【令和6年度 税制改正】定額減税の対象要件、金額、実施方法を解説

令和6年度税制改正による定額減税は、顧問先にとって関心の高い事項であるはずです。今年限りの措置とはいえ、月次減税前の5~6月、年末調整前の11~12月、そして確定申告期では定額減税に関する対応が必要になると考えられます。

この記事では、定額減税の対象要件や金額、制度の全体像、実施方法のポイントを解説します。

目次

そもそも定額減税とは

定額減税とは、令和6年(一部は令和7年)に実施される、デフレ脱却のための経済政策の一つです。居住者である納税者の令和6年分の所得税と令和6年度分の住民税所得割を、それぞれ減税する方法によって実施されます。

定額減税は、すでに令和6年度税制改正大綱で示された内容に基づいて、本年4月1日から、租税特別措置法等により施行されています。

定額減税の対象

定額減税の対象になる税金は、個人の令和6年分の所得税と令和6年度分の住民税所得割です。

「令和6年分」と「令和6年度分」という微妙な表記の違いにあるとおり、所得税については令和6年分(R6.1.1~R6.12.31)の所得税が減税対象ですが、住民税は前年(R5.1.1~R5.12.31)の所得から計算された所得割が減税対象になります。

すでに確定した課税情報に基づいて実施される住民税と異なり所得税は未確定の状態ですが、国民にいち早く減税効果を届けるために、年内から減税がはじまります。

定額減税の対象者

  • 居住者であること
  • 合計所得金額が1,805万円以下(※)であること

※収入が給与のみであれば2,000万円以下(所得金額調整控除の適用があれば2,015万円以下)
※合計所得金額の要件は、所得税については令和6年分、住民税については令和5年分で判定します。

定額減税の金額

【所得税】
30,000円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)

【住民税】
10,000円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)

【同一生計配偶者・扶養親族】

  • 居住者であること
  • 定額減税を受ける本人と同一生計である配偶者や親族であること
  • 合計所得金額が48万円以下であること
  • 青色事業専従者として給与をもらっていないこと
  • 白色事業専従者でないこと

上記のとおり、所得税や住民税所得割の負担のないご家族の定額減税は、納税額のある同一生計の者がまとめて受けるしくみになっています。まとめて減税を受けるご家族の範囲は、税法上の同一生計配偶者と扶養親族(16歳未満を含む)とほぼ同じですが、異なるのは「居住者であること」の要件がある点です。

例えば、海外で暮らしている配偶者や親族は一定の要件を満たせば「配偶者(特別)控除」や「扶養控除」の対象になりえますが、「定額減税」の対象にはなりえないということです。

定額減税の全体像

ここまで定額減税の対象要件を確認しましたが、定額減税の制度全体がどうなっているのかについても一度確認しておきましょう。定額減税は、所得税や住民税所得割の納税者に対する定額減税と、住民税非課税世帯(均等割のみ課税される世帯も含む)に対する給付との一体措置で実施されます。

世帯員に一人でも納税者(合計所得金額1,805万円以下の者)がいれば定額減税の対象になり、世帯の全員が住民税非課税であれば給付金の対象になります。

また、定額減税の対象者に控除しきれない減税額が生じれば、市町村から控除不足額に相当する「調整給付」が1万円単位でおこなわれます。(例:所得税と住民税の減税不足が「1.5万円」であれば「2万円」が給付される)

定額減税の実施方法(所得税)

所得税の定額減税は、令和6年分の所得がまだ確定していない状態ですが、前述の理由から、①給与の源泉徴収税と②年金の源泉徴収税と③予定納税額に対して、先行的に実施されます。

したがって、所得税の定額減税の実施方法は、①給与所得者・②公的年金受給者・③事業所得者や不動産所得者によって次のように分けることができます。

給与所得者6月以降最初に支払われる給与(賞与を含む)の源泉徴収税額を減税
年金受給者6月以降最初に支払われる公的年金(老齢年金)の源泉徴収税額を減税
事業所得者・
不動産所得者
第1期分の予定納税額を減税
上記で実施されなかった者令和6年分確定申告による申告税額から減税

給与所得者の場合

給与の支払者である企業等が、6月以降の給与や賞与の源泉徴収額を減額する方法で実施します。

この減税方法は、月給や賞与から減税する「月次減税」と年末調整時に減税する「年調減税」の2つの事務で実施されます。それぞれ対象者の範囲や家族分の減税額を判定する書類などにおいて細かい違いはあるものの、いずれも「令和6年分の扶養控除等申告書」を提出している者(=甲欄で源泉徴収をしている者)のみを対象とする点に特徴があります。

なお、6月以降の最初の給与や賞与で減税しきれなかった金額があれば、その次に支給する給与や賞与から順次控除していきます。

年金受給者の場合

公的年金の支払者である者(年金機構等)によって、6月分以降の公的年金の源泉徴収額を減額する方法で実施されます。

減税しきれなかった金額があれば、その次の支給分の年金から順次控除されます。

事業所得者・不動産所得者等の場合

個人事業主や不動産オーナーのうち予定納税がある方については、第1期分から本人分(3万円)が減税されます。この機会に家族分の減税も受けたい場合は「予定納税額の減額申請」をすることによって、家族分の減税を受ける方法もあります。

第1期分から減税しきれなかった金額があれば、第2期分から減税されます。

上記で減税されなかった場合

上記で定額減税が受けられなかった者、例えば、給与所得者のうち扶養控除等申告書を提出しておらず月次減税や年調減税の対象にならなかった者などは、令和6年分の確定申告をすることによって減税を受けることができます。

(参考)金額に過不足がある場合

上記で受けた定額減税に過不足がある場合も、確定申告をすることによって精算できます。例えば、7月の予定納税で本人分(3万円)の減税を受けたものの、その年の最終的な合計所得金額が1,805万円を超えた場合は確定申告によって過大分が精算されますし、逆に年の途中で家族が増えるなどした場合は確定申告で不足分を精算できます。

また、給与所得者・年金受給者・予定納税者に対する先行的な減税には優先順位がないため、重複して減税を受ける者が出てきますが、この重複についても確定申告をすれば精算されます。ただし、その人に確定申告義務があるかどうかは別問題となることから「重複があれば確定申告が必要になる」という誤った教示をしてしまわないよう注意が必要です。複数の所得があれば確定申告義務が生じる可能性は高いのですが、それにあてはまらない人もいるという話になります。国税庁の「令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係)」にも関連する問いがありますので参考にしてください。

(参考)国税庁:令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係)(問2-3参照)

定額減税の実施方法(住民税)

住民税の定額減税は、特別徴収か普通徴収かによって実施方法が変わります。

いずれの徴収方法が適用されていても課税主体である市町村が令和5年分の課税情報に基づき減税して通知してくれますので、納税者側での計算は特に必要ありません。

特別徴収【給与】6月分住民税を徴収せず、7月分~翌年5月分を定額減税後の額で均一に徴収
【公的年金】10月分住民税から順次減税
普通徴収第1期分から順次減税

特別徴収の場合

給与からの特別徴収については、令和6年6月分の徴収額を0円にし、7月分~翌年5月分において定額減税後の住民税額を11等分して徴収します。

公的年金からの特別徴収については、4月分・6月分・8月分の3回分は前年の税額をもとに徴収額がすでに決定していますので、10月分からの3回分において定額減税を反映した住民税額を3等分(10月分・12月分・翌2月分で3等分)して徴収します。

普通徴収の場合

普通徴収で住民税を納税している場合は、第1期分(令和6年6月)の納税額から減税されます。減税しきれなかった金額があれば、第2期分以降から順次減税されます。

令和7年度分から一部控除されるケース

住民税については前年分(令和5年分)の、すでに確定した課税情報に基づいて定額減税が実施されますが、この情報では「同一生計配偶者」のうち「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」(本人の合計所得金額が1,000万円超えで、かつ、配偶者の合計所得金額が48万円以下)の有無が正確に把握されていません。

そこで例外的に「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」のいる納税者からの定額減税(1万円分)については、令和6年分の年末調整や確定申告等で把握できるしくみを整え、来年の令和7年度分の住民税所得割から減税を実施することになっています。

まとめ

定額減税について、その全体像、対象者の要件と金額、所得税と住民税のそれぞれの減税方法をまとめました。

この他にも月次減税や年調減税の実施に際しては、今年一回だけの実施とは思えないほど多くのルールが新設されています。こうした必要な対応を顧問先に先んじて案内することで、「この担当者がいてくれてよかった」と価値を感じてもらうチャンスに繋げていきましょう。

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税理士.ch 編集部

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