不動産収入で確定申告は必要?会社員・専業別の申告が必要なケースを解説
マンションやアパート、戸建てなどを貸して家賃収入を得ている場合、「少額でも確定申告が必要なのか」「会社員なら20万円以下は申告しなくてよいのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
不動産収入があるからといって、必ず所得税の確定申告が必要になるわけではありません。一方で、家賃収入そのものではなく、必要経費を差し引いた「不動産所得」や、給与など他の所得との関係によって申告の要否が変わります。
特に注意したいのが、「会社員は20万円」「専業なら○万円」といった金額だけで判断してしまうことです。20万円ルールは一定の給与所得者に対する特例であり、誰にでも適用される基準ではありません。
この記事では、不動産収入がある場合に確定申告が必要になるケースと不要になるケースを中心に、判断するときのポイントを整理します。
まず確認したい「不動産収入」と「不動産所得」の違い

確定申告が必要かどうかを考える前に、「収入」と「所得」を分けて考える必要があります。
不動産所得は、原則として次の式で計算します。
不動産所得 = 不動産の総収入金額 − 必要経費
国税庁によると、不動産所得には土地や建物などの貸付けから生じる所得が該当します。総収入金額には家賃のほか、更新料や返還を要しない敷金・保証金、共益費なども含まれる場合があります。(参照:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) | 国税庁)
たとえば年間の家賃収入が120万円あっても、固定資産税、管理費、修繕費、減価償却費などの必要経費が70万円あれば、不動産所得は50万円です。確定申告の要否を判断するときに見るのは、原則として家賃収入の総額ではなく、この不動産所得の金額です。
不動産収入で確定申告が必要になるのはどんな場合?
確定申告が必要かどうかは、その人が会社員なのか、不動産所得を中心に生活しているのか、ほかにどのような所得があるのかによって変わります。
特に会社員の場合には、一定の条件を満たすと「20万円以下なら所得税の確定申告をしなくてもよい」というルールがあります。
会社員で不動産所得が20万円を超える場合
1か所から給与を受け取り、その給与が源泉徴収の対象で、給与収入が2,000万円以下である給与所得者については、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。
たとえば、
- 給与所得:会社で年末調整済み
- 不動産収入:年間100万円
- 必要経費:年間60万円
- 不動産所得:40万円
という場合、不動産所得が20万円を超えているため、原則として所得税の確定申告が必要です。
ここでいう20万円は「家賃収入20万円」ではありません。家賃等の収入から必要経費を差し引いた不動産所得など、給与・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えるかで判定します。
会社員で不動産所得が20万円以下の場合
一定の給与所得者で、給与所得・退職所得以外の所得が合計20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告を省略できます。たとえば、不動産所得が15万円で、ほかに副業所得などがなければ、一定の要件のもとで所得税の確定申告が不要となる場合があります。
ただし、この「20万円ルール」はあくまで一定の給与所得者に対する確定申告不要制度です。「所得が20万円以下なら誰でも申告不要」という意味ではありません。また、医療費控除などを受けるために確定申告をする場合は、20万円以下の不動産所得についても含めて申告する必要があります。
給与がない人・不動産所得が主な収入の場合
不動産所得を主な収入としている人については、「不動産所得が○万円を超えれば申告」という一律の基準で判断するのは適切ではありません。
原則として、
各種所得の合計額 − 所得控除
によって課税所得を計算し、その後に所得税額や税額控除を計算して、納付すべき所得税が残るかどうかで確定申告の要否を判断します。
以前は「基礎控除48万円」が広く使われていたため、「不動産所得48万円以下なら申告不要」と説明されることもありました。
しかし、基礎控除額は税制改正によって変更されており、2026年分の所得税では基礎控除が改正され、合計所得金額に応じて最大104万円となっています。また、社会保険料控除、扶養控除、生命保険料控除など、基礎控除以外の所得控除もあります。
したがって、不動産所得だけで生活している人については、「48万円」「58万円」など一つの金額だけを申告ラインとして覚えるのではなく、所得控除を含めて税額が発生するか確認することが重要です。(参照:No.1199 基礎控除 | 国税庁、確定申告が必要な方 | 国税庁)
「20万円以下なら何もしなくてよい」とは限らない
会社員の不動産所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要となる場合でも、もう一つ注意したいのが住民税です。所得税には一定の給与所得者について20万円以下の申告不要制度がありますが、住民税には同じ仕組みがありません。
たとえば、さいたま市では、副業所得が20万円以下で所得税の確定申告を行わない場合でも、原則として市民税・県民税の申告が必要と案内しています。(参照:副業の所得が20万円以下の場合でも申告は必要ですか? | さいたま市)
自治体によって具体的な申告方法は異なるため、所得税の確定申告をしない場合は、住所地の市区町村で住民税の申告要否を確認しましょう。
不動産所得が赤字なら確定申告は不要?
不動産所得が赤字で所得税の納付額が増えない場合、確定申告義務が生じないケースもあります。
ただし、申告義務がないことと、申告する意味がないことは別です。不動産所得の赤字は、一定の場合に給与所得など他の所得と損益通算できます。会社員であれば、不動産所得の赤字を給与所得などから差し引くことで、すでに源泉徴収された所得税が還付される場合があります。
ただし、不動産所得の赤字であれば全額を必ず給与所得と相殺できるわけではありません。たとえば、土地を取得するための借入金利子に相当する部分などは、損益通算の対象になりません。「不動産所得が赤字だから給与と全額相殺できる」と単純に判断しないことが大切です。
不動産所得の計算で必要経費になる主なもの
不動産所得の金額は、家賃などの収入から必要経費を差し引いて計算します。
国税庁が主な必要経費として挙げているのは、次のようなものです。
| 主な必要経費 | 内容 |
| 固定資産税 | 賃貸している土地・建物にかかるもの |
| 損害保険料 | 賃貸物件に関する火災保険料など |
| 減価償却費 | 建物・設備などの取得費を一定期間で費用化するもの |
| 修繕費 | 通常の維持管理・原状回復などにかかる費用 |
| 管理委託費 | 管理会社に支払う管理手数料など |
| 借入金利子 | 賃貸用不動産取得のための借入金利子など |
ただし、支出したものがすべて必要経費になるわけではありません。
国税庁は、不動産収入を得るために直接必要で、家事上の経費と明確に区分できるものを必要経費としています。また、ローン返済額のうち元本部分は必要経費ではありません。建物の取得費なども、その年に全額を必要経費にするのではなく、原則として減価償却によって各年に配分します。
「5棟10室」と確定申告の必要性は別の話

不動産所得では、「5棟10室」という言葉を聞くことがあります。これは、戸建てでおおむね5棟以上、アパート等でおおむね10室以上といった基準から、不動産貸付けが「事業的規模」に当たるかを判断する際に使われる目安です。
事業的規模かどうかと、確定申告が必要かは別なことには注意が必要です。1室だけの区分マンションを貸している会社員であっても、不動産所得が一定額を超えれば確定申告が必要になることがあります。
反対に、事業的規模であっても、所得や控除の状況によって税額計算は異なります。事業的規模かどうかは、青色申告特別控除など一部の税務上の取扱いに影響します。青色申告特別控除についても、最大65万円が自動的に適用されるわけではなく、事業的規模、複式簿記、期限内申告、e-Tax等の要件があります。
そのため「5棟10室未満だから確定申告はいらない」という判断はできません。
不動産を売却した収入は「不動産所得」ではない
もう一つ混同しやすいのが、不動産の賃貸と売却です。賃貸によって得る家賃などは原則として不動産所得になりますが、土地や建物を売却して生じた所得は、通常は譲渡所得として扱われます。
不動産所得は総合課税ですが、不動産の譲渡所得は別の計算方法となるため、家賃収入と同じ扱いではありません。国税庁も、不動産所得について「事業所得または譲渡所得に該当するものを除く」としています。「不動産からお金を得た」という点だけで、すべて不動産所得として処理しないよう注意しましょう。
確定申告が必要か迷ったときの判断フロー
不動産収入がある場合は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 年間の不動産収入を集計する:家賃だけでなく、共益費、更新料、返還不要の敷金なども確認します。
- 必要経費を差し引いて不動産所得を計算する:固定資産税や管理委託費、修繕費、減価償却費などを集計します。
- 給与など他の所得があるか確認する:会社員で一定の条件を満たす場合は、給与・退職所得以外の所得が20万円を超えるかが一つの判断基準になります。
- 所得控除や他の申告理由を確認する:不動産所得を主な収入としている場合は、各種所得と所得控除を踏まえて税額を計算します。また、医療費控除などで確定申告をする場合には、20万円以下の不動産所得も申告対象になります。
- 所得税の申告が不要でも住民税を確認する:20万円以下の申告不要制度を利用した場合などは、市区町村への住民税申告が必要になることがあります。
確定申告が必要なのに申告しなかった場合
確定申告義務があるにもかかわらず期限までに申告しなかった場合は、本来の所得税に加えて、無申告加算税や延滞税が課されることがあります。
2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、税務調査後など一定の場合の無申告加算税は、納付すべき税額のうち50万円までの部分が15%、50万円超300万円までが20%、300万円超の部分が30%となります。状況によって加算割合や取扱いは異なります。(参照:No.2024 確定申告を忘れたとき | 国税庁)
まとめ:不動産収入があれば「所得」を計算して申告要否を確認する
不動産収入がある場合、確定申告が必要かどうかは、家賃収入の金額だけでは判断できません。
また、不動産所得を主な収入としている人については、「所得が○万円を超えたら申告」という一律の基準ではなく、所得控除などを反映した税額計算によって申告義務を判断します。
不動産収入を得たら、まず確認したいのは、「年間の家賃はいくらだったか」ではなく、「不動産所得はいくらになり、自分のほかの所得や控除を含めると確定申告が必要になるか」という点です。
この考え方を押さえておけば、「会社員は20万円」「専業は○万円」といった単純な数字だけに頼らず、自分の状況に合わせて申告の要否を判断しやすくなります。
オンライン研修・eラーニング
e-JINZAIで
社員スキルUP!
- e-JINZAI for account(会計事務所向け)
- e-JINZAI for business(一般企業・団体向け)
- 今ならe-JINZAIを2週間無料でお試しいただけます!
税理士.ch 編集部
税理士チャンネルでは、業界のプロフェッショナルによる連載から
最新の税制まで、税理士・会計士のためのお役立ち情報を多数掲載しています。
運営会社:株式会社ビズアップ総研
公式HP:https://www.bmc-net.jp/

