令和7年の税制改正|公益信託制度改革等に伴う所要の措置の概要とは?期待される効果とメリット

令和7年の税制改正では、公益信託制度改革等に伴う所要の措置が講じられ、公益活動の支援を強化するための制度見直しが進められます。特に、受託者の範囲拡大や信託財産の多様化、認可・監督の透明性向上、税制上の優遇措置などがありますが、具体的な内容、どのようなメリットがあるのかなど、改革に注目している方も多いでしょう。本記事では、公益信託制度改革等に伴う所要の措置の内容や影響について解説します。
目次
公益信託制度の背景と改革等に伴う所要の措置

公益信託制度は、公益法人とは異なり、理事会・評議員会といった組織を設けずに委託者から託された財産を受託者が管理・運営し、委託者の考えを反映した公益活動を行う仕組みです。これ自体は決して新しい制度ではなく、大正時代に誕生して以来、比較的小さな社会貢献活動の方法として役割を果たしてきました。
背景
公益信託は、公益法人と同等の機能を持ちます。しかし、主務官庁が出す許可や監督基準に統一性がないこと、税制優遇の適用要件の厳しさなどが影響し、公益法人に比べて利用が進んでいないのが現状です。そのため、令和7年税制改正の公益信託制度改革等に伴う所要の措置では、公益信託制度の全体的な見直しを実施し、更に柔軟で利用しやすい仕組みへと変えることで、民間公益活動の活発化を目指すことになりました。
措置の概要
制度の根拠法である「公益信託に関する法律」は、2026年(令和8年)4月1日に施行される予定です。また、新たな公益信託制度に関連する税制は、令和6年度税制改正で寄付金控除や譲渡所得等の非課税措置(一般承認を受けたケースに限定)など、公益法人と同等の優遇措置が整備されました。さらに、令和7年度税制改正では、令和6年度の改正で行われなかった税制優遇措置の充実が予定されています。
公益信託制度改革等に伴う所要の措置の内容
令和7年の税制改正では、4つの内容が変更されます。ここでは、公益信託制度改革等に伴う所要の措置の内容を解説します。
承認特例の対象に公益信託を追加
個人が公益法人などへ財産を贈与・遺贈した場合の譲渡所得非課税措置について、承認特例の対象範囲に公益信託の受託者への贈与等を加えることになりました。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
寄付者の制限:受託者や信託管理人(またはその理事等)及びそれらの親族等以外の者からの贈与等であること
財産の用途:一定の手続きに基づき、受託者が行う公益信託事務のための基金に組み入れられること
上記の条件を満たすと、承認特例の対象になります。
特定買換資産の特例に公益信託を追加
譲渡所得等の非課税措置における「特定買換資産の特例」に公益信託が追加されます。公益信託の受託者(信託を管理する人)が、一定の手続きを行い信託財産を公益信託の目的のために使う基金に入れる場合も、この特例の対象です。
非課税承認取消時の受託者への課税措置の整備
公益信託が非課税承認を受けた後に、承認が取り消された場合の課税方法を明確化します。具体的には、非課税承認の取消の際に発生した信託財産に係る所得について、受託者の固有財産から生じる所得とは別に区分し、適切に課税を行うことです。この措置によって、公益信託の透明性が高まり、適正な運営につながります。
非営利型法人の残余財産帰属先に公益信託を追加
法人税法における非営利型法人の要件のひとつである「残余財産の帰属先」に関する規定を改正します。公益信託の信託財産も、帰属先として認める内容に変更されます。
公益信託制度改革等に伴う所要の措置に期待できること

令和7年税制改正では、いくつかの重要なポイントを軸に進められています。ここでは、公益信託制度改革等に伴う所要の措置によって得られるメリット、期待できる変化について解説します。
受託者の範囲の拡充
これまで公益信託の受託者は、信託会社、信託銀行に限定されていました。しかし、令和7年税制改正により、既存の公益法人やNPO法人といった多様な法人・団体が受託者となります。つまり、各受託者が持つ専門性や知識を活用した公益活動の展開が期待できるでしょう。また、委託者にとっても受託者の選択肢が大幅に広がり、寄付の意向に沿った柔軟な活用ができるようになることで、公益信託の利用がより活性化していくことが期待できます。
多様な団体が受託者として公益信託の運営に関与することで、信託の透明性を高めることにもつながります。異なる立場や専門性を持つ組織が参画し、資金の管理や事業の進捗に対する監視が強化され、公平で健全な運営が実現できるでしょう。結果として、公益信託制度の信頼性が一層高まり、寄付者や受益者にとっても利用しやすい環境が整います。
また、受託者の選択肢が広がることにより、寄付者は自身の価値観や支援したい分野に応じた適切な受託者を選びやすくなることもメリットです。
例えば、環境保護を重視する寄付者が専門的な知識と経験を持つ環境NPOを受託者に選ぶことで、資金がより有効に活用され、持続可能な社会貢献へとつながるでしょう。令和7年税制改正で公益信託の利用が促進され、より多くの人が制度を活用するきっかけになるかもしれません。
税制優遇による公益信託制度の拡大
公益信託制度の改革により、税制上の優遇措置が強化され、制度の利用が一層広がることが期待されます。具体的には、寄付を行う個人や法人に対する所得税や相続税の控除が拡充されるほか、信託財産の運用益にかかる税負担の軽減も検討されています。高額資産を持つ個人や企業が公益信託を活用しやすくなり、社会貢献を目的とした資産の有効活用が進むことが期待されます。
特に、相続対策の一環として公益信託を利用するケースが増え、それに伴い、教育・福祉・環境保全などの公益活動へ流れる資金が増加する可能性が高いです。税制優遇によって公益信託が普及すれば、持続的な社会貢献の仕組みが強化されることがメリットです。
信託財産と信託事務の適用範囲の拡大
これまで公益信託で受け入れ可能な財産は、主に金銭に限定されていました。しかし、令和7年税制改正により、株式、美術品、不動産など、多様な資産も信託財産として認められるようになります。
これまでの公益信託は、信託財産が金銭に限定されていたことから、奨学金や研究費用など、財産を崩して給付する形式が主流でした。しかし、令和7年税制改正後は、学術、慈善、宗教など、幅広い公益目的で信託を活用できます。
たとえば、個人で所有していた価値がある絵画を美術館を運営している公益法人に渡し、継続的に展示することや、誰も住んでいない不動産を公益法人に委託し、支援施設として活用するといった方法です。資産の種類に応じた柔軟な公益活動が可能になり、寄付者の意向に沿った形での社会貢献をしやすくなるでしょう。さらに、長期的な視点で公益活動を継続できる仕組みが整い、公益信託の社会的役割がより一層拡大することが期待されます。
透明性が高い認可・監督制度の導入
これまでの公益信託では、活動分野ごとに各省庁が異なる基準で認可を行っており、制度の透明性が確保しにくい状態でした。令和7年税制改正では、主務官庁制がなくなり、公益法人と同じく「内閣総理大臣」もしくは「都道府県知事」が認可・監督を担う制度になります。
また、新制度では公益法人の公益認定基準と統一され、信託の運営基準が明確になり、適正な管理が可能です。公益信託制度改革等に伴う所要の措置では、申請や相談の窓口を一本化し、認可や監督の基準を統一することで、制度の透明性と利便性を高めることが期待されています。公益信託の設立に伴う手続きが簡素化され、より多くの団体や個人が活用しやすくなることがメリットです。
さらに、監督機関の役割が明確化されることで、適切な運営が確保され、公益信託全体の信頼性向上にもつながります。寄付者や受益者が信託の運営状況を把握しやすくなり、資金管理や事業運営の適正化が促されるでしょう。
制度の改革に合わせた選択が重要
公益法人制度の改革では、財務規律や行政手続の面で一定の措置が講じられました。公益法人を設立し、主体的に幅広い公益活動を行いたいという需要は、今後も続く可能性が高いです。そのため、公益法人として長期的に公益活動を継続できる仕組みが整ったことは、大きなメリットだといえるでしょう。
公益信託制度の改革により、利便性が向上することが分かり、公益活動を始める際のハードルが大幅に下がりました。「規模は小さくても社会貢献を行いたい」と考える個人や、団体の需要に応えやすくなり、公益信託が大きな注目を集める可能性があります。
いずれの制度改革も、詳細については今後の内閣府令などを確認する必要がありますが、公益活動を目指す個人や法人にとって選択肢が増えました。今後は、公益法人制度と公益信託制度の特性を比較し、活動規模や目的に応じたアドバイスが重要になるでしょう。

税理士.ch 編集部
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