中小企業の法人税率の軽減措置とは?特例の対象になる企業や計算方法も解説

法人税の法人税率は、23.2%となっています。ただ、資本金の額が1億円以下などの条件を満たしている中小企業については、年間所得800万円以下の部分について15%となる軽減措置が設けられています。
中小企業の法人税率の軽減措置とは、どのような制度なのか。また、軽減税率は15%、17%、19%の3種類がありますが、具体的にどの税率が適用されるのかについて解説します。
目次
- 法人税率とは
- 中小企業の法人税率の軽減とは?
- 中小企業者等の法人税率の特例の対象になる企業
- 法人税率の軽減税率は15%、17%、19%のどれなのか?
- 法人税の計算例
- 中小企業の法人税の軽減税率の適用を受けるには?
- 法人の実効税率とは?
- 中小企業の法人税の軽減税率以外の節税方法とは?
- まとめ
法人税率とは

個人の所得には所得税が課税されますが、法人向けの税金のことを法人税と言います。
法人税率とは、法人の所得に対して課税される法人税(国税)の税率のことです。所得税は所得に応じた累進課税制になっています。
例えば、課税される所得金額が1,000円 から194万9,000円までであれば、所得税の税率は5%になります。一方、4,000万円以上の場合は、所得税の税率は45%に跳ね上がってしまいます。また、法人税の場合は、税率が一律に決められており、原則として23.2%となっています。
そのため、個人事業主などで所得が一定以上になった場合は、法人化(法人成り)することで節税できると言われているわけです。
中小企業の法人税率の軽減とは?
中小企業の法人税率は特例により低く設定されています。原則として法人税率は23.2%となるところ、年800万円以下の部分については、特例により15%(本則19%)になるという制度です。
各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下である普通法人がこの特例の対象となっています。
中小企業者等の法人税率の特例の対象になる企業
ただ、資本金の額が1億円以下なら、どのような会社でも、法人税率の特例を受けられるわけではありません。まず、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は対象外となります。
また、次の法人も対象外となっています。
- 相互会社
- 大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
- 100%グループ内の複数の大法人に株式の全部を直接又は間接に保有されている普通法人
- 投資法人
- 特定目的会社
- 受託法人
なお、上記の大法人とは次のいずれかに該当する法人のことです。
- 資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人
- 相互会社および外国相互会社
- 受託法人
法人税率の軽減税率は15%、17%、19%のどれなのか?
年800万円以下の部分に適用される法人税率の軽減税率は、15%、17%、19%の3種類があります。そのうちどれが適用されるのか分からず混乱してしまうこともあるようです。
19%は本則
まず、19%の税率は、本則といい、本来の税率のことです。
つまり、資本金の額が1億円以下である普通法人なら、年800万円以下の部分については原則として、19%の税率で計算されることになっているわけです。
15%は期間限定の軽減税率
現在は、本則の19%よりもさらに軽減された15%の税率が適用されています。税率が15%となるのは、期間限定の措置で、2026年度末(2027年3月31日)までが適用期限となっています。
税制改正によりこの期間限定の措置が延長されない限り、2027年度からは、本則の19%が課税されることになります。
17%は所得が多い中小法人向けの税率
資本金の額が1億円以下でも、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人はもともと軽減税率の対象となっていません。
原則通り、すべての所得が、23.2%の税率で法人税が課税されます。これに準じる所得を有する法人については、期間限定の軽減税率が15%ではなく、17%になっています。
具体的には、「単年所得10億円超」の中小法人です。
法人税の計算例

中小企業が法人税率の軽減措置を受ける場合、具体的にどのように法人税を計算するのでしょうか。
ここでは、資本金の額が1億円超の株式会社と法人税率の軽減措置を受ける中小企業とで、どのように異なるのか具体的に見てみましょう。
法人税率の違いを比較するため、両者とも年間所得2,000万円で試算しています。
資本金の額が1億円超の株式会社の法人税の計算
年間所得:2,000万円
| 区分 | 計算式 | 法人税額 |
| 全所得 | 2,000万円 × 23.2% | 464万円 |
中小企業(資本金の額が1億円以下の株式会社)の法人税の計算
年間所得:2,000万円
| 区分 | 計算式 | 法人税額 |
| 年800万円以下の部分 | 800万円 × 15% | 120万円 |
| 年800万円超の部分 | 1,200万円 × 23.2% | 278万4,000円 |
| 合計 | 120万円 + 278万4,000円 | 398万4,000円 |
このケースでは、同じ年間所得2,000万円であっても、中小法人の軽減措置を活用することで、資本金の額が1億円超の株式会社に比べて65万6,000円(4,64万円 − 398万4,000円)の税負担が軽減されることがわかります。
中小企業の法人税の軽減税率の適用を受けるには?
中小企業の法人税の軽減税率の適用を受けるには、事前に特別な届出や手続きを行う必要はありません。法人税の申告を行う際に、「適用額明細書」を添付して税務署に提出するだけで足ります。
法人の実効税率とは?
会社が支払う税金は国税としての法人税だけではありません。法人税を元に次の3つの税金も支払うことになります。
- 地方法人税(国税):法人税額を課税標準として10.3%を乗じて計算する国税です。
- 法人住民税(地方税):事業所がある自治体に支払う税金です。均等割と法人税割があります。
- 法人事業税(地方税):事業を行うことに対して支払う税金です。付加価値割・資本割・所得割・収入割の4種類があり、法人の規模や業種により異なります。
国税としての法人税と上記3つの税金を合算した税率を「法定実効税率」と言います。法定実効税率は、企業ごとに異なりますが、約30〜34%程度とされています。
中小企業の法人税の軽減税率以外の節税方法とは?
中小企業にとっては、法人税の軽減税率の適用を受けることにより、かなりの節税が期待できます。ただ、これだけでは、十分な節税ができているとは言えません。
中小企業には、その他にも様々な特例が適用されるので、取りこぼさないようにすることが大切です。
欠損金の繰越控除
欠損金の繰越控除とは、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額を10年間繰り越すことができる制度です。繰り越した欠損金を次の年度以降に損金の額に算入できることから、税負担を軽減できる制度となっています。
算入できる損金の額の範囲については企業規模により異なります。大法人などは、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得金額に対して100分の50までしか認められていません。
それに対して、中小法人等については、所得金額のすべてについて、損金の額に算入することができます。
交際費等の損金不算入の特例
交際費等とは、取引先の接待等に使う費用のことで、交際費、接待費、機密費などのことです。
交際費等は、原則として、損金に算入することは認められていません。ただ、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人については、損金不算入額について特例が設けられています。
損金不算入となるのは次のいずれかの金額です。
- 交際費等の額のうち、飲食等に要する費用の50%を超える部分の金額
- 800万円にその事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額(定額控除限度額)を超える部分の金額
一般的には、交際費等は、すべて損金不算入とされているところ、中小法人にとっては有利な制度と言えます。
少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
減価償却資産は、原則として10万円未満までなら、全額を即時損金算入することができます。
一方、中小企業者等については、40万円未満までであれば、全額を即時損金算入することができる特例があります。この特例の対象となるのは、常時使用する従業員の数が400名以下の中小企業者、または出資金等が1億円超の組合等については300名以下の場合です。
なお、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円までが限度となります。
この特例を受けるためには、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要があります。
まとめ
中小企業の法人税率の軽減措置とはどのような制度なのか、具体的な計算方法や制度の利用方法について解説しました。中小企業は、税制面で様々な特例を受けられることが多いです。
企業の税務、経理の担当者の方はもちろんですが、これから起業を志している方も、中小企業に適用される税制面の様々な特例制度について、一通りの知識を身に着けておきましょう。
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