課税制度の見直し」では退職所得課税が強化されると予想されている。接待飲食費の5,000円の上限を引き上げる方向での見直しの報道もあった。その他、研究開発費税制やストックオプション税制の拡充なども想定される。
さて、ここで取り上げていないサプライズとなるような改正はあるだろうか。
申告後の仮装隠ぺいが重加算税の対象に
前述のほかにも令和6年度税制改正では、申告後に仮装隠ぺい行為が行われることに対する新たな措置が検討される。現行制度では、重加算税は「納税申告書を提出したとき」とされており、更正請求に係る仮装隠ぺいは対象にならない。
法人税の申告後に架空の外注費に係る領収書等を作成し、外注費の計上漏れを理由とした更正請求を行って還付金を受領するような行為が実例として存在するとのことだ。それにしてもそのような行為を実行する者がいるということなのだろう。