中小企業新事業進出促進補助金2025とは?概要やスケジュールなど解説
中小企業新事業進出促進補助金(通称:新事業進出補助金)は令和7年(2025年)から新たにスタートした補助金です。
これは、中小企業等が新しい領域の事業に進出する際の投資を後押しするための補助金制度になります。今後、新分野で投資を行い事業の拡大を検討している事業者には、中小企業新事業進出促進補助金は力強い支援制度になるでしょう。
本記事では、中小企業新事業進出促進補助金2025について、その概要や実施スケジュールなど、詳しく解説します。
目次
- 中小企業新事業進出促進補助金2025とは?
- 中小企業新事業進出促進補助金2025の概要
- 中小企業新事業進出促進補助金の「新事業進出」に関する3つの要件
- 中小企業新事業進出促進補助金の「付加価値額要件」及び「賃上げ要件」
- 「事業所内最賃水準要件」及び「大幅賃上げ特例要件」
- 新事業進出補助金に係る新市場・高付加価値事業の考え方及び採択事例
- 中小企業新事業進出促進補助金2025の実施スケジュール
- 中小企業新事業進出促進補助金2025に係る疑問点
- 「新事業進出」要件の「製品等の新規性・市場の新規性」と補助事業の審査項目「新市場性・高付加価値性」の違いは?
- まとめ
中小企業新事業進出促進補助金2025とは?

中小企業新事業進出促進補助金2025は、令和7年(2025年)に新設された新しい補助金制度です。「令和6年度補正予算(案)」にて、「持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援」のひとつとして創設されました。
本補助金の目的は、中小企業等が行う既存事業と異なる新分野の事業への挑戦において、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことにあります。
公募については、すでに第1回目が公表されていますが、今後の予定については、令和8年度末(2026年3月31日)までに、公募回数4回、採択予定件数6,000件程度が見込まれています。
中小企業新事業進出促進補助金2025の概要
中小企業新事業進出促進補助金2025の概要は以下の通りです。
補助上限額は従業員数によって変わり、最大で2,500万円~7,000万円、下限はいずれも750万円で、さらに「大幅賃上げ特例」を適用すれば、補助上限額が3,000万円~9,000万円に引上げられます。
補助対象経費も幅広く設定されており、新事業進出に必要な建物費(建設・改修等)も含まれています。また本補助金の申請要件は、新事業進出要件、付加価値額要件、賃上げ要件等あり、全て満たす必要があります。
これらの要件は、「新事業進出」「高付加価値」「賃上げ」という本補助金の政策目標に基づき設定されています。

(※1)必ず「金融機関による確認書」の提出が必要です。ただし金融機関等からの資金提供を受けず、自己資金のみで補助事業を実施する場合は不要です。
(※2)中小企業の持続的な競争力強化を支援することが目的のため、対象経費には、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかを含むことが必須になります。
参照先:中小企業新事業進出促進補助金公募要領第1回|独立行政法人中小企業基盤整備機構
中小企業新事業進出促進補助金の「新事業進出」に関する3つの要件
補助事業に係り、全ての対象者が満たすべき5つの基本要件のうち、「新事業進出」要件は、本補助金を申請し採択されるための重要要件です。
「新事業進出」要件を満たすためには、新事業進出指針で示された以下の3要件を全て満たした事業計画書を策定する必要があります。
| 新事業進出要件 | 内容 |
| 製品等の新規性 | 新たに製造等する製品等が新規性を有するものであること |
| 市場の新規性 | 新たに製造等する製品等の属する市場が新たな市場(既存事業とは異なる顧客層)であること |
| 新市場売上高 | 新たな製品等の売上高(または付加価値額)が、応募申請時の総売上高の10%(または総付加価値額の15%)以上となること |
以下、上記3要件についてさらに詳しく解説します。
製品等の新規性
製品等の新規性とは、事業者が過去に製品として製造するか、サービスとして提供したことのない製品・サービスであることを指します。またここで求められているのは、あくまで事業者にとっての新規性であって、日本初とか、世界初のような世の中全体に対する新規性を意味しませんのでご注意下さい。
さらに容易な改変、単なる組み合わせ等による新製品・サービスは審査での評価が低くなる可能性が高いです。
市場の新規性
市場の新規性とは、新たに製造・提供される製品・サービスが、既存事業とは異なるニーズ・属性(法人や個人、業種、行動特性等)を持つ顧客層に向けて提供されることをいいます。
新市場売上高
新市場売上高では、目標値として、補助対象での新規事業の売上高が総売上高(応募申請時)の10%以上、または付加価値額が総付加価値総額の15%以上となる事業計画書を策定することが要件になっています。
そのため事業計画では、収支計画表の数字に関して算出根拠となる各種資料を添付して策定・提出するとともに、達成のための具体的な取り組みについてできるだけ詳しく記載する必要があります。
中小企業新事業進出促進補助金の「付加価値額要件」及び「賃上げ要件」
中小企業新事業進出促進補助金では、政策目標から、上記で解説した新事業進出要件を満たした上で、さらに「付加価値額要件」及び「賃上げ要件」を満たすことが求められます。
以下、「付加価値額要件」及び「賃上げ要件」について、より詳しく解説します。
付加価値額要件
付加価値額要件では、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率で4%以上増加させることが求められます。
目標値が他の補助金目標と比べて比較的高く設定されているのは、新市場・高付加価値事業への進出を後押しし、付加価値向上を通じた生産性向上を図ることを目的としているからです。
賃上げ要件
賃上げ要件では、以下の2つの項目のうち、いずれかの基準を満たす必要があります。
- 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
- 給与支給総額全体の年平均成長率が+2.5%以上
どちらか一つの目標を達成すれば要件は満たされますが、未達成の場合は未達成率に応じて補助金の返還が必要になります。
「事業所内最賃水準要件」及び「大幅賃上げ特例要件」
中小企業新事業進出促進補助金では、基本要件としてさらに「事業所内最賃水準要件」を満たすことや、補助金の上乗せを必要とする補助事業者には以下の条件を満たす必要があります。
事業所内最賃水準要件
事業所内最賃水準要件では、事業所内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準であることが求められます。また上記、賃上げ要件と同じく、未達成の場合は未達成率に応じて補助金の返還が必要になります。
大幅賃上げ特例要件
大幅賃上げ特例要件とは、補助上限額の引き上げ(上乗せ)に係る要件のことです。
補助事業実施期間内に以下の双方の要件を達成することで上乗せ分(3,000万円~9,000万円)の補助金の支給が受けられます。
- 給与支給総額の年平均成長率が+6.0%以上
- 事業場内最低賃金の年額上昇が+50円以上
ここでの注意点は、賃上げ要件と異なり、本件では受給に係り上記2つの条件を同時に満たさねばならない点です。もちろん未達成の場合は、補助金の返還義務が発生します。
新事業進出補助金に係る新市場・高付加価値事業の考え方及び採択事例

中小企業新事業進出促進補助金、通称「新事業進出補助金」については、新市場・高付加価値事業という概念が入っています。
本補助金を申請する事業者は「新規事業の新市場性・高付加価値性」の内容をきちんと理解していないと、間違った事業計画を策定してしまうばかりか、いくら手間と時間をかけて申請までこぎつけても採択されない可能性も高いです。
そこで中小企業庁・中小企業基盤整備機構が令和7年4月に発行している「新市場・高付加価値事業の考え方」という資料があります。この資料において、「新市場性」及び「高付加価値性」の基本的な考え方、及び採択事例が示されています。
今回の記事では以下の参照先のみ紹介しますが、事業計画を策定する際には、必ず事前にアクセスして、「新市場性」「高付加価値性」について理解した上で必要書類を策定されることをおすすめします。
ただし本資料に示されている事例と同じ内容の計画を策定しても、むしろ審査等で安易と判断され不採択とされる可能性も高いです。そのため、基本は押えつつも、あくまで各社オリジナルで合理的かつ説得力ある事業計画を立てられるよう務めて下さい。
参照先:新市場・高付加価値事業の基本的な考え方|中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構
中小企業新事業進出促進補助金2025の実施スケジュール
2025年11月現在、本補助金の第2回目の公募スケジュールが公開されています。
以下がその実施スケジュールです。
- 公募開始:令和7年9月12日(金)
- 申請受付:令和7年11月10日(月)
- 応募締切:令和7年12月19日(金)18:00まで
第3回公募は、12月中に予定されています。最新スケジュールについては、新事業進出促進事務局の公募スケジュールをご確認ください。
中小企業新事業進出促進補助金2025に係る疑問点
中小企業新事業進出促進補助金2025は新しい補助金だけに、申請時や補助事業実施期間中にも様々な疑問が思い浮かぶと考えます。
不明な点については、もちろん都度、身近にいる公認会計士や税理士等の専門家に相談することも大事です。一方で、新事業進出促進補助金事務局でも公式サイトの「よくある質問コーナー」で補助事業者の様々な疑問に項目別に答えています。
具体的には「補助対象者」「申請要件」「新事業進出指針全般」「補助対象経費」「申請手続き」「補助金交付候補者の採択後の手続き」「その他」などです。
以下で代表的な質問を3つほど取り上げ解説しますが、「よくある質問コーナー」もかなり細かく整理されているので、疑問点があるなら、ぜひ事業者自ら検索して理解されるようおすすめします。
参照先:よくある質問:中小企業新事業進出補助金|経済産業省・中小企業庁・中小機構
「新事業進出」要件の「製品等の新規性・市場の新規性」と補助事業の審査項目「新市場性・高付加価値性」の違いは?
新事業進出補助金では、補助事業の「新市場性・高付加価値性」が審査項目になっています。
これに係り、新事業進出要件の「製品等の新規性・市場の新規性」との違いがよく分からないという質問が事務局によく寄せられているそうです。
そこで以下で両者の違いをまとめてみました。
| 製品等の新規性(新事業進出要件) | 自社における新たな製品・サービス |
| 市場の新規性(新事業進出要件) | 自社における新たな市場(既存事業とは異なる顧客層) |
| 新市場性(審査項目) | 社会にとって新規性を有する(普及度や認知度が低い)新たな製品・サービス |
| 高付加価値性(審査項目) | 一般的な付加価値や相場価格と比べた時の高付加価値(価格・機能等) |
上記一覧表の比較でもわかるように、新事業進出要件(製品等の新規性・市場の新規性)では「自社」が基準になっています。
一方、審査項目である新市場性は「社会全体」が、高付加価値性では「一般的な付加価値や相場価格」が基準となっており、「自社」とは基準自体が大きく異なっています。
また新事業進出要件の「製品等の新規性・市場の新規性」は双方とも満たす必要がありますが、審査項目の「新市場性・高付加価値性」は、いずれか事務局において「満たしている」と認められれば審査で評価されるという点でも違いが明らかです。
すでに自社で製造している製品の増産のみ行う場合、申請できるか?
補助事業の対象外とされ申請できません。本補助金は既存事業とは異なる新事業の進出を目的としているため、既存の製品等の製造量または提供量を増大させるケースは、新事業進出の要件(製品等の新規性要件)に該当しないとされています。
建物の建設契約を応募の申請前にしたとき、補助の対象になるか?
応募申請時、すでに契約・発注済みの経費に関しては補助の対象にはなりません。補助対象となる経費は、交付決定日から補助事業実施期間までの期間に発注及び契約し、検収・支払いを完了させた経費のみに限られます。
着手金や中間払い含む分割払いの場合も、全ての支払いを上記の補助事業実施期間内に完了しないと補助金は受けられませんのでご注意ください。
まとめ
中小企業新事業進出促進補助金2025について、その概要や実施スケジュール、疑問点など詳しく解説しました。中小企業新事業進出促進補助金は、新市場性・高付加価値事業への進出に取り組む中小企業等を資金面からサポートする補助金制度です。
申請には一定の要件を満たすため、事前の入念な準備が必要ですが、採択されれば最大で9,000万円の補助が受けられます。
それだけに事業者として新事業進出補助金は事業拡大・新市場進出への大きな後押しとなります。新事業進出補助金はすでに第1回公募が開始中ですが、今後も継続的な実施が見込まれています。
今後、本補助金の申請を検討中、または申請予定の方は、本記事も参考にして、今後発表される情報を随時チェックしつつ事前準備を進めておきましょう。
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