鶴田幸久が語る 売上100億円への確信
10年で10倍を目論む急成長の秘密を探る Vol.1

グロースリンク税理士法人 代表 鶴田 幸久

企業が大きく成長するためには、つねに時代の先を読み続けていくことはもちろんのこと、組織づくりも欠かせない要素である。 学生時代から不景気に負けない経営者を目指して税理士になったという鶴田幸久先生。 同氏が代表を務めるグロースリンク税理士法人は、現在好調な業績推移を続け、売上100億円を見据えて、さらなる成長を遂げようとしている。今回は、鶴田先生に事務所の成長について詳しく聞いた。

拠点拡大のビジョンとその狙い

まずは、拠点の拡大についてお伺いしたいと思います。
グロースリンク税理士法人は、かなり具体的なビジョンを掲げていらっしゃいますが、
このビジョンを掲げたきっかけや、狙いをお聞かせいただけますか?

当事務所では、「2025年に、入所したい名古屋の会計事務所No.1になり、1,000社の黒字企業を支援する!」、「2030年に、東京、大阪、名古屋を中心に全国10拠点を展開し、日本一クライアントの成長にコミットした会計事務所グループになる」というミッションを掲げていますが、いわゆる「ミッション・ビジョン・バリュー」を言い出したのは、2012年ぐらいでしょうか。新卒採用を始める少し前からやり始めましたね。

最初は、新卒の人たちにとって「名古屋で入所したい会計事務所No.1」になりたいと思ったことがきっかけです。
その後、所内でも「売上高10億円・クライアント1,000社」を目指そうということになり、実際に2023年に10億円を達成することができ、顧問先1,000社も2024年中には達成することができそうです。

非常に理想的な成長ですね。

ありがとうございます。当初に立てた目標がようやく見えてきたというところで、次のビジョンは、2030年までに全国10拠点を展開し、日本一クライアントの成長にコミットした会計事務所グループを目指すというものです。
現在、名古屋、渋谷、梅田、愛知県の岡崎市のほか、2024年11月から大阪南オフィスとして大阪府松原市に事務所ができる予定です。今後は全国の主要都市というよりも、まずは東海エリアの主要都市に展開したいというイメージを持って進めているところです。理由としては、当事務所の本社が名古屋にあるのですが、ここだと豊橋や岐阜や三重方面からのアクセスも良く、少し遠い場所から通っている職員が多く、彼らの利便性がよりよくなる可能性があるからです。

なるほど。つまり職員を第一に考えているということでしょうか。

そうですね。当事務所も17年、18年とやっていますと職員のライフステージもそれぞれ変わってきています。

たとえば、結婚して奥さんの実家に引っ越す職員もいれば、身内を介護するために実家の近くに住みたいと希望する職員、あるいは子育てが忙しくなってくるにつれて在宅ワークにシフトする職員など、本当にさまざまです。
ですから、今は名古屋の事務所に勤務していたとしても、将来はまた違う場所の方が働きやすいという職員も必ず出てくると思うのです。職員それぞれのライフステージに合わせて柔軟に勤務先を変えられるようにしたいと考えた結果、東海エリアの主要都市に事務所を開設する方針で今進めているところです。
さらに言えば、今後は支店展開を進める中で、拠点の責任者をやってくれる人材が出てきてくれると面白いなと思っているので、こうした副次的なメリットもあわせて、拠点の開設に関しては積極的に考えています。 やはり入所してもらったからには、長くうちで活躍してほしいという願いもあるので、職員のことを大切にしていきたいと考えています。


「日本一クライアントの成長にコミットしたい」という点については如何でしょうか。

当事務所の社名は「グロースリンク」ですが、これは「成長(Growth)をつなげる(Link)」という意味なんです。当事務所のモットーをダイレクトに社名にしたことで、成長志向が高いお客様に多く集まっていただいています。
どうやったら自社の売り上げが伸びて成長できるか、そのための具体的な指針や方法、改善策などを、私たちはプロの見地で示していくことになります。
それだけに、会計事務所の職員のアドバイスはお客様の意思決定にもかなり影響を及ぼすと捉えています。我々のひと言で成長するかしないかが、大きく変わると言っても過言ではありません。会社の成長のために当事務所を選んでいただいている以上、そこにコミットしたお客様とのやりとりをしたいという意味もあり、「日本一クライアントの成長にコミット」というところを社外・社内ともに強く意識して業務に取り組んでいます。

急激に売上が伸びたきっかけ

先程、前々期売上高10億円、前期が12億円というお話がありましたが、
以前インタビューをさせていただいたときは、2019年が4億1,000万円、
2020年が4億8,000万円ということで、そこから急激に伸びているという印象をもちました。
そのあたりのきっかけがあれば教えていただけますか?

2020年に取材をしてもらった時は5億円くらいと申し上げましたが、確かにそこから伸びていると思います。ちょうど4億円を超えて5億円の時くらいから、税務側でいうと幹部職員がしっかりしてきたというか、組織化がうまくいき始めたと思います。 具体的には私と幹部と一般職員の三階層になったのが、うまく機能するようになった時期にあたります。直近では、さらに階層が増し、四階層になっています。

「四階層」というのは、具体的にどのようになっているか教えていただけますか?

私がいて、統括マネージャーの下に、チームのマネージャー、その下にチームメンバーという構造です。この組織化で、私の役割もかなり権限委譲することができたのは大きかったですね。以前は私が営業のメインだったのですが、それも引き継いでお願いするようになりました。

グロースリンクの組織階層イメージ


ここまで組織をきちんと作っている会計事務所はなかなかないと思われますが、
やはり苦労されたことも多かったのではないでしょうか?

そうですね。マネージャーになる人は元々プレイヤーで活躍していたこともあり、プレイヤーの意識とはまた別にマネージャーとしての動き方を新たに学んでいくというのは大変だったと思いますね。
そもそも、会計事務所ではマネージャーの働き方までを勉強する機会はあまりないので、その点はかなり苦労したのではないかと思います。

売上や顧客が伸びた理由は「周辺業務の拡大」

それでは組織化以外で、売上や顧客数が伸びている要因はありますか?

当事務所の場合は、周辺業務の展開が大きかったと思います。最初に、税務のお客様に対して、社労士事務所を併設して内製することから始めました。今では生命保険、損害保険、IFAの投資信託の関係も周辺業務として展開しています。さらに最近では不動産仲介と司法書士、行政書士なども追加することができ、税務の一つのお客様に対して、総合的にサービスを展開することができています。

確かに最近は不動産など周辺業務で売上を伸ばしている事務所が多い印象があります。
周辺業務をやり始めるにあたって、大変だったことはありましたか?

やはり、構造としてはクロスセルをしていくことになるので、税務の担当者がお客様の課題をそのままスルーしてしまうと、そこには何も接点が生まれません。担当者がうまくニーズをキャッチした上で、他のソリューションにパスできるかにかかっています。そこには、やはり個々のセンスが重要になりますね。こうしたことができる職員もいれば、不得意な職員もいますので、そこが周辺業務の展開にあたり、難しい部分だと思っています。

そのあたりのマニュアルや仕組み化、情報共有はどのように進めているのでしょうか?

マニュアルとしてはまだ整備していませんが、「他の部署ではこんなことができます」とか、「こういう成功事例がありました」というケースをなるべく共有するようにしています。基本的に周辺業務から生まれた利益や売上は、税務担当者と実行部隊とでシェアされる仕組みになっているので、積極的に共有しようという意識が芽生えているのだと思います。

プロフィール
グロースリンク税理士法人 代表 鶴田 幸久

1975年、愛知県岡崎市生まれ。岡崎高校、名古屋市立大学卒。税理士。中小企業診断士、M&Aアドバイザー、医療経営コンサルタント。
2006年に独立開業し、2012年に税理士法人鶴田会計を設立。2020年4月に社名をグロースリンク税理士法人に変更し、同5月に名古屋の新たなランドマークとして注目を集めるグローバルゲートへ移転。

ーー* 後編へつづく *ーー

  

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