続けるべきか撤退すべきか…逆風吹き荒れる補助金申請支援
採択率70%以上、申請累計300件以上を誇る、税理士法人FLAGSの判断はいかに Vol.2

税理士法人FLAGS

税理士法人FLAGS 代表社員 末松 和真

税理士法人FLAGSは補助金申請実績全国トップクラス、経営計画策定支援実績も累計100件以上を誇るなど、中小企業に寄り添いながら確実な成長を実現させ、確かな結果を残し続けてきた。 補助金申請審査の厳格化など経済環境が目まぐるしく変化する中、FLAGSが描くビジョンとは?創業融資と補助金申請支援の取り組みを中心に話を聞いた。

補助金申請支援における強み
税理士だからこそできるサービスとは

ここからは公的制度支援、もうひとつの補助金申請支援についてお伺いしていきます。
取り扱っている補助金にはどのようなものがあるのでしょうか。

事業再構築補助金、ものづくり補助金、持続化補助金、IT補助金、事業承継引き継ぎ補助金、あとは各種、県などが出している補助金もあります。経産省管轄の補助金は基本的に全部取り扱いができます。
特に得意なのが、持続化補助金と事業再構築補助金です。持続化補助金は過去3年間ほどで累計200件以上、採択率も70%以上は確保できています。事業再構築補助金は税理士法人だと全国で5番目くらいの件数を取っていて、採択が100件以上、採択率も7割強くらいあります。
ものづくり補助金と事業承継引き継ぎ補助金は、今後力を入れていきたいと考えている分野です。IT補助金も今年から自治体が商品をお客様に提供することになり、弊所は補助金のベンダーとして申請していくことができるようになりました。
着手金に関しては、事業再構築補助金とものづくり補助金は、成果報酬のほか着手金として10万円いただいています。この2つは報酬金額が高いので、追加報酬も最低金額100万円にさせてもらい、温度感を確かめて少しふるいにかける意味でもきちんと着手金を設定させてもらっていますが、持続化補助金は無料でやっています。

補助金申請支援のサービスは、①補助金申請サービス、②交付申請・実績報告支援サービス、
③補助事業実行支援、④優遇税制活用サポートと基本的に4つあります。
①と②は一般的なものの、③と④は珍しいと思うのですが、始めた理由は何ですか。

補助金は基本的にスポットの案件で、補助金がおりた時に報酬が発生するため、③補助事業実行支援に関しては、先ほどの融資と全く同じ考え方で、我々はスポットで終わるのではなく継続的な成長支援をするという理念を掲げている以上、お客様と一緒に成長していきたいという思いがあります。
ですから、補助金で終わりではなく、事業そのもののサポートまでやっていきたいという考えから生まれました。

例えば事業再構築補助金であれば、新しい事業モデルの新規計画を策定した時にその事業を実行できるように、毎月会議に入って事業立ち上げのサポートをするという、いわば事業の立ち上げコンサルのようなものです。

④優遇税制活用サポートは、納税申告時に投資が発生すると税額控除が使えるので、その税額控除も合わせて提案できるよう始めたサービスです。民間のコンサル会社だと補助金だけ取って終わりなのですが、税理士である我々ならば、1,000万円の投資に対して、税制をうまく絡めれば100万円の控除も可能なので、税制控除と合わせての提案が補助金申請支援には効果的という考えから始めました。
補助金申請支援としては、①と②は必ずセットで受けているのですが、今のところ9割方がこのセットのみで、④がその半分より少なく、③はまだまだこれからという状態ですね。

補助金申請支援は税理士変更を前提として受注しているようにも思われるのですが、
実際どの程度が顧問先になっているのでしょうか。

先ほどの創業融資は顧問を取りに行く前提ですが、補助金申請に関しては顧問というよりは事業化の経営支援としてコンサルに入れたらという感じなので、顧問先になったのは本当に片手で数えられるほどです。
創業者は税理士がついていないので、積極的に「顧問とセットで」と言えるのですが、補助金の場合は既に先生がついていますしね。
私たちも税理士の敵を作りたいわけではなく、一緒に協業してやっていきたいと考えています。税理士さんから紹介していただくケースもありますし、私たちも得意でないところは他の先生にお願いしているという感じなので、縄張りを荒そうという気は全くないのです。

ちなみに、事業計画書の作成支援もされていると思うのですが、
これは先ほどの創業融資と同じ民間金融機関出身のお二人が担当されているのですか。

ここはまた別で補助金の担当がいます。この担当は資格を持っているわけではありません。持続化補助金の現場で、2~300件実績を積んで知識をつけて成果を上げていくスタイルなので、資格にあまり頼らず業務を行えていますね。
元々、最初の立ち上げの時期は中小企業診断士の先生に外注して事業計画書を書いてもらったりしていたのですが、やはり方針面で合わなかったり連携も取りづらかったりしたので、それなら内製化していこうと頑張ってきたというのが現状です。
当初は、外注の診断士の先生に作成してもらい、その書き方を私たちが覚えていきました。それこそ、コロナが発生した4年前の最初の1、2回は診断士の先生にお願いしていましたが、そこからは基本的には内製で、状況に応じて業務委託先のフリーランスの方と連携する形で進めています。事業企画書の内製は、所員の子たちが積極的に取り組んでくれたことで可能になっただけで、その自発的な動きがなければ全く成り立たなかったサービスだと思うので、本当に社員に恵まれているなと実感します。

厳しくなった補助金審査

最近は事業再構築補助金の審査が結構厳しくなっている状況だと伺っています。
中には手を引くコンサル会社も出てきていると思いますが、なぜ厳しくなっているのでしょうか。

今はコロナ禍が落ち着いた状況ですから、当時一気に膨れ上がった中小企業対策費が削減されるのはやむを得ないことです。また、これまでの補助金がどの程度の効果があったのかという振り返りが未だ不十分で、これまでの審査がある意味ずさんだったからというのもあるのではないでしょうか。
私たちも、最近厳しくなっているなという実感はすごくあります。手を引くといいますか、もう少しフィルターをかけて、お客様の中でも次の商品につながるような、我々が伴走できるようなお客様に限らせていただこうかと考えています。

フィルターに関して具体的に教えていただけますか。
今までの経験をもとに決められているのでしょうか。

今までも補助金を通したのに、会社がつぶれたり、貸し倒れになってしまったりした案件も残念ながらあるのが現実です。100~110件のうち5社くらいですね。私たちも顧問になっていない場合はなかなか深いところまでは口を出せず、それで会社が倒れてしまうと、やはりこちらの望むところではないのです。
補助金は前回の公募から事務局の審査がかなり厳しくなったのも、ひしひしと感じています。今回の公募はとりあえずやってみて、もし成約率が低いようなら次の公募では申請企業をかなり絞って、顧問やコンサルに入らせてもらう前提でフィルターをかけて取りに行くというイメージですね。また、成長する可能性が高かったり、我々のことを気に入ってくださったりしているファンのお客様を支援できるようなところに補助金を寄せていこうと考えています。
事業再構築補助金に関しては、平均150万のところにコンサルを重ねて300万にしていくといった粗利を上げていくような形で取り組むことに主眼を置き、件数としては縮小していくと思います。今は全国的にも名前を知っていただき、それで問い合わせをいただく機会も増えましたし、公募数も限られていますので、今後は一社に対して深く関わっていきたいと考えています。

補助金申請支援に携わっているスタッフは、どのような業務分担をされているのでしょうか。

補助金申請支援専門のスタッフは社内に3名います。補助金の事業が今は下火になってきたこともあり、個別のコンサルや別の事業の立ち上げをやったり、今年は公募が出なかったので補助金と助成金の相談会をやったりなどもしています。
補助金で潰れている会社も出ているので、やはり外注を活用して内製の数を抱えなかったことは、今となっては正解だったと思っています。
コロナ禍に補助金が1兆1,400億円出るというのがわかり、補助金申請に舵を切った価値はあったのですが、予算がある以上、いつかは必ず終わってしまうので、内製で人を抱えすぎてしまうと、終わりを考えた時にこの人たちはどうなるのだという話になってしまいますから。
補助金や助成金もそうかもしれないですが、いつでもある案件ではなく、継続的な雇用というのが結構難しい仕事だなと思うので、常時スタンバイしている人数としては、今は2名でもゆとりをもって回せると考えています。そのため、1名は別事業を担当していることも多いですね。

クラウド会計導入支援にも注力

ここでテーマが少し移りますが、東海地方でもトップクラスのクラウド会計導入支援を誇っていらっしゃいますよね。
そもそもなぜ、クラウド会計を強化していこうと思われたのでしょうか。

やはり世の中の潮流として、コロナ禍をきっかけにテレワークや在宅ワークなどが市民権を得たことですね。いつでもどこでも仕事ができる環境を作っていくというのは、中小企業にとって必要不可欠になって脚光を浴びたというところです。さらに、電帳法やインボイスといった制度の改正に対応しようと思った時、大きい波になってくるというのがあったので、移行を決めました。
個人的には、法改正と世の中の潮流みたいなことがはまったのではと思っています。年間100件近く顧問先を増やしていくという形でやって、顧問以外のスポットのお客様へもライセンスを抱えて導入支援しています。スポットのお客様へは全体の1~2割くらいですね。

創業融資から顧問になって、そのままクラウド会計導入というパターンもあるのでしょうか。

そうですね。創業融資は先ほど話しましたように顧問とセットになっているので、クラウド会計は導入いただいております。あとは、担当の税理士先生はすでにいるけれど、クラウド対応していないから導入支援してほしいという案件があり、それが割と大きいですね。また、補助金申請支援から顧問先へと移行したら、必ずクラウド会計シリーズを導入していただいております。
我々のクラウド会計導入支援は、クラウド会計を売っているわけではなく営利の業務改善をし、その改善した後の代行作業をしていく、そのセットで進めるモデルです。
この導入支援も今やっと専属の担当が1名入所したのですが、それまでは兼任で行っていました。導入支援は今後専属を確実に増やしていく予定でいます。うちの中で一番の売りの商品に間違いなくなると確信しています。

今後は会社の魅力をさらに強化し、税理士法人の採用力を高めていけば、今回紹介した創業融資支援をはじめ、経理改善にも人を配置していけるという考えがあります。
経理改善や経営支援での即戦力採用は非常に難しいと思うので、まずは意欲の高い人材の採用に力を入れる必要があると感じています。

貴重なお話をありがとうございました。

プロフィール
税理士法人FLAGS 代表社員 末松 和真

◎すえまつ・かずま/愛知県出身。
関西の大学に進学後、27歳で税理士登録。大学4年生の就職を考えていた頃、祖父の現時夫会長が交通事故に遭う。 時夫会長が奇跡的に無傷で生還したタイミングで、父であり、同じく代表社員を務める昌樹氏から「現役で3代同じ事務所で(税理士を)やる人はいないから、祖父のためにも帰って来い」と言われ、2013年末松会計事務所へ入所。 2017年(株)FLAGSコンサルティング 代表取締役。2019年、税理士法人末松会計事務所 代表社員。設立55年という歴史ある会計事務所グループとして今まで培ってきた信頼や伝統を基盤に、税務会計顧問以外のコンサルティングサービスを含む企業の経営課題に合わせたトータルサポートを行う。「税理士業界の枠に囚われず枠を超えたサービスで、中小企業の継続的な成長を支援する」というミッションのもと、中小企業の成長支援を行っている。

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