【令和6年度】中小企業退職金共済制度の加入メリットは?制度概要や新規加入等掛金助成についてもわかりやすく解説
中小企業のための退職金制度である中小企業退職金共済制度(中退共)は、中小企業の従業員の雇用の安定を図り、中小企業の振興と発展に寄与することを目的として国が設立した共済制度です。
本記事では中退共の制度概要や加入のメリット・デメリット、新規加入や掛金助成についてわかりやすく解説していきます。従業員の退職金制度について悩む事業者やその担当の税理士・会計士の方は、活用方法についてぜひ本記事をご参考ください。
目次
- 中小企業退職金共済制度の概要
- 中小企業退職金共済制度の加入や掛金について
- 中小企業退職金共済制度の新規加入等掛金助成制度について
- 中小企業退職金共済制度の加入メリットについて
- 中小企業退職金共済制度のデメリットについて
- まとめ
中小企業退職金共済制度の概要
中小企業退職金共済制度は中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。
会社の代表者が契約者で、従業員が加入者となり、会社が毎月掛金を支払って従業員の退職金を積み立てていき、従業員が退職となった場合、退職金が中小企業退職金共済から直接支払われるという仕組みとなっています。
この制度は、中小企業において独自の退職金制度を持つことが困難であるという実情を受け、国が中小企業者の相互扶助の精神と国の援助のもと確立したものです。活用することで、中小企業の従業員の福祉の増進と雇用の安定を図り、ひいては中小企業の振興と発展に寄与することを目的としています。
昭和34年に設けられ、令和6年7月末現在では38万人近くの事業者が契約している歴史ある共済制度として、長年にわたり多くの中小企業に貢献しています。
(参考リンク:独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部)
中小企業退職金共済制度の加入や掛金について
ここでは、中退共の加入について、加入条件や申込方法、また掛金について解説していきます。
加入資格
加入できる企業は業種によって異なります。常時雇用する従業員数または資本金の額・出資金の総額のいずれかが以下の図の範囲内であれば加入することができます。
ただし、個人企業や公益法人等の場合は、常時雇用する従業員数によります。常時雇用する従業員には、1週間の所定労働時間が同じ企業に雇用される通常の従業員とおおむね同等である者であって、①雇用期間の定めのない者、②雇用期間が2ヶ月を超えて雇用される者 を含みます。
(参照元:中小企業退職金共済事業本部 おしえて中退共!)
掛金について
掛金月額の種類は5000円~30000円の範囲で16種類あり、事業主はこの範囲内で従業員ごとに任意に掛金を選択することができます。
また、パートタイマー等の短時間労働者は、特例として2000円、3000円、4000円の中から選択することも可能です。
毎月の掛金は事業主が指定した金融機関の預金口座から毎月18日に口座振替で納付されます。掛金は加入後「月額変更申込書」を事前に提出することでいつでも増額することができます。
減額に関してはいくつかの条件が合致した場合のみすることができます(詳細は後述の「中小企業退職金共済制度のデメリット」をご参考ください)。
加入手続きの流れ
加入手続きの流れは以下の通りです。
手続き | 内容・備考 | |
1 | 従業員の同意を得る | 原則従業員全員が加入する(一部例外あり)。 |
2 | 掛金月額を決定する | 従業員ごとに設定する。 |
3 | 必要書類に記入する | 新規加入に必要な書類は①退職金共済契約申込書(新規用)②預金口座振替依頼書 の2点。金融機関・委託事業主団体の窓口、もしくは郵送、もしくはPDF書式をダウンロードして入手する。 |
4 | 書類を提出する | 最寄りの金融機関または委託事業主団体の窓口に提出する。 |
5 | (解散存続厚生年金基金の残余財産の交付希望確認書類を返送する) | 平成26年4月1日時点で、存続厚生年金基金に加入していた事業主にのみ送付される。 |
6 | 契約の成立 | 審査手続きが完了すると、中退共本部から各従業員の「退職金共済手帳」が事業主へ送られる。金融機関または委託事業主団体の窓口に提出した日が契約成立年月日となる。 |
中小企業退職金共済制度の新規加入等掛金助成制度について
中小企業退職金共済制度には、掛金の一部を国が助成してくれる制度があります。掛金助成は、助成金を支給する方法でなく掛金から助成額を控除する方法で行われます。その場合は、掛金月額から助成額を控除した額が口座から引き落とされることとなります。
助成制度には、①新規加入時と②増額変更時の2種類があります。以下に2種類の助成内容について詳しく解説していきます。
新規加入助成について
新たに加入する事業主に、加入後4か月目から、掛金月額の2分の1(上限5,000円)を1年間国が助成するというものです。
また、短時間労働者の特例掛金(掛金月額4,000円以下)加入者については、さらに額を上乗せして助成を受けることができます(掛金月額2,000円の場合は300円、3,000円の場合は400円、4,000円の場合は500円上乗せ)。
ただし、以下に該当する事業主は新規加入助成の対象にならないので注意が必要です。
- 同居の親族のみを雇用する事業主
- 社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している事業主
- 解散存続厚生年金基金から資産移換の申出を希望する事業主
- 特定退職金共済事業を廃止した団体から資産引渡の申出を行う事業主
- 合併等に伴い企業年金から資産移換の申出を行う事業主
- 合併等に伴い中退共から企業年金へ資産を移換する目的で新たに退職金共済契約を締結した事業主であって、被共済者全員が資産移換のための契約解除をする事業主
月額変更助成について
18,000円以下の掛金月額を増額変更する場合は、増額分(過去に納付した掛金月額の最高額と増額後の掛金月額の差額)の3分の1を1年間国が助成するというものです。
20,000円以上の掛金月額からの増額は、助成の対象にはなりません。なお、月額変更助成期間中に再度、増額変更する場合には、前の「月額変更助成」は中止され、新しい「月額変更助成」が対象となります。
中小企業退職金共済制度の加入メリットについて
ここでは、中退共に加入するメリットについて詳しく解説していきます。
掛金を全額非課税にできる
掛金は法人企業の場合は損金、個人企業の場合は必要経費として全額非課税とすることができるため、節税効果を得ることができます。
掛金の一部を国から助成してもらえる
先述の通り、新規加入者と月額掛金が18000円以下の従業員に関して、掛金を国が一部助成してもらえるのも大きなメリットです。
退職金管理の負担を減らすことができる
退職金の管理は会社にとって大きな負担です。中退共に加入すると、従業員の納付状況や現在の退職金額を定期的に事業主に通知してもらえるため、事務負担を軽減することができます。また、従業員の退職時には中退共から従業員に直接退職金が支払われるので、退職金の支払業務を軽減することできます。
中小企業退職金共済制度のデメリットについて
ここでは、中退共への加入を検討する際に注意しなければならないことやデメリットについて解説していきます。
従業員しか加入できない
加入対象者(被共済対象者)は従業員のみであり、経営者や共同経営者、役員は加入することができないため、経営者陣の退職金を用意したい場合は別の制度や保険への加入を検討しなければなりません。
月額掛金の減額手続きが煩雑である
掛金月額は、被共済者が同意したとき、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めたとき以外は減額することができません。
減額申込には変更申込書のほかに同意書へのフルネームによる署名、または電子メールのやりとりを印刷した物が必要となり、従業員が多い会社では手続きが非常に煩雑となってしまいます。
懲戒解雇した従業員にも支払われてしまう
中退共の掛金は、一度支払うと掛金は会社ではなく従業員個人と紐づけられます。そのため、たとえ従業員が懲戒解雇により退職することとなった場合でも、掛金に応じた退職金が給付されてしまいます。給付を取り消したい場合には、厚生労働大臣の認定を受けなければなりません。
短期で解約すると給付を受けられない
加入納付月数が12ヶ月を下回る場合、掛金は掛け捨て扱いとなり、給付金を受け取ることはできません。掛金納付月数が12ヶ月以上23ヶ月以下の場合、給付金額は納付した掛金総額の約1/2~1/3に減額されてしまいます。いずれの場合も差額が経営者に返還されることはありません。
従業員の入れ替わりが激しく、2年以内で退職する従業員が多い会社は注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事では中退共の制度概要や加入のメリット・デメリット、新規加入等掛金助成について解説してきました。
中退共をうまく活用することで、従業員の退職金を少ない事務負担で用意することができます。また、退職金制度を充実させることで優秀な従業員の定着を促し、長期間勤務してもらうための動機付けにもなります。さらに、従業員の仕事への意欲の向上や、企業の活力・生産性の向上が期待できるのです。
従業員の退職金にお悩みの事業者に、本共済制度をおすすめしてみてはいかがでしょうか。
本記事が少しでも参考になれば幸いです。
税理士.ch 編集部
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