急成長の要因は学生アルバイト活用にあり!
時代と逆行する年間361日営業で成功を遂げた“税理士法人ともに”の躍進劇!Vol.1

税理士法人ともに 代表社員税理士 入江 康二
2018年の設立から6年半で売上4億円、スタッフ70名達成という急成長を遂げた「税理士法人ともに」。相続業務における顧客ニーズに応えることで満足度を向上させ、業績を拡大するとともに、会計業務にも力を入れはじめている。その裏には、学生アルバイトの活用による年間361日営業の実現があった。独自のビジネスモデルで成長を続ける同社の戦略や哲学を、代表・入江康二先生に伺った。
相続と会計の両輪で安定経営へ
「税理士法人ともに」7期目の戦略
入江先生は2018年6月に「税理士法人ともに」を設立され、現在7期目を迎えています。
現在の売上や業務内容について簡単に教えてください。

弊所は相続専門の事務所としてスタートし、「1円でも多く売り上げ、1円でも経費を抑え、1円でも多く利益を出す」ことを目指し、事業を商売と考えてやってきました。この考え方は今も変わっていません。
ここ数年は会計業務にも力を入れはじめており、今期の売上見込みの内訳は、相続が7割、会計が3割ほど。さらに来期は6:4、将来的には5:5を目指しています。相続の売上はキープしつつ、新たに会計を伸ばしていく方針です。
会計業務を拡大している理由は何でしょうか?
事業の多角化によるリスク分散です。相続だけに依存していた場合、例えば関連法規の改正などにより業務が激減し、一気に経営が傾く可能性があります。しかし売上の半分が会計業務であれば、たとえ相続の仕事がなくなったとしても事務所は存続できます。安定性を確保するためには、多角的な事業展開が欠かせません。
当初相続専門だったのは、もともと私の得意分野だったからです。独立後はとにかく仕事の受注が最優先でしたが、徐々に依頼が増え、ある程度コントロールできるようになってきました。そのため、業務の幅の拡大を進めています。
設立6年半で従業員70名規模へ
組織の硬直化を防ぐ学生アルバイト活用
そうした取り組みの結果、事務所の規模も順調に成長しています。
現在の従業員数を教えてください。
スタッフは現在70名おり、うち18名が正規職員です。残り52名はパート・アルバイトとなり、そのうち約6~7割が学生です。特に学生アルバイトの採用には力を入れています。
会計事務所としては、学生アルバイトの人数が突出しているように感じます。
採用に力を入れているのは、やはり人件費が抑えられるからでしょうか?
それもありますが、学生アルバイトを積極的に採用する一番の理由は流動性です。弊所の学生アルバイトは大学3年生・4年生をメインの対象としているため、長くても2年しか在籍できません。短いスパンでスタッフが入れ替わることで、グループや派閥などが形成されず、また特定の業務や顧客を特定のスタッフにしか任せられないといった属人的な状況も避けられます。私自身、代表でいるのは10年と決めて開業しましたが、それも同じ考えに基づいています。組織は凝り固まるべきではありません。
10年というと、あと3年半しかありません。退任後についてもすでに考えているのですか?
まだ明確な方針は定まっておらず、考え中です。売却も検討しましたが、現在のメンバーに嫌がられることを考えて断念しました。
人柄重視の採用基準
低予算で学生が集まる求人戦略とは
学生アルバイトの採用基準を教えてください。
人柄を重視しています。以前は学歴や専門知識などの能力重視で採用していましたが、それでは定着せず、人柄重視に切り替えたところ改善したのです。しかし結果として、所属学生の多くは早稲田大学出身であり、いわゆる上位校の学生が大半を占めています。学歴がすべてではありませんが、高学歴の学生は優秀な傾向があると感じています。
求人はどのように行っていますか?
求人情報はindeedやゼロワンインターンなどの媒体に掲載していますが、予算はほとんどかけていません。「土日勤務のできる会計事務所」「シフトが自由」「実務経験が積める」といった条件で探すと、自然と弊所が検索上位に表示されるようで、多数の応募があります。また、自社サイトの採用ページからの応募も増えています。学生アルバイトのインタビューを掲載しているのですが、期を重ねるごとにコンテンツが充実し、職場のイメージが伝わることでミスマッチが減少。その結果採用の確度が上がりました。
期待通りの仕事ができる職場だと評判を得ているのですね。
学生同士の紹介が採用につながることはありますか?
私は期待していたのですが、「紹介してよ」と声をかけても誰も動いてくれません(笑)。それこそ資格試験の予備校の友人などを紹介してくれないかと思っていたのですけどね。とはいえ、自主的に調べて応募してくる学生が増えているので、現状で満足しています。
学生アルバイトだけでなく、例えば主婦などのパートも積極的に採用しているのでしょうか?
主婦のパート採用も行っていますが、家庭の事情で退職するケースは少なくありません。また、業務の要求水準が高く、成長へのモチベーションを維持することが求められるため、厳しく感じる人も多いです。子育てが一段落した後に、フルタイム勤務を目指す人が定着しているようです。

そのような厳しい職場で、学生は辞めないのでしょうか?
辞める学生もいますが、毎年5名ほどは残ります。彼らは挑戦心があって成長のペースも速く、約2か月で一般的な職員以上に業務をこなせるようになります。そのようなスタッフがその後の22か月働いてくれれば、離脱者が多くても十分な成果が上がるのです。
ちなみに、職員と学生アルバイトの業務に明確な線引きはなく、能力に応じて割り振っています。実際のところ、業務を最適化すればスタッフの8割は学生でいいと考えています。
「困ったとき頼れる存在でありたい」-361日営業のきっかけ
スピード対応で評価向上、売上アップへ
貴所の特長的な「361日営業」の取り組みについてお聞きします。
いつから開始され、またきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
361日営業を開始したのは、約2年前の4期目です。ただしそれ以前から、より多くの日数で対応する必要性は感じていました。
相続は発生するタイミングを選べず、平日に時間を作るのが難しい会社員のお客様も多い。そのため、もともと私は土日祝であっても電話対応をしていました。お客様にとって困ったときに頼れる存在でいたかったので、そこに不満もありませんでした。
しかし、職員に同じ対応を求めるわけにはいきません。そこで、むしろ土日こそ働きたいであろう学生アルバイトを活用してはどうかと考えついたのです。当時雇っていた学生の優秀さも追い風となり、彼らが戦力になったタイミングで361日営業を打ち出していくことに決めました。
361日営業への切り替えについて、職員の反応はどうでしたか?
多くの職員に反対され、何人かの職員は離脱しました。それでも実施したのは、当時3期目として雇っていた学生アルバイトの活躍を見て、彼らになら任せられると確信したためです。実際、彼らをしっかり育成してから長期休暇となるゴールデンウィークの期間を任せてみたところ、業務が問題なく回ったのです。これを見て、職員も徐々に納得してくれた感じですね。2年経ち、今いる職員にとっては361日営業が当たり前になっています。
犠牲を払っても得るものの大きい挑戦だったということですね。
361日営業の導入で、売上は伸びましたか?
売上は伸びましたが、営業日数の増加が直接の要因ではなく、品質向上がもたらした成果です。私が営業日を増やした理由は業務の品質向上であり、品質には融通の利く営業時間だけでなく対応の早さも含みます。例えば、他の会計事務所なら5か月かかる仕事を3か月半で終わらせたり、預かった資料を3日以内に返却したりといったことです。土日も休まず営業しているからこそのスピード感があります。これらの品質向上の結果、取引先からの評価が上がって紹介が増え、売り上げも伸びていきました。
品質向上が鍵となったのですね。いっそ365日営業にしようとは思いませんか?
それは考えていません。休みにしている大晦日と三が日も、私が携帯電話で対応できるようにしていますし、学生から「勤務できます」と言われたこともあります。しかし実際のところ、その期間にお客様から連絡が来たことはないので、区切りとして休みのままでいいと思っています。361日営業は会計業界では珍しい営業形態ですが、一部の企業では当たり前のことです。コンビニが土日も営業するのと同じ感覚で、難しい案件以外の問い合わせは学生アルバイトが対応すればいいと思っています。

プロフィール |
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税理士法人ともに 代表社員税理士 入江 康二
1978年大阪市生まれ。2003年税理士登録後、国内最大手の医療系会計事務所にて、医師や資産家に対する税務コンサルティング業務に充事する。2006年には外資系税理士法人にて、上場企業の税務申告、コンサルティング業務を、 2010年には相続専門大手税理士法人にて、200件以上の相続税申告業務の担当や大地主やオーナー企業に対し、事業承継対策やMBOを実行する。2018年に独立、「税理士法人ともに」開業。 |