中小企業倒産防止共済制度の改正<税理士事務所 四方山話vol.02>
本コラムでは、日常の業務を通じて遭遇するお客様の反応や現場での出来事など身近なトピックに焦点を当てます。セミナーや研修で講師を務める経験豊富な江﨑光行先生がこれらの話題をわかりやすくそして実用的なアドバイスを交えて解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.130(2024.8)に掲載されたものです。
江﨑光行税理士事務所 所長・税理士
江﨑 光行 先生
「倒産防止共済って損金算入できなくなるの?」
お客様からこんなご質問がありました。
倒産防止共済について、令和6年度税制改正において、改正がありました。倒産防止共済法の共済契約の解除があった後、再度共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については、損金算入、必要経費算入ができなくなることとなりました。この改正は令和6年10月1日以後の共済契約の解除から適用されます。
倒産防止共済とは、取引先企業が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内(最高8,000万円)で共済金の「貸付け」が受けられる中小企業倒産防止共済法に基づいた共済制度です。
掛金月額は5,000円から200,000円までの範囲内で5,000円刻みで自由に選べます。(掛金総額の積立限度額は800万円)。掛金は会社等の法人の場合は税法上の損金、個人事業の場合は事業所得の必要経費に算入できます。
解除した場合、40か月以上納付していると、掛金の100%が戻ってきます。なお、解除した時点で益金の額、又は収入金額に算入されます。倒産防止共済は連鎖倒産を防止することを目的とした制度ですが、その掛け金が全額損金になることから、課税の繰り延べとした節税を目的とした加入を主とするケースが多かったものと思われます。
中小企業庁が公表した「中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用への対応について」によれば、令和2年から令和4年について、加入者全体の内、再加入者が15.7%を占め、再加入者の内、解除後2年未満に再加入する者は82.7%を占めていたとのことです。
節税を目的として、このような脱退と再加入を繰り返すことは、本来の制度趣旨にそぐわないということで、今回の改正となったようです。経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済の愛称)のパンフレットには掛金は損金、必要経費になると記載されており、加入への動機付けとしていたように思うのですが。
なお、冒頭のお客様はどんな場合でも損金算入できなくなると思いこまれていたようですが、そうではない旨をお伝えしました。お話を聞いていると、知り合いの社長がYouTubeで見たという内容をお客様が誤って認識され、上記のように、どのような場合でも損金算入不可となるのではというご質問になったようです。
今回の中小企業倒産防止共済の改正も驚きですが、お客様のご質問の出どころもYouTubeというのも驚かされます。お客様が、インターネットなどで情報を入手しやすくなった一方で、誤って認識されてしまうケースもあります。先回りして情報提供を行っていく必要がありますね。
江﨑 光行
えざき・みつゆき/江﨑光行税理士事務所 所長・税理士
大原簿記学校税理士講座講師、税理士法人古田土会計、川鍋直則税理士事務所を経て独立。
現在は、月次決算書、経営計画書の作成指導経験を踏まえ、
ビズアップ総研アシスタント養成講座などでセミナー講師を務める。