平均年収650万円超えの衝撃! 松岡敏行が目指す労働生産性日本一の事務所作り Vol.3
税理士法人松岡会計事務所 代表社員税理士 松岡 敏行
労働生産性(給与÷労働時間)で日本一の事務所を目指す松岡会計事務所(大阪府)。 平均年収650万円超えという高水準を達成しつつも、残業時間もほとんどないという、高い生産性を維持するにはどのような秘訣があるのか。事務所での効率的な働き方や給与制度、また働く環境作りの観点から代表社員税理士の松岡敏行氏に話を聞いた。
「所員」ファーストだからこそ生まれる好循環
これから業界をリードしていくような存在になっていきたいというお話がありましたが、
松岡先生の中で現在のところベンチマークにしている会計事務所はありますか。
今はむしろ、オリジナリティを磨いていきたいと考えています。ただ単に成長したいというよりも、人が集まって、いかに「松岡会計らしさ」を作り上げていくかということに興味がありますね。
その意味でも、新しいことへのチャレンジも積極的に行っていて、現在は事務所内に商品開発部を作り、研究会を行っています。相続対策としての財団法人の立ち上げについて、有識者を呼んで本格的な勉強会を行っているのですが、そこで身につけた知識で実際にお客様に財団法人の提案を行うことで、月何十万円という付加価値サービスを生むことができました。
元々、会計事務所には大きな潜在能力があると私は思っています。事業承継やM&Aも、本来はまず、税理士に相談するはずなのです。けれどそれらの案件が、金融機関に持っていかれてしまっているのが現実です。つまりお客様にとって、本当なら会計事務所に頼みたい仕事はごまんとあると思うのですが、それに対応できる事務所がないだけの話なのです。
だからこそ松岡会計という総合病院に行けば、どんな病気でも治してもらえると認知される集団になるというのが、私たちのめざす一つのオリジナリティですね。
事務所経営において、大事にしている考えを教えてください。
うちの事務所には「所員、お客様、事務所が共に生き、共に栄える」という経営理念があります。「所員、お客様、事務所」という順番もとても大事で、当事務所は「所員」ファーストなんです。所員が満たされたら、周りの人に対しても貢献していき、お客様が次に満たされる。お客様が満たされたら、「良い事務所があるよ」と言って、友達に紹介してくれる。そうして事務所へ戻ってくるのです。
一人ひとりの所員が満足して楽しく仕事をすることではじめて良いサービスができるので、お客様に対しても貢献できると考えています。このような良い流れを構築することで、結果的に事務所が潤っていきますし、またその資源で所員にもしっかりと還元できるのです。うちの所員にはこうした好循環についての教育も丁寧に行うようにしています。
「残業ゼロ」というスローガンを掲げていらっしゃいますが、
今よりさらに減らしていくためには何が必要なのでしょうか。
まだまだ効率化のためにやれることはあると考えています。例えば、うちの事務所では、今AIを業務に取り入れていて、入力も通帳をスキャンしたら自動で仕訳が生成できるようになったのですが、これで1か月約1,000時間の作業時間を削減することができています。いわゆる設備投資にはなりますけれど、AIはつくづくすごいなと思います。
顧問先へもスキャナーを持参してスキャンすると、自動でクラウド上のフォルダにデータ化されます。それをパートさんが全部AIに読み込ませることで仕訳が生成できるので非常に便利なんです。それで記帳代行料をもらうことで顧問料も上げられます。AIは人を1人雇うより絶対安く済みますし、速くて正確ですしね。おそらくこれからもすごいスピードで進歩していくのだと思います。
ただ、このようなテクノロジーが出てくると、なおさら私たち会計事務所の価値を提示する必要性がありますから、今までと同じ業務を続けているだけでは絶対ダメでしょうね。
業務効率化はどれくらい前から取り組まれているのでしょうか。
税理士法人化した約9年前に私が主導して取り組み始めました。父の代ではすべて手書きで、電子申告率もゼロ。残業も多く、離職率も高かったんです。自分が働きたい事務所を作りたいと思って、9年かけてここまで変えてきた感じですね。
売上に関しては、これまでも所員とお客様を大事にしながら、一人ひとりがやる気を出して頑張ってきたので、その結果として10億円を超えましたが、元々10億円を目指すために頑張ってきたわけではありません。
もちろん努力はしてきましたが、「共生・共栄」という経営理念に沿った行動をした結果、気づけば達成されていたというだけです。「所員、お客様、事務所が共に生き、共に栄える」。これを追求すれば必ず成長するし、給料も上がるし、残業も減ります。「代表についていったら、より良い生活が送れるんだな」「人生がより豊かになるんだな」と思ってもらえたら、私も嬉しいです。
見えないニーズを掘り起こせ
マーケティング力を生かしたコンサルへの取り組み
松岡先生の強い信念をもった取り組みが、所員の方々の協力のもと、
短期間で事務所を大きく変えてきたのですね。
今後の戦略展開やこれから力を入れていきたい取り組みはありますか。
もちろん山ほどあります。掘り起こせていないだけで、ビジネスチャンスは明らかにありますから。税理士事務所とシナジー効果のある、社労士事務所やコンサル事務所、不動産関係、さまざまな事業を立ち上げましたが、すぐに売り上げ7、8,000万円に成長したということもあり、まだまだ成長余力があると感じています。
中小企業が抱える悩みというのは税務会計だけに限らず、例えば、労務であったりコンサルであったりとか、いろいろなところでニーズがあるのです。それを掘り起こした結果、新規事業も急成長できたと捉えています。
中小企業の最大のパートナーでもある会計事務所として、これからはまだ可視化されていないニーズをいかに探り当てていくかが焦点になっていくと思いますね。
うちの事務所の顧問先は1,600~1,800社くらいあるので、その全部に対してニーズを探ってアピールすれば、数億円相当の売上が立つのは明らかではあります。ただ、そのために急速に人を雇うとまたエラーが起こってくるというのも想定できるので、早急に動くということは考えていません。 事務所としての成長曲線は見えていますが、今はそれをいかに達成するかに重点を置いているので、売上にはあまりこだわっていません。
労働生産性をこれからさらに極めるために、松岡先生としてやりたいことはありますか。
うちの事務所はマーケティングを得意としていて、ホームページもこの3年間で2,600万くらい投資しました。だいたい年間千万単位ですね。
これだけ聞くと高額に感じるかもしれませんが、ホームページの投資に2,600万かけても毎月の顧問先で得る収入が8,800万くらいなので、利回りとして考えると250%になっています。
今後は、こうしたマーケティングのノウハウをお客様にも無料で提供しつつ、必要なお手伝いをしてコンサルフィーを成功報酬型でもらうようなビジネスをやりたいと思っています。お客様も、売上が倍になったら顧問料を絶対倍にしてくれると思いますので。
日本にはたくさん製造業がありますが、すごく良いものを作っていて、あとは世の中に知ってもらえさえすれば一気に開花するという状況なのに、どう広めていけばいいのかわからないという会社がまだたくさんあると思っています。
うちはマーケティングをして製品を世に広めるといったことの知見もあるので、そういう会社のお手伝いをすることができたら、本当の意味でのコンサル系税理士になれるとも思っているんです。当事務所にとってもお客様にとってもwin-winの関係になるようなことをしかけていきたいですね。
貴重なお話をありがとうございました。
プロフィール |
---|
税理士法人松岡会計事務所 代表社員税理士 松岡 敏行
29歳で税理士登録。過去1,000件を超える相続対策を実施。その経験を活かし独自の対策を提案することで定評がある。また、子供のころ漫画家を目指していたこともあり、日本で初めて税理士自らマンガを描いた「マンガ・突然の相続」(清文社)を出版。マンガを使ったセミナーはわかり易いと好評となり、現在はセミナー講師として全国で講演している。 現在は社員数85人の税理士法人松岡会計事務所グループ代表。 |