【令和6年度】ものづくり補助金とは?仕訳と圧縮記帳について解説

ものづくり補助金とは、新しい製品やサービスを開発したり、生産のやり方を改善したりするための設備投資を支援する補助金です。ものづくり補助金は圧縮記帳の対象のため、補助金を受け取った事業年度の税負担を軽減できる可能性があります。

この記事では、令和6年度のものづくり補助金について解説します。仕訳や圧縮記帳にいても、分かる内容になっています。

目次

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者など、新しい製品やサービスを開発したり、生産のやり方を改善したりするための設備投資を支援する補助金です。正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」で、日本のものづくり産業の競争力強化と生産性向上を目的としています。

ものづくり補助金を活用することで、中小企業は新しい技術やアイデアを活かして、革新的な製品やサービスを生み出すことができます。

例えば、新しい機械を導入して生産効率を上げたり、最新の技術を導入して新製品を開発したり、業務プロセスを改善するためのシステムの導入などです。中小企業は、より効率的で高品質な製品やサービスを提供できるようになり、競争力を高めることができるでしょう。

令和6年度のものづくり補助金の概要

ものづくり補助金は、年度によって応募期間などが異なるため注意しましょう。ここでは令和6年度の対象事業者や公募期間、応募条件などについて解説します。

対象事業者

中小企業や小規模事業者が対象となり、具体的には以下です。

業種資本金常勤従業員数
卸売業1億円100人
小売業5,000万円50人

製造業だけでなく、卸売業、小売業、サービス業など、幅広い業種が対象となるのが特徴です。申請を検討している人は、自分が対象事業者に該当するか事前に確認しましょう。

公募期間

18次の締切は令和6年1月31日から3月27日に行われ、すでに終了しています。

2回目の公募は、現時点では未定ですが、過去の傾向から、令和6年度内に実施される可能性が高いと考えられます。公募期間は、公式ウェブサイトで発表されるので、こまめにチェックするようにしましょう。

応募条件

申請者が満たすべき基本的な要件は、以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定することです。

  • 給与支給総額を年平均成長率1.5%以上の増加
  • 最低賃金の引き上げ
  • 事業者全体の付加価値額を年平均成長率3%以上増加

これらの条件を満たした事業計画の作成が必要です。

補助率・補助限度額

補助率と補助限度額は、事業の種類や規模によって異なります。例えば、補助率は1/2または2/3、補助限度額は750万円~5,000万円です。補助上限額や補助率は、申請する枠・類型や従業員の人数によって異なるため公募要領で確認しましょう。

補助対象の経費

補助対象となる経費は、具体的には以下が挙げられます。

補助対象経費概要
機械装置やシステム構築費生産設備やシステムの購入費用
技術導入費知的財産権の取得費用
専門家経費専門家への委託費用

ただし、それぞれの経費には、補助対象となる範囲や上限額が定められているので、注意が必要です。

ものづくり補助金を受け取ったときの仕訳

ものづくり補助金を受け取った場合、どのように仕訳をしたらよいでしょうか。ここでは、補助金の仕訳について具体的に解説します。

補助金の収益計上は原則として権利が確定した日の事業年度

国や地方公共団体から交付決定された日が、権利が確定した日と考えられます。

例えば、事業年度が2023年5月1日~2024年4月30日で、2023年12月に交付決定通知を受け取った場合、2023年5月1日~2024年4月30日の事業年度で収益として計上します。たとえ補助金が実際に振り込まれるのが2024年5月以降であっても、2023年度の収益として計上した方がいいでしょう。

受給が決定した日の仕訳

補助金の受給が決定した日には、未収入金という勘定科目で仕訳を行います。300万円の補助金の権利が確定した場合、以下が考えられます。

借方金額貸方金額
未収入金3,000,000雑収入3,000,000

未収入金は、まだ受け取っていないお金を記録しておくための勘定科目です。

補助金は交付決定通知を受け取った後、実際に振り込まれるまでに時間がかかる場合があります。この期間、補助金を受け取る権利はあるものの、まだ手元にはない状態です。そこで、未収入金として計上しておき、実際に振り込まれたときに未収入金を消し込みます。

実際に振り込まれた日の仕訳

補助金が実際に振り込まれた日には、未収入金を消し込む仕訳を計上します。例えば、300万円の補助金が普通預金に入金された場合、以下の仕訳が考えられます。

借方金額貸方金額
普通預金3,000,000未収入金3,000,000

未収入金としてすでに雑収入計上しているのにも関わらず、補助金を受け取ったときにも雑収入として計上しないように注意しましょう。

ものづくり補助金は原則として圧縮記帳の対象

ものづくり補助金は、原則として圧縮記帳の対象です。圧縮記帳とは、一定の要件に該当した場合、固定資産の取得価額から受け取った補助金を減額できる制度です。圧縮記帳をすることで、補助金を交付された事業年度の税金負担を軽減できます。

圧縮記帳をする場合としない場合では、税金に影響がでるため注意しましょう。

参考:ものづくり補助金総合サイト

圧縮記帳の要件

圧縮記帳を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 清算中の法人ではない
  • 圧縮記帳の対象資産は固定資産
  • 確定申告書に圧縮額の損金算入に関する明細書を添付する

また、圧縮記帳には以下の3つの方法があり、いずれかの方法を選択できます。

  • 損金経理により帳簿価額を直接減額する方法
  • 確定した決算においておいて積立金として積み立てる方法
  • 決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法

圧縮記帳の対象となる国庫補助金等は、固定資産の取得や改良に充てるための補助金です。経費補助の補助金は、対象とはならないため注意しましょう。

圧縮記帳のメリット

圧縮記帳の最大のメリットは、税負担を軽減できることです。補助金を受け取った年の利益が圧縮されるため、その分の税金を支払う必要がなくなります。

以下の例でシミュレーションしましょう。

補助金の金額 500万円・圧縮限度額 500万円・法人税等の税率 32%

圧縮記帳をしなかった場合、補助金500万円に対して160万円の税金が発生することになります。

500万円×32%=160万円

一方、損金経理により帳簿価額を直接減額する方法では500万円の固定資産圧縮損を計上できます。その結果、所得は0円となり補助金500万円に対して税金は発生しないでしょう。

500万円(補助金)ー500万円(固定資産圧縮損)=0円(所得)

しかし、将来の減価償却費が減少するデメリットもあるため、慎重に検討しましょう。

特別償却との併用も可能

補助金は、圧縮記帳だけでなく、特別償却との併用も可能です。特別償却とは、一定の要件を満たす設備投資について、通常の減価償却に加えて、特別な割合で償却できる制度です。

特別償却と圧縮記帳を併用することで、さらに税負担を軽減できます。しかし、適用要件が複雑になるため、圧縮記帳と特別償却を併用する場合は慎重にしましょう。

令和6年度のものづくり補助金に関するまとめ

ものづくり補助金は、中小企業などが新しい製品やサービスを開発したり、生産方法を改善したりするための設備投資を支援する補助金です。

ものづくり補助金は原則として圧縮記帳の対象です。圧縮記帳には、損金経理による帳簿価額の直接減額、積立金としての計上などの方法があります。圧縮記帳により税負担を軽減できる一方、将来の減価償却費が減少するデメリットも考慮する必要があります。また、補助金は圧縮記帳だけでなく、特別償却との併用も可能なため、税務上の取り扱いに注意しましょう。(参考:ものづくり補助金総合サイト

【まとめ記事】令和6年度の助成金・補助金について紹介します

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