日経平均とTOPIXを徹底解剖!今後TOPIXが変わる?
ライフアセットコンサルティング株式会社 代表取締役CFP®/1級FP技能士
菱田 雅生
皆さん、こんにちは!
山一証券出身の元証券マン、金融商品や保険商品を一切売らない正直FP歴27年目のヒッシー先生こと菱田雅生(ひしだまさお)です。今回初めて【「税理士.ch」論説コーナー】の記事を書かせていただきます。
日ごろ顧問先で、投資の話や、株価、金利、為替相場の話が出ることもあると思います。今回は、日本の株式市場全体の動きを示していると言われる2つの指標について徹底解剖してまとめます。
国内株式市場の2大指標である「日経平均」と「TOPIX」
TVの経済ニュースなどで必ずと言っていいほど報道される、その日の株価動向。そのニュースで、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)という名前を聞いたことがある人は多いはず。国内株式市場の全体的な動きを示している2大指標です。
なんと今年(2024年)は、その2つの指標がそろって史上最高値を更新しました。
日経平均は2月22日でした。平成バブル期の1989年12月29日につけた史上最高値38,915円87銭を34年2ヵ月ぶりに更新。TOPIXは7月4日でした。1989年12月18日につけた史上最高値2884.80ポイントを34年7ヵ月ぶりに更新したのです。
国内外の株式市場を30年以上見てきた私からすると、今年の日経平均とTOPIXの最高値更新は、まさに日本経済が平成バブル崩壊の呪縛から解き放たれ、新たなステージへと踏み出したことを象徴するような出来事だったと感じています。
さて、そんな2大指標ですが、大きく異なる点があるのを知っていましたか?
日経平均とTOPIXの違い
まず、採用銘柄数が異なります。
日経平均は、東証プライム上場の主要225銘柄で計算されています。
一方、TOPIXは、旧東証一部上場全銘柄である約2,100銘柄で計算されています。
ただし、TOPIXは、2022年4月の東京証券取引所の市場区分の見直しを受けて、採用銘柄の見直しが段階的に行われています。第一段階の見直し(約400銘柄除外)は2025年1月末に完了し、その後、2026年から2028年への第二段階の見直しに移る予定になっています。
そして、計算方法が異なります。
日経平均は、単純平均株価(=採用銘柄の株価を合計して銘柄数で割る)をベースにしながら、採用銘柄の入れ替えや、株式分割等による権利落ちを考慮し、過去の株価との連続性を維持するための修正を加えています(修正平均株価)。株価なので、単位は「円(銭)」になっています。
一方、TOPIXは、旧東証一部上場全銘柄の時価総額を、1968年1月4日時点を100として指数化しています(時価総額加重型指数)。指数なので、単位は「ポイント」になっています。
ちなみに、一般に「時価総額」と言われる場合は、各銘柄の株価と発行済み株式数をかけたものを指します。時価総額は、その会社の規模を示しているとも言われます。ただし、TOPIXの計算の際に使われている時価総額は、発行済み株式数に浮動株比率をかけた「浮動株数」で計算されています。
このように、採用銘柄と計算方法が異なる関係で、それぞれの値動きの仕方には違いがあって、同じ国内株式の全体的な値動きを示す指標でも、高値安値のタイミングが少しずれることがあるのです。
例えば、日経平均の値動きは、採用銘柄の中でも株価水準の高い「値がさ株」の値動きの影響を強く受ける傾向があります。逆に、株価水準の低い「低位株」の値動きの影響はあまり受けません。つまり、値がさ株が大きく変動すると日経平均も大きく動きますが、低位株が大きく変動しても日経平均はあまり動かないわけです。
一方、TOPIXの値動きは、採用銘柄の中でも時価総額の大きい「大型株」の値動きの影響を強く受ける傾向があります。逆に、時価総額の小さい「小型株」の値動きの影響はあまり受けません。つまり、大型株が大きく変動するとTOPIXも大きく動きますが、小型株が大きく変動してもTOPIXはあまり動かないわけです。
【日経平均とTOPIXの比較】
日経平均株価(日経225) | TOPIX(東証株価指数) | |
構成銘柄 | 東証プライム上場の主要225銘柄 | 旧東証一部上場全銘柄 ※2022年10月末~2025年1月末の移行期間中に流通株式時価総額100億円未満の銘柄のウエイトを逓減していき、2025年1月末に除外予定。 |
銘柄数 | 225銘柄 | 約2,100銘柄 (2025年1月末、約400銘柄減少予定) |
表示単位 | 円・銭 | ポイント |
算出元 | 日本経済新聞社 | 東京証券取引所 |
算出方法 | 修正平均株価 「225銘柄の株価合計÷225」の除数を修正 | 時価総額加重型指数 1968年1月4日の時価総額を100として指数化 |
特徴 | ・株価水準の高い「値がさ株」の値動きの影響を強く受ける。 ・構成割合が上位の銘柄の値動きの影響を強く受ける。 | ・時価総額の大きい「大型株」の値動きの影響を強く受ける。 ・1つの銘柄の値動きによる影響は日経平均ほど大きくない。 |
上位10銘柄が日経平均の4割を決めている!?
日経平均の値動きに強く影響を与えている上位10銘柄を調べてみると、下表のような銘柄であることがわかりました(2024年8月30日時点)。
コード | 社名 | 業種 | ウエート | |
1 | 9983 | ファーストリテイリング | 小売業 | 11.84% |
2 | 8035 | 東京エレクトロン | 電気機器 | 6.55% |
3 | 6857 | アドバンテスト | 電気機器 | 4.49% |
4 | 9984 | ソフトバンクグループ | 通信 | 4.27% |
5 | 4063 | 信越化学工業 | 化学 | 2.72% |
6 | 6762 | TDK | 電気機器 | 2.50% |
7 | 9433 | KDDI | 通信 | 2.49% |
8 | 6098 | リクルートホールディングス | サービス | 2.30% |
9 | 4519 | 中外製薬 | 医薬品 | 1.87% |
10 | 4543 | テルモ | 精密機器 | 1.82% |
最もウエートが高いのは、ユニクロを運営しているファーストリテイリングでした。なんと、たった1銘柄で日経平均の12%近くを占めています。2番目に高いのが、東京エレクトロン。日経平均の7%近くを占めています。
驚くことに、上位5銘柄だけで日経平均の約30%を占め、上位10銘柄だけでも約41%を占めていることがわかります。この10銘柄の値動きが、日経平均の値動きの半分近くを占めているわけです。
上位10銘柄で重なっているのは2銘柄のみ!
では、TOPIXではどうなのか。同様にTOPIXの値動きに強く影響を与えている上位10銘柄を調べてみると、下表のような銘柄であることがわかりました(2024年8月30日時点)。
コード | 社名 | 業種 | ウエート | |
1 | 7203 | トヨタ自動車 | 輸送用機器 | 3.84% |
2 | 6758 | ソニーグループ | 電気機器 | 2.60% |
3 | 8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 銀行業 | 2.40% |
4 | 6501 | 日立製作所 | 電気機器 | 2.27% |
5 | 6861 | キーエンス | 電気機器 | 1.82% |
6 | 6098 | リクルートホールディングス | サービス業 | 1.75% |
7 | 8316 | 三井住友フィナンシャルグループ | 銀行業 | 1.72% |
8 | 8058 | 三菱商事 | 卸売業 | 1.60% |
9 | 4063 | 信越化学工業 | 化学 | 1.51% |
10 | 8001 | 伊藤忠商事 | 卸売業 | 1.43% |
最もウエートが高いのは、国内で時価総額が最も大きいトヨタ自動車でした。TOPIX全体に占める割合は4%近く。日経平均におけるファーストリテイリングほどは高くありません。そして、2番目に高いのがソニーグループ。TOPIXの3%近くを占めています。
上位5銘柄のウエートの合計が約13%で、上位10銘柄のウエートの合計は約21%でした。採用銘柄が2,100銘柄ほどと、日経平均の10倍近く多いことからも、上位の占める割合は日経平均よりも低いことがわかります。
とはいえ、TOPIXの上位50銘柄で、全体の約5割を占めていますので、TOPIXにおいても、ウエート上位の大型株の影響を強く受けていることがわかります。
それから、日経平均の上位10銘柄とTOPIXの上位10銘柄を見比べてみると、両方に入っている銘柄は、信越化学工業とリクルートホールディングスの2社だけでした。それぞれの指標の値動きに強く影響を及ぼしている上位10銘柄で、たった2社しか被っていないということは、それだけ日経平均とTOPIXは値動きが違ってくる可能性が高いということを意味しています。
これを機会に、あらためて日経平均とTOPIXの値動きの違いに注目してみてくださいね。
菱田 雅生
ライフアセットコンサルティング株式会社 代表取締役
CFP®/1級FP技能士
1993年、早稲田大学法学部卒業後、山一証券に入社し営業業務に携わる。
山一証券自主廃業後、金融商品や保険商品は一切売らない、金融機関等の業者に忖度しない正直FPとして、約26年間、講演や執筆を中心に活動。講演回数4,700回超、原稿執筆3,000本超。
TVやラジオでも活躍中。
著書
『日経マネーと正直FPが考え抜いた!迷わない新NISA投資術』(日経BP)
『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』(日経BP)
『お金のトリセツ100』(経済法令研究会)など
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