【令和7年税制改正】固定資産税の特例措置の延長等とは?企業のメリットと留意点

令和7年税制改正における重要な施策のひとつとして、「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置の延長等」が挙げられます。しかし、この税制改正は中小企業にとってどのようなメリットがあるのかや、特例措置の背景や目的を具体的に把握したい方も多いのではないでしょうか。
本記事では、税制改正の概要や特例措置の内容、企業にとってのメリット、留意点について詳しく説明します。
目次
固定資産税の特例措置の概要

令和7年税制改正の固定資産税の特例措置の延長等は、どのような内容であり、どのような目的があるのか、概要を把握しておくことが大切です。最初に、生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置の延長等について基本概要を解説します。
特例措置の概要
令和7年税制「固定資産税の特例措置」は、一定の要件を満たした設備投資を行った中小企業に対し、固定資産税の税額を軽減する制度です。通常、固定資産税は設備の取得価格に基づいて課税されますが、本制度を利用することで対象となる設備の固定資産税が一定割合減額される仕組みです。
対象となる設備は、主に機械装置や器具備品、建物附属設備などであり、企業の生産性向上につながる投資となるでしょう。
特例措置の目的とは
特例措置によって、持続できるような経営の基礎を造ることが期待されています。適用を受けるためには、企業は地方自治体の認定を受けなければなりません。事前に投資計画を策定して認定を受けたうえで、制度を活用することが求められます。
手続きが必要な理由は、中小企業が無計画に投資を行うのではなく、計画的な設備導入を促進するためのものです。つまり、持続できるような経営基盤の形成が期待できます。
固定資産税特例措置の延長の背景
令和7年税制改正における税制改正において、中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置の延長等が行われる背景には、国内の中小企業の設備投資に対する意識を高め、経済全体の成長を促進する狙いがあります。
近年では、労働者不足や原材料の高騰などの経営環境の変化に対応するために、企業の生産性向上が必須です。しかし、多くの中小企業にとって新しい設備投資を行うことは大きな負担であり、十分な資金の確保が難しいケースも少なくありません。そのため、税制面からサポートを行い、企業の投資を促すことで、経営の土台の強化を行うことが目的です。
また、特例措置は賃上げにもつなげる狙いもあります。設備投資によって業務の効率化が進めば、企業の収益力が向上し、従業員へ給与として還元されるためです。これにより、優秀な人材の確保や職場への定着率の向上につながり、企業の成長をさらに促進するという良い循環が生まれる可能性があります。
固定資産税の特例措置の延長等によるメリット
令和7年税制改正において、生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置が延長されることは、多くの企業にとってメリットがあります。ここでは、特例措置の適用によって中小企業が得られるメリットを紹介します。
設備投資の促進
固定資産税の特例措置の延長等によるメリットのひとつは、企業が積極的に設備投資を行いやすくなる点です。企業の設備が古くなれば生産性は低下し、効率的な業務運営が難しくなります。また、老朽化した設備では新しい技術を取り入れることができず、企業の競争力が落ちる危険性もあるでしょう。
しかし、税制優遇措置を活用することで、最新の設備を導入するための費用負担が少なく成り、企業は早い段階で新しい設備の導入を進められます。結果として、業務効率の向上や生産コストの削減が期待でき、企業の競争力が強化されるといえるでしょう。
競争力の向上
新たな設備投資を行うことで、製品の多様化が進み、新しい市場にも進出できる可能性が広がります。特に、顧客の需要が多様化している現代では、柔軟に対応できる生産体制を整えることは競争力を保つために必須です。設備投資は、生産体制を築くためのきっかけとなります。
また、新しい設備を導入することによって生産性が向上します。例えば、製造業であれば古い機械による生産ラインでは生産効率が低下し、コストが増加するケースは少なくありません。しかし、最新設備によって無駄なコストが削減されるだけではなく、生産工程の品質が向上するため、企業全体の品質管理も強化されます。加えて、他の企業と差別化を図る効果が期待できるでしょう。
賃上げにつながる
設備投資による業務効率化によるメリットとして、賃上げにつながることも挙げられます。設備が新しくなり業務効率が向上すれば、企業の収益も向上します。結果、企業は従業員への還元を積極的に行いやすくなり、賃金の引き上げや福利厚生を充実させられるでしょう。従業員の業務に対するモチベーションが上がり、企業への満足度も向上します。
また、業務効率化が進むことによって従業員の負担が軽減され、より仕事に集中できる環境が整います。従業員の仕事への充実感が高まり、労働生産性の向上にもつながることがメリットです。
デジタル化・グリーン投資の促進
デジタル化の進展は、企業の業務効率化を進めるだけではなく、新たなビジネスへの展開を促進します。例えば、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用した生産設備の導入が挙げられます。また、環境に配慮したグリーン投資(設備投資)を検討できることもメリットです。
エネルギー効率の高い設備を導入することで、エネルギーコストの削減と、環境への負荷を軽減できます。消費者や投資家も環境への意識の高い企業を支持する傾向にあるため、グリーン投資は企業ブランドの強化にもつながるでしょう。
固定資産税特例措置の適用条件と留意点

令和7年税制改正において、中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置の延長等の適用対象となるためには、条件を満たす必要があります。ここでは、適用条件と対象となる設備、留意点を紹介します。
特例措置の適用条件
対象となる企業は中小企業であり、具体的には資本金または従業員数が一定規模以下の企業が対象です。さらに、導入する設備が生産性向上につながるものであることが条件であり、最新の技術を活用した機械装置やエネルギー効率の高い設備などが該当します。本特例措置の対象となる設備には、一定の要件が設けられています。誤って要件を満たさない設備を導入すると税制優遇が適用されない可能性があるため、事前に確認を行うことが重要です。
地方自治体の認定を受ける
本制度の適用を受けるためには、地方自治体の認定を受けた投資計画に基づいて設備導入を行う必要があります。具体的には、事前に設備投資計画を策定し、これを地方自治体に申請したうえで、認定を受けなければなりません。そのため、手続きの締切や提出書類の不備に注意が必要です。
特例措置の適用期間
税制優遇の適用期間も重要なポイントです。本制度は一定期間の固定資産税を軽減する仕組みであり、適用期間が終了すれば通常の税負担に戻ります。そのため、企業は適用期間内にどのように投資を行い、どのように収益につなげるのかを計画的に検討しなければなりません。設備投資によるコスト削減や収益をどのように維持するかを検討し、長期的な経営戦略を取りましょう。
他の税制優遇制度と併用
中小企業向けの税制優遇制度は複数存在するため、特例措置と他の税制優遇制度が併用可能かどうかを確認することが重要です。例えば、研究開発税制や雇用促進税制と併用できる場合、より大きな節税効果を得られます。税理士と相談しながら、最適な組み合わせを検討することが大切です。
企業の経営基盤を築く特例措置を活用しよう
令和7年税制改正における「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置の延長等」は、中小企業にとって重要な支援策です。特例措置を活用することで、企業は設備投資にかかる税負担を軽減し、生産性の向上や賃上げにつながる資金を確保できます。
しかし、適用にはいくつかの条件があるため、誤りがないように準備と手続きをすることが重要です。税制改正の内容は複雑なうえ、適用期間や要件が変更されることもあり、最新の情報を正確に把握しなければなりません。設備投資を円滑に進めるためにも、税理士と連携して税制のメリットを最大限に活用しましょう。

税理士.ch 編集部
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